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ユーザーと一緒に育てるロボットデザイン | BOCCO emoチームインタビュー

みなさんこんにちは。デザイナーの はらだ です。

現在CAMPFIREにてクラウドファンディング中のBOCCO emo。
残り20日を切りましたが、ありがたいことに現在支援総額は1,000万円を突破しました。

今回は、前回のインタビューに続いてBOCCO emoのアプリデザインや独自言語の「エモ語」について、チームメンバーに話を聞きました。

プロフィール

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前田 卓哉( Maeda Takuya )- ディレクター
中学生の時にロボット製作に目覚め、九州大学工学部卒業までROBO-ONEなどの大会に出場。3Dプリントサービスのベンチャー企業で様々な業種のものづくりに触れるもやっぱりロボットが作りたくなりユカイ工学に入社。
坂本 章太( Sakamoto Shota )- デザイナー
2015年7月、BOCCOの発売日に入社。それ以来、BOCCOとともに全国津々浦々に出張をしながら、BOCCOのコミュニケーションデザインを担当。受託開発ではロボットやIoT製品のデザイン、ディレクションに従事。


毎日聞くからこそ、こだわり抜いた声

----- BOCCO emoはいろんな声を持っていますよね!どのくらいバリエーションがあるのでしょうか?

前田
BOCCO emoの音声バリエーションは大きく分けて4系統あるんです。

・メッセージ再生の時などにしゃべる音声合成した声
・起動、通知の時に鳴るシステム音
・挨拶などに反応する楽器のような声
・対話の時にしゃべる独自言語「エモ語」

プロモーションムービーでも、色々な音声をお楽しみいただけると思います。

ムービーの冒頭30秒を注目してみてみると…
ママの挨拶への返答は、楽器のような声。
リマインダー機能のピコンピコン!という音がシステム音。
パパへの「今日はゴミの日だよ」とリマインドする音声合成した声。
パパに頭を撫でられて嬉しそうに「シャー