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機材の進化とは

質問を頂きました、
機材ってどんどん新しいの出てますが
進化してるんですか?
といった内容です。

もちろん、一言で言えば進化してます。

ただ、進化の仕方、ベクトルは色々なので
自分が何をどう撮りたいのか、というのをよく考えておかないと
新しい機材だから良い、とか、高い最新型を買えば間違いない
とは言い切れない、という場合もあります。

これは今から約9年前に私が撮った写真です。

その後五輪でも活躍した冨永(岩崎)選手

その頃の機材は、9年前だから今からすると古い
という以上に、そもそも私自身まだそこまで機材にこだわり抜いていなかったので、いわゆる中級機でした。
レンズもとても最高峰とは言えないレベルです。

仮に今、この当時使っていた機材を中古で探せば、程度が良くても多分カメラとレンズ併せても7~8万円もしないで手に入るんではないでしょうか。

ですが今拡大してチェックしてみても、まずまずの画質です。


一応繊維まで解像されている


9年も前の中級機でこれだけ撮れるなら
最新の機種はもっとすごいに違いない!
とか、あるいは逆に
最新の機種なんて必要ない!と思う方もおられるかもしれません。

ちなみに、キヤノンから今度出る最新型のカメラは
本体の実売価格で108万円もします。

何が違うのか、というのを細かく言い出すとキリがないんですが
おおまかにまとめます。

まず、上の私の写真、古い中級機でレンズもそこそこ
なのになぜこれだけ解像している、一言で言えば綺麗で高画質なのか。
その理由を列挙します。

・会場が当時にしては明るい
屋内競技ではとにかく光が足りないことが全ての撮影者の悩みです。
光さえ十分にあれば、素早い動きをきっちり止めて撮れるし
レンズの性能を十分に発揮できて解像できるし
カメラセンサー側もノイズを出さずに綺麗に撮れます。
明るさは会場ごとにかなり差があって、酷いところだと
ノイズまみれでまともに見れないような写真になってしまうことも…
最近はLED照明なども増えて明るくなってきていますが
この会場は当時にしてはそこそこ明るめだったようです。

・絞り込んでいる
レンズの絞りを閉じて絞り込むと、余計な光を排除して
より大事なレンズ中心部分の光のみを使うため画質は向上します。
ただし光を減らす行為なので、実際はただでさえ光が足りない屋内では
極力したくないことです。
それでも当時の私は、レンズ性能をできるだけ使うために、けっこう絞った設定にしていたようです(撮影データにはそうしたカメラの設定が全て記録されていますので今でも振り返ることができます)

・ブレるの覚悟
上記の通り、絞ればレンズの解像力は上がるんですが
実際は光が足りないのを補うために、センサーの感度を上げるか
シャッタースピードを遅らせるしかありません。
センサー感度を上げるとノイズが発生して結局画質は落ちます。
そこでシャッタースピードを落として撮る事で画質最優先で撮っています。
ただし、シャッタースピードが遅いという事は、手ブレも被写体ブレも起きやすくなります。
実際、この日のデータを今見返すと、勿体ないブレたショットがたくさんあります。
当時の私は多少はブレるショットが出ても、ハマった時の高画質優先でこういう設定にしていたのでしょう。
当然選手の動きが早いシーンではほぼ確実にブレるので、止まった瞬間を狙って高画質で残したい、という意志だったんでしょうね。


なので、同じシーンでもほんの少し選手の動きがあるとブレてしまいます

ボールが来る瞬間、ほんの少し動くだけでブレてしまう

ただこういう写真も、これくらい引きというか
小さい状態で見ればあまりブレも分からず差を感じにくいです。
いわゆるSNSに投稿してスマートフォンで見るなら
何で撮っても今の時代はそうそう変わらない、なんて言われる所以です。

アップにすると一目瞭然

拡大するとブレと同時にピン甘も発生して滲んだような酷い画質が分かる


改めてここで話を戻します。
機材が進化している、というのは色んな面で進化しています。

ピントを合わせるAF(オートフォーカス)は、今やAIを取り入れて
状況や被写体の情報に合わせてより正確かつ迅速にピントが合い
動き回っても追い続けることができるようになりました。

センサーの進化によって同じサイズでも高画素化しやすくなったり
同じ画素数ならノイズが出にくくなったり
より暗い所から明るい所までの幅(DR)が広がったり
そういう意味では確実に進化しています。

レンズ自体もAF速度や精度はマシ、設計の自由度が上がったケースでは
より高解像に撮れるようになったりボケが綺麗になったり
コーティングが進化して逆光に強くなったりなどなど。


ですが、どのシーンでどう使うか、を分かっていないと
機材選びも機材の設定も絞り切れません。

超高画素だけどノイズが出やすいから、光の少ない環境には不向き
というセンサーのカメラで、屋内競技を撮ると
ひょっとしたら昔の機種よりノイズが気になるかもしれません。

できるだけブレ等のミスが少ない、つまり打率を上げたいのか
ミスが増えても、すごくいい画質で撮れるかもしれないなら
そういう設定にしてみるのか

そういったところに撮影者の個性や考え方がでますね

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