自尊感情

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を見ている。そしてとてもハマっている。

いや、そんな事今はどうでもいい。……どうでもよくはないけど本題はそこではない。

奥手なヒラマサさんがなんとも初々しい恋に揺れ動く様が見ててとても楽しい作品なのだが、その作品の中でヒラマサさんのその奥手さをみくりは心理学的にこう分析していた。

「自尊感情が低く、こと恋愛においては自尊感情が満たされないまま今まで生きてきたのではないか」

これによってヒラマサさんは何かあるとすぐに自己否定に陥り、心に壁を作る。

とてもよくわかる。痛いほどに。
かつて自分もそうだった。
とにかく自己嫌悪の塊で、人との間に分厚い壁を作ってばかりいた。だからとてもよくわかる……のだけど、ここ1年を思い返してみると、こういった苦々しい思いはほとんど思い出せない。
ここ1年の僕は自分でも驚くほど積極的で、それまでの自分では信じられないほどに色んな感情を表に出している。

何も言わず。何もせず。
何も伝えないから、何も伝わらない。
何もしないから、何もできない。

昔はそんな事をいろんな人に言われたな。
時に説教くさく感じるほどに。

そうして色々あって僕が心の底から落ち込んだときは、みんなから口々に「お前なら大丈夫だ。もっと自信を持て」と励まされたっけ。
なんでそんなに自虐的なんだと。
なんでそんなに自分を卑下するのかと。
もっと自信を持っていいんだよと。

みくりのように心理学を習っていない人にだって、人の心の動きはわかる。
きっと周りから見たら僕に自尊感情が無い事は明らかだったんだろう。

そんな風に言われても、ちょっとその場で分かった風に取り繕うだけで、ちっとも自己肯定感なんて持てやしなかった。

でもそれなのに、この1年間を思い返してみて今気付いた。
1年前、誰にどんな言葉で励まされたって生まれなかった自尊感情は、その時僕のように落ち込んでいたゆきに出会い、彼女を救えたという経験によって、しっかりと生まれていたんだ。
僕に出会えて良かったと、心の底から感謝してくれた女性が居た事で、僕は救われた。

先日、結婚の挨拶に行ってきた。
挨拶以外の場面でも結婚の話をしたりすると、よく聞かれる質問がある。
「彼女とどうして結婚しようと思ったの?どんなところに惹かれたの?」
そう聞かれると僕は決まってこんなことを答える。
「僕は彼女が好きですが、ただ好きという恋愛感情だけで結婚するわけではありません。出会ったとき僕は彼女に救われました。この先僕にとって必要な人だと思ったんです。そしてそれと同時に、おこがましい言い方になりますが、彼女にとっても僕が必要なのではないかと思えました。僕も知らないうちに彼女を救っていて、僕と出会ってからの彼女がどれだけ変わって、楽しそうで、幸せそうかというのを又聞きでも聞いて、僕は自分が誰かを幸せにできるのかもと初めて思いました。なにより人と支え合うという感覚をそのとき初めて知りました。だからきっと、この人とならこの先の人生を支え合い、互いに尊敬をしながら生きていける。生きていきたいと思ったんです。」

彼女は僕にとって欠けていた大切な感情を教えてくれる、かけがえのない女性なのだ。

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