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アメリカで出会った100の光景 No. 47(大自然の絶景)雪上の足跡に怯えつつ、びくびくトレッキング・マウントレーニア


9月のワシントン州・マウントレーニアは、ビジターセンターに向かう道路さえすでに雪化粧をしていた。初冬の趣だ。こちらは夏休みのつもりで向かっていたので、かなり想定外。
以前同時期に行ったときには、まったく雪の気配などなかったのに、季節外れの寒波がやってきていたらしい。

しかし、雪に覆われた山頂は雲間からの光を受けて、ピカピカしている。拝みたくなるくらい神々しい姿だ。

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ここに何をしにきたのかといえば、トレッキング。
しかし、トレイルを見れば、人に踏まれている真ん中こそ地面が見えているが、横は結構雪が積もっている。ちょっとひるんだ。
何も、雪山にチャレンジしようというわけではない。軽くこの山の雰囲気を味わえれば十分、っていう程度の意気込みなのだ。

まあ、無理だったら引き返せばいいや、というつもりで歩き出した。他にも重装備じゃない人もポツポツ歩いているし大丈夫だろう。

しかし、歩き出してちょっとのところで現れた途中の分かれ道を境に、人の姿はぱたっと消えた。
わたしたちは、湖に向かう下の方の道を選んだのだが、他の人たちは山を登っていく方へ向かっていったのだった。

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さびしい。心細い。が、景色は美しい。
ちょっとでも、雪と木以外の色が目に入ると足が止まる。雪の中でもけなげに咲く花の愛おしいことといったら。

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岩の上でじっとしていたのはナキウサギ。耳がなんともいえずキュート。トレッキング中に見かける動物の癒やしの力よ。

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歩き慣れてくると、この気持ちいい景色を好きなだけ独占しちゃおう、と気持ちにゆとりが生まれてきた。
最初、滑らないように、靴が濡れないように、ゆっくり恐る恐る歩いていたのが、ちょっとでも濡れるとどうでもよくなっちゃう不思議。
雪をまるめて、夫に投げつけて、雪合戦の真似事をしたり。ああ、愉快。

と、雪上に、動物の足跡がついているのを見つけた。
トレイルを横切り、山の上の方に向かっている。急な斜面の上の方まで続いている足跡を目で追うが、動物の姿はない。握りこぶしくらいの大きさの足跡だ。鹿の仲間だろうか。
辺りをよく見ると、動物の足跡は一種類ではなかった。静かな場所は動物もノビノビできるのだろう。

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しかし、次に見たのは最も見たくない足跡だった。
大人の手のひら位の大きさの足跡は、まぎれもなくクマだ。
他に誰もいないこういう場所で、一番遭いたくないやつ。

もちろん姿は見えないし、耳をすましても何の気配もない。
けれどこの辺りを通ったのは紛れもない事実。いつどこから顔を出すかわからない。急に不安に襲われた。
クマよけのセオリーは大声を出すこと。ワーッと声を出したり、歌を歌ったり。とにかく一刻も早くここから離れたい。できる限りの早足でその場を離れる。標高が高いので、それでもすぐ息がきれる。

足跡のそばの雪の上に赤い点々が目に入ったが、決して血ではない、木の実だ、木の実に違いないと自分に言い聞かせて歩く。怖い怖い怖い怖い。

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不安になった気持ちを表すかのように、雲が増え冷たい雨が落ちてきた。
林を抜けて視界が開けると、遠くに見えていた山が白い霧のベールを纏っていた。

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どうにか雨をしのげる木の下に座り、持ってきたお弁当をかきこむ。視界が開けると、気持ちもちょっと落ち着いたけれど、クマの恐怖が完全にぬぐい去れたわけではないので、自然と食べるのも急ぎつつ。
大げさなようだけど、ほとんど人にも遭わない静かな山の中、クマの気配というのは本当に脅威なのだ。

食べ終わったらいよいよ、トレッキングの仕上げ。湖面近くまで下りていく。
リフレクションレイクはその名の通り、湖面に映り込む逆さレーニアがウリの湖。静かな湖面に映るマウントレーニアが見たいのだが、さて見えるかどうか。


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うーん、残念ながら見えませんでした。
そもそもレーニアはどこ!?っていうくらい潔い姿の隠し方。湖面もさざ波がたっている。

それでもかろうじて鳥はリフレクト!

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湖の景色は不完全燃焼だったけれど、雪の道を歩いたのは貴重な経験。

そして、雪上の動物の足跡に興味を持ったわたしは、ビジターセンターで動物の足跡の本を買ってしまった。
・・・ということは、それを持ってまた雪の山に行かなければ!?


マウントレーニア国立公園(ワシントン州)
Reflection Lake Mount Rainier National Park (Washington)


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