飲食店経営者必見!エアレジデータで作る、売上アップの成功方程式
POSレジを導入済みの飲食店は全体の20%~40%程度といわれていますが(出展:BESPRA2024年2月5日記事, https://dx-bespra.com/archives/672)、皆さんはこれらのデータをどう経営に活かしていますか?
日々蓄積するデータは、使いようによっては宝の山。データを経営に使いこなせるかが、飲食店の業績向上の鍵となります。このコラムでは、飲食店で人気のエアレジのデータを用いた売上改善について、具体的な方法をステップごとに解説します。
エアレジのエクスポートデータをデモに使用していますが、必要な項目のそろったデータさえあれば実践可能です。エアレジを使用していない皆さんも、以下の記事から、「ピボットテーブル」の活用と、売上シミュレーションの考え方をマスターしていただくことで、実践していただけます。
あなたの店舗の「成功方程式」を一緒に作り上げましょう!
1. データで飲食店経営を成功させるための必須情報
エアレジのデータを経営改善の強力なツールにするためには、最初の設定段階で正確に情報を入力することが非常に重要です。まずは、エアレジの設定と会計時の入力項目を確認しましょう。
<必須情報>
メニューと価格
メニュー名の登録は基本中の基本。メニューを個別に登録しておくと、エアレジの売上分析機能を活用した売れ筋の把握や、メニューごとの収益分析が簡単に行えます。価格も必須項目です。価格を設定することで、経営判断に役立つデータが得られます。そもそも、価格情報がないデータは、経営分析に使えません。
人数
会計時に必ず入力していただきたいのが、一会計グループあたりの人数です。来店人数を入力できる設定は、エアレジの特徴的な機能の一つです。人数を正確に入力することで、平均客単価が算出され、曜日や時間帯ごとの来客傾向も把握できます。特定の時間帯に一人客が多い場合は、それに合ったメニューやサービスを検討するなど、集客施策を具体化するためのヒントとなります。
<あると役立つ情報>
原価設定
人数の次に、できれば設定しておきたい情報が、メニューごとの原価。商品情報に原価を設定しておくと、エアレジ上で原価率が自動計算され、利益率が見える化されます。これにより、利益率が低いメニューの見直しや、収益性の高い商品への重点的なプロモーションが行いやすくなります。店舗の財務面での健全な運営を支える重要な設定です。
この後解説する売上分析を行う際も、売上だけでなく利益まで含めたシミュレーションと改善策の設定を行うことが可能です。
カテゴリ設定
最後に、余力があれば、「フード」「ドリンク」「デザート」、又は、「テイクアウト」「イートイン」、「通常商品」「期間限定商品」など、商品をカテゴリごとに設定していきましょう。エアレジのデータ分析から取り出せる情報がさらに充実します。カテゴリごとの売上構成比がわかると、どのカテゴリが全体の売上や利益を牽引しているかが見えやすくなり、メニュー構成や価格戦略の改善に役立てることが可能です。
2. データ分析の第一歩:エアレジデータの抽出とエクセル化
まずは、エアレジから必要なデータをエクセルで抽出しましょう。使用するデータは、日次の売上データ、一ヵ月分です。年間の売り上げ目標を検討する場合を想定して、年間でもっとも平均的な売上・営業日数の月を選びましょう。
抽出はエアレジのメニューから簡単に行えます。
「日別売上」画面の「集計対象」から、平均的な月を集計期間として設定して「表示する」を選択。
一覧表の右上に表示された「CSVデータをダウンロードする」ボタンをクリックし、「売上集計」を選択してダウンロードします。詳しくは、以下のエアレジページをご確認ください。
ダウンロードしたCSVファイルをダブルクリックします。パソコンにエクセルがインストールされていれば、自動的にエクセルで開いた状態になります。
開いたファイルの先頭行が文字化けしていましたか?文字化けしていた場合は、文字のエンコードの設定が原因でしょう。以下の方法を試してください。(めんどくさく思えますが、簡単です!)
データのインポート機能を使う(文字化けが気になる場合)
エクセルを開き、[データ] タブを選択
エクセル上部のメニューから [データ] タブをクリックします。
[テキスト/CSVから] を選択
[データの取得と変換] グループ内にある [テキスト/CSVから] を選択します。
CSVファイルを選択してインポート
CSVファイルを選び、[インポート] をクリックします。
インポート設定を確認
「データのインポート」ウィンドウが開くので、エンコード(一般的にはUTF-8またはShift JIS)や区切り記号(コンマ)を確認して [読み込み] をクリックします。
3. ピボット分析で売上の傾向を視覚化する
エクセルのピボットテーブルを使えば、データを簡単に整理し、売上の傾向を視覚化できます。初めて使うときは難しく感じるかもしれませんが、一度やってみると簡単なステップなので、この機会にマスターしてください!
