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福岡市博物館にて小松政夫さんにお会いする。

午後から福岡市博物館に行ってきた。
先月末にも目の前を通って「ミイラ展」終了の前日で見ておこうかどうか迷ったのだが結局「元々人間であった存在に『ついで的』な感じで鑑賞するのは如何なものか」と思って通り過ぎたのだ。
それ以前は数年前に開催された「藤城清治展」を見に行って以来だろうか。
今回の目的は常設展示である。
今まで多くはないが興味のある展示を見に博物館には行っている。しかし常設展示を見るのはもしかしたら博物館がオープンして5回も見てないかもしれない。
博物館は「アジア太平洋博覧会」の開催とともに建てられた。ざっくり調べたら1990年開館というからおよそ30年の間、常設展示が数回とは私の福岡愛も足りなさすぎる。
そもそも博物的な物が苦手なのだ。歴史的価値とかそう言ったものにはあまり心が動かない。
少しでもアート的な要素が入っていれば見たいとも思うのだが掘り出された青銅のなんとかの欠片とか何かが書かれた文書だとかそう言ったものの重要性は理解しているのだが直接見ようとは思わない。
福岡市博物館の目玉といえば志賀島で発掘された金印であるがそれも開館当初に初めて見た時から感想は変わらない。
「ちびっこい」
この程度の素養しかないのである。これは博物館をディスっているわけではなく、私の好奇心が広大無辺でなく、どうしても興味の湧かない事もあるという説明である事を断っておく。
しかし久し振りに常設展示を見に行ったのであるが模型として再現された遣唐使船や何処からかの由来の仏像など「おっ」と思うものもあり全てを見たわけではないが楽しめる部分もあった。
歩きながら見ていって近代のフロアに入る。戦後になり福岡市の歴史になると展示も変わってくる。
私の今回見たい展示がそこにはあった。
まず説明せねばならぬのは現在福岡市の博多区を中心として「博多祇園山笠」が開催されている。
これは古くから続くお祭りであり、毎年7月1日から15日までがメインの開催である。行事としてはもう少し長いようだが。
私も福岡に住んでいるものとして山笠に参加はしていないものの各所に飾られる「飾り山」やクライマックスである「追い山」を見に行くのは好きである。「追い山」は早朝に行われるので毎年見に行くというのはなかなか難しいのだが。
山笠の正装である「長法被」や山を舁く際の「水法被」を身に纏ったのぼせもんの皆さんもかっこいいと思う。個人的には若い人より孫がいるくらいのベテランの皆様の勇壮な姿はなんともいえずカッコいい。
筋肉に変わる背負ってきた人生が老いた体から滲み出ているのだ。
そのように大好きな博多祇園山笠において私が最近Twitterで知った行事がある。
それを「追善山」という。
「追善山」は亡くなった山笠の功労者に向けた行事で亡くなった方の家の前に祭壇が置かれてその前で追い山の一番山が唄う「祝いめでた」を唄い、手一本を入れるものであるという。
博物館では常設展示にてその風景が人形を使って再現されているのだが山笠期間中の間だけ、ある人の写真が置かれている。
福岡出身で山笠に毎年参加されていた俳優でありコメディアンである小松政夫さんの写真である。
小松政夫さんは昨年の12月に亡くなられた。
本来ならば正式な追善山も行われるのだろうが、この疫病蔓延の最中、博多区から決して近くはない百道の福岡市博物館にて写真が置かれている。
それは博物館と小松政夫さんの浅からぬ関係性のためであり、言わば「粋な計らい」といえよう。
その理由は最後に語るとしてまず私はその写真に向けて手を合わせた。
そして今年は走らない舁山の展示をみてやはりその勇壮さに感動した。
博多祇園山笠は実際に走る「舁山」と展示して鑑賞するための「飾り山」がある。
昨年は行事の一切が中止。今年は飾り山のみ展示との事で舁山が見れるのはもしやこの博物館だけかもしれない。
そして常設展示は終わりとなる。その出口の前に大人の背丈ほどあるモニターがあるのだ。床にはここに立ってくださいという意味で足跡がある。
そしてそのモニターからちらりとまずチャーミングに顔だけ出したのは山笠の長法被に身を包んだ小松政夫さんその人である。
私はその情報もTwitterで知った。2013年から設置されているらしい。浅からぬ関係と言うのはこの事である。つまり私もそれだけ常設展示にて顔を出していないのだ。なんとも申し訳ない事である。
モニターの中の小松政夫さんは来てくれてありがとうございますと感謝の言葉を述べて最後に「博多手一本」をしましょうと声をかける。
博多手一本は山笠でやる言わば合いの手みたいなもので飲み会の最後などにやることもある。
小松政夫さんはまずはやり方をこちらに伝えて改めてゆっくりと手一本をする。場所が博物館なので大きな音は出せないが、その小松政夫さんの動きに合わせて私も小さく手一本をした。
そして映像の小松政夫さんは「ありがとうございました」と頭を下げる。私も頭を下げる。
遠い存在の芸能人が身近にいらっしゃる感じがした。そしてその方はもう居られない事にしんみりとした。
長法被を着た小松政夫さんはやはり人生をその体に纏っており、笑顔ではあったがとてもかっこよかった。
写真は自分で楽しむのであれば撮っても良いとの説明だったので撮らせていただいたがSNSに載せるまでは如何かと思い、これを書いている間も悩んだ載せないことにする。
Twitterで検索すると結構見ることはできるのでもしかしたら載せてもいいのかもしれない。
しかしこれは私の気の持ち方というか自分の気持ちを大切にしたいというか今の湧いた感情を失いたくないと言うことでご容赦頂きたい。
ご覧になりたい方は福岡市博物館に15日までに足をお運び頂きたい。

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