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アメリカで出会った100の光景 No.27( 大自然の絶景)カールスバッドの洞窟とコウモリ

アメリカで、鍾乳洞に行ったのは初めてだった。ニューメキシコ州のカールスバッド国立公園。

荒涼とした大地の地下には80以上もの洞窟があるという。え、80以上!?


鍾乳洞を見るために、エレベーターを下りて地下に入ると、そこにはビルのワンフロアーほどもある広く薄暗い空間が広がっていた。
鍾乳洞を巡る遊歩道は、ここを中心に張り巡らされている。
自分で好きなように歩くこともできるのだが、せっかくなのでツアーに入りレンジャーに案内してもらうことにした。レンジャーの持っている特別なカギは、未知の世界への入り口へ誘ってくれるに決まっているのだ。

40名ほどが集まって、ツアーが始まった。
ぜったいに遊歩道から出ないように、鍾乳石に触らないように、との説明を受けて歩き始める。
まずは驚愕の空間の広さよ。そして自由な形の鍾乳石たちよ。360度見回しても目に入るのは鍾乳石の作り上げた不思議な世界だけ。
天井が高くなったり低くなったり、間が広くなったり狭くなったりと、歩いていて飽きることはない。ただただ面白い。
特に印象的な空間や鍾乳石には、それらしい名前がつけられている。王宮とか女王の間とか。
細い鍾乳石が何百もつり下がっているのは、本当に繊細なシャンデリアのよう。

その場ではなるほどと、そのネーミングに納得したはずなのだけど、残念ながら後から写真を見ると、どれが何だったかよくわからないというのも少なくない。
そんな中、インパクトが大きくて忘れたくても忘れられない鍾乳石もある。

”歯”という名前だと思ったら、”内気な象”という名前だった巨大な鍾乳石。
いいスツールになりそうな大きさだったけれど、もちろんタッチは禁止。

このツアーで印象的だったのは、部屋のようになった空間でレンジャーの説明をきいていたとき。そこにはベンチが設置されていたので、みんなで座って説明を聞いた。
アメリカの人たちは、質問がないか聞かれると、ぜったいに質問する。しまくる。我先にと口を開き、答えが返ってくるとそれにかぶせてまた質問。
正直、何を言ってるかわからない部分がほとんどなので、飽きてくる。長いなあ・・・そんなことを感じ始めたときだった。
レンジャーが、シーッという静かにというジェスチャーをして、それからその小部屋の照明を消した。
辺りが正真正銘の真っ暗になった。そして、それまで賑やかだったみんなが静かになった。
本当に何もない暗闇。目を閉じて開けても、何も見えない。目が決して慣れることのない暗闇と静寂。
アメリカの人たちも静かにできるんだ、と感心したのとともに、ちょっとずつ不安な気持ちがわいてきてこの静寂を壊したい気持ちになる。咳払いの一つもしてみたい・・・と思ったときに、照明がついた。
ほーっ、とみんなから声がもれた。

ここカールスバッドには、鍾乳洞の他にもう一つ名物がある。
それは、洞窟から飛び立つコウモリの群れ。
夕方に飛翔が見られるというので、洞窟の前に向かうとそこには、ちゃんと観覧用のベンチが設置されていた。
岩にポッカリと開いた穴からコウモリが飛んでくるというのだが、中を見てもまったくコウモリがどこにいるかわからない。

ところが、空が夕焼けの色に変わり始めると、コウモリがひらひらと飛び始めた。
コウモリは小さいのだが、いや、なんとたくさん出てくること。
夜ご飯(といっても虫だけど)を食べに行くらしい。その数なんと100万匹!

小一時間ほどコウモリショーを楽しんで、その場を後にした。
空にできた黒いラインは、いつまでも消えなかった。


カールズバッド洞窟群国立公園 (ニューメキシコ州)
Carlsbad Caverns National Park


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