飲食店では、平日と休日で売上傾向が大きく異なるため、データを平日・休日に分類して分析を行います。まず、B列に「平日/休日」の列を挿入し、左の日付が平日か休日かを記入していきます。この際、休業日はデータから除外されているため、記入ミスがないようご注意ください。(以下の例では、6月6日が休業日のため、データに含まれていません。)
ピボットテーブルを挿入する
エクセルのメニューから「挿入」を選択し、次に「ピボットテーブル」をクリックします。
表示されるウィンドウで、「テーブル/範囲」にデータ範囲が自動で設定されていることを確認し、「新規ワークシート」を選択して「OK」をクリックします。(選択されていない場合は、A1~G(客単価列)の最終行までの範囲を選択)
ピボットテーブルに項目を追加する
新しいシートの右側に「ピボットテーブルのフィールド」というドリストが表示されるので、以下の項目を配置します。
平日/休日:平日/休日を、4象限の左下の「行」にドラッグします。これで、平日と休日に分けてデータを集計できるようになります。
売上:売上データを4象限の右下の「値」にドラッグします。
客数と客単価:同様に、客数と客単価データを「値」にドラッグします。
売上と客数、客単価を「合計/〇〇」から「平均/〇〇」に変更する
ピボットテーブルの「値」フィールドで、「売上」を右クリックし、「値フィールドの設定」を選択します。
表示されるウィンドウで、「集計の方法」を「平均」に変更して「OK」をクリックします。
同様に、客数と客単価も、平均に変更します。
これで、曜日ごとの平均売上、平均客数、客単価が表示されるピボットテーブルが完成しました。
数字の範囲を指定して、コンママークを押すと、小数点以下が消えて見やすくなりますよ。
私のデモデータはランダム関数で作成しているので休日と平日の平均値が似通っていますが、皆さんの実際のデータは、平日と休日の特徴を捉えているはずです。
4. 平日・休日別の売上シミュレーション
飲食店では、平日と休日、ランチとディナーといった時間帯で売上に大きな差が生じます。エアレジデータを使ったピボット分析で把握した現状の数値を基に、売上をどのように伸ばしていけるかをシミュレーションしてみましょう。
このコラムでは、すぐに実行できる一番シンプルな例として、平日・休日の客数と客単価を基にしたシミュレーションを解説します。
下段の「現在」の欄には、データ分析で得られた平均客数と平均客単価をそのまま適用しています。月間の日数は、平日4日、休日2日の営業を前提に、ひと月の平均平日・休日数を計算しています。計算式は「一週間の平日(または休日)営業日数 × 52週 / 12か月」で求められ、例えば休日の場合【2×52/12 ≒ 8.67】という結果になります。「売上」の欄では、一か月あたりの平日・休日別の売上高を算出しています。この式は「月間日数 × 客数 × 平均客単価」で計算されます。
上段の「目標」の欄は、平均客単価の向上と休日の客数増加を達成した場合のシミュレーションです。平日の客単価を100円、休日の客単価を200円増やし、休日の平均客数を10名増加させた場合、月商は約10%上昇することがわかります。
5. 目標数値をオペレーションのレベルにブレイクダウンする
設定した平均客単価や来店客数は、エクセルに入力するだけでは単なる数字遊びに過ぎません。これらの数値が実現可能かどうか、そして実現するための具体的な施策をオペレーションのレベルで検討する必要があります。例えば、客単価アップのためには、+200円のデザートセットオプションを追加したり、プロモーション用のポップを作成したり、アルバイトスタッフにデザートメニューを提案する声掛けを指導するといった方法が考えられます。このように、目標数値を達成するために現場で実行可能なアクションを具体的に考えることが重要です。
目標数値を「月商」といった漠然とした単位で捉えるのではなく、「平日の平均客単価」や「休日の客数」といった具体的な構成要素に分解し、現場で実行できる施策に落とし込むことで、売上に直結するオペレーション改善を検討することができるのです。
物足りない方は、平日と休日をさらに時間帯で分けて、それぞれの客数と単価を設定すると、精度の高い戦略策定が可能になりますよ。
目標設定は、数字とオペレーションの両利き思考で
目標設定を行う際、売上や客単価といった数値シミュレーションだけに頼ってしまうと、ただの数字遊びで終わり、実際の効果が期待できません。一方、現場のオペレーション改善だけに注目していても、売上や利益に直結する効果的な施策を見つけることが難しくなります。経営者として戦略的に効果を上げるためには、「数字」と「オペレーション」を両方同時に考える「両利き思考」が必要です。
