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こぶた追いレースでこぶたをちぎって一等をとった話

千葉県にあるマザー牧場。幼稚園の遠足にも使われるほど、ほんわかのびのびな牧場である。だが、このマザー牧場で血で血を洗うレースが毎日行われていることをご存知だろうか。

こぶたのレース│ショー・イベント│動物とふれあう│牧場で何ができる?│マザー牧場は、房総半島の山々や東京湾、富士山などの雄大な景色が見渡せる鹿野山(かのうざん)にあります。都心から近い場所にありながら、豊かな自然とふれあうことができ、子供から大人まで楽しめる観光牧場として親しまれる、国内有数の施設です。250ヘクタールという広大な敷地で、豊かな緑、四季の花、愛らしい動物たちとのふれあいを楽しむことができます。「花と動物たちのエンターテイメントファーム」を目指し、大自然の恵みを活かした施設とサービス、商品を提供しています。 こぶたのレース│ショー・イベント│動物とふれあう│牧場で何ができる?│マザー牧場は、房総半島の山々や東京湾、富士山などの雄 www.motherfarm.co.jp

こぶたのレース。競豚。新聞片手に耳の上えんぴつの親父が奇声をあげる。紙片を巻き散らす。

「このレースは5▶︎2▶︎3(こ、ぶ、た)の三連単狙いや。勝ったらトンカツ食ったる!三連単で三元豚や!」

「にいちゃん、トンカツ食うんはレース前の方がええんとちゃうかー?験担ぎなるわ」

「アホやな。誰が馬刺し食べて競馬すんねん。そんなん怨み買って勝てるものも勝てんくなるわ。豚さんお願いしますー、もう一生豚肉食べませんー、ベジタリアンなりますー言うて勝ってトンカツ食うんがうまいんやんけ!」

そんな声が飛び交うわけもない、健全なこぶたのレースだ。正確に言えばこぶた「追い」レース。こぶたがゴールへ勝手に行ってくれるわけないので、それを子供が後押しする。6頭立てでそれぞれに子供がつき、スタートの合図とともにお尻を押してみたり背中を叩いてみたりしてゴールまでなんとか進ませるのだ。そのレースに俺も小さい頃出たことがある。


「位置についてよーい、スタート!」

その言葉とともに一斉にこぶたの入っているゲートが開く。こぶたが勢いよく出てくる。その前に待ち構えていた子供たちはこぶたを追い立てる。

「さぁみんな、豚さんと一緒にゴールを目指してねー!」

そんなアナウンスが響く。が、俺の耳に届くことはなかった。合図と共に俺はゴールに向かって一直線。豚と戯れるライバルたちを尻目に猛ダッシュだ。

「あー、3番のお兄ちゃん、豚さんを追いかけてあげてー!」

全速力で走る子供に耳はついていない。俺のフルスピードは聴力を置き去りにした。砂煙を上げながらなおも走る。走る。走る。喧騒の中、ゴールという文字だけを目指す。

「ゴール!」

誰よりも早くゴールした。誰よりも。ぶたよりも。俺がゴールを切るとようやく聴力が戻ってきた。皆の笑い声が聞こえる。息を切らしながら、周りを見る。まだ子供はついていない。俺が一番のようだ。係員にポンと肩を叩かれる。

「一番、おめでとう!一番の表彰台に行ってねー」


説明しよう。走って一位になればいいと思い込んでいた俺。こぶたに目もくれることなく、ゴールまで走り抜けた。そしてこぶた。偉いことに走る俺の後を勝手についてきたらしい。ついでにこぶたまで一位でゴールイン。「やつら同調(シンクロ)してる・・・!」と強豪校から偵察に来た奴らも言ってたとか言わないとか。「俺らと当たる時面白い存在になりそうですね」。まぁ笑いの種にはなるだろうね。サトシとピカチュウよろしく俺とこぶたとの固い友情がそうさせたのだ。流行りに乗るなら炭治郎と禰豆子でもいい。走りに全集中してる俺を見て「ムー!」でなく「ブー!」と言いながらついてきたのだ。

徒競走で一位になったのはこれきりだ。(こぶた)と競争か。運動神経0なので。こぶたレース、たまに大人も参加できる日があるらしいから参加してみてほしい。誰でもぶっちぎりの1番が取れることだろう。

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