売上目標や客単価、来店客数といった数値は、店舗が目指すべき「方向性」を示す指針として設定しますが、これらの数値はあくまで目安であり、具体的な改善策に落とし込まなければ実効性はありません。
数値目標の設定と同時に、目標達成のために現場のオペレーションをどのように改善するかを考えます。たとえば、客単価を上げるために、スタッフがデザートメニューを提案する声掛けや、プロモーション用のポップの設置を工夫するなど、現場で実行可能な具体策を検討します。
この検討の時点で、「この数字は難しいな」と、見えてくることもあります。その際は他の構成要素を上げられないかを検討し、売上シミュレーションに戻って修正します。このように、オペレーションに基づいたアプローチを取ることで、数値目標が「実現可能なもの」となり、売上も、そして経営スキルそのものも、磨き上げられていくのです。
実際に、コンサルティングの際にも、4.のシミュレーション作成と、5.のオペレーションの具体的改善策の議論は同時進行で、行ったり来たりします。具体的には、「ランチの客数をそれだけ増やしたら、2回転の計算となり、この立地で平日に実現するのはほぼ不可能だ。→ランチの客数は1.5回転相当に抑えて、休日の客数と客単価アップで稼げないか?カフェの稼働を高める方法はないか?」といった議論が展開していくのが、リアルな現場感です。
数値目標とオペレーション改善を両輪で検討していくことで、戦略的かつ実行可能な目標設定ができ、日々の現場の努力を確実に売上や利益につなげることが可能になります。この、「数字と現場の両利き思考」のアプローチを意識して、成果に直結する経営改善を目指しましょう。
まとめ:エアレジデータが導く「売上アップの成功方程式」
エアレジのデータを上手に活用することで、売上向上のための的確な経営判断が可能になります。データのピボット分析、売上を構成要素に分解した数値目標の設定、オペレーション改善の検討によって、店舗ごとの「成功方程式」が生まれ、飲食店の経営を成功に導きます。
データ活用は、一見複雑に見えるかもしれませんが、始めてしまえば確実に店舗経営の強力な武器となります。ぜひ、エアレジデータを使ったデータドリブンな飲食店経営に挑戦してみてください!
おまけ:より深く学びたい方へのヒント
今回のコラムでは、もっとも単純な平日・休日の客単価と客数という要素でシミュレーションを行いましたが、実際のコンサルティングの際には、時間帯別や物販/テイクアウトなどの要素も含めたより詳細な要素分解を行ってシミュレーションを行い、年間の予算計画(目標とする1年分の月次損益計画)を設計した上で、毎月の進捗データを収集してモニタリングします。
例えば、ランチとディナーで営業されているレストランを想定しましょう。平日/休日のランチ/ディナーの合計4つのカテゴリに分けて、カテゴリごとの目標を設定したとします。
この場合、平日/休日だけでなく、ランチ/ディナーの区分も加えて毎月ピボット分析を行い、以下のようにデータを整理して各カテゴリの目標に対する達成度合いを確認します。
※この際、エアレジのマイページから、「売上明細」ではなく、「会計明細」の方のデータをダウンロードする必要があり、さらに、あらかじめランチ/ディナーでカテゴリ設定をするか、会計時間のデータを元に、ランチとディナーにカテゴリ分けします。いずれにしろ、画像のような状態に整理するにはエクセルデータの加工が必要になり、平日/休日のみの分析よりもかなり複雑な作業になってしまいます。エクセルを使い慣れていない場合は、エクセルの得意な方と取り組んでみてください。
時間帯でカテゴリ分けする際は、時間帯を設定しておけば、日別で時間帯別の客数と客単価を表示させることができるので、煩わしいエクセル操作をすることなく、エアレジの機能を使って日別売上の画面で進捗管理することもできますよ。
ディナーの客単価が目標に届いていない、ということがわかったら、原因を分析し、次月のディナー単価を上げるための施策を考えます。例えば、「デザートオーダーの声掛けを徹底して客単価500円プラスを目指そう」と考えたら、ディナーシフトのアルバイトさんと方針を共有し、1か月取り組んで次月に成果を確認します。
アルバイトの皆さんとこれらの分析を情報共有し、フィードバックループを作ってモチベーションを高め、みんなが積極的に考える組織文化を作れると、経営はさらにレベルアップします。
月次のデータ分析とデータドリブンの経営に慣れてきたら、組織全体を巻き込んだ経営改善の仕組みづくりも取り組んでみるといいですよ。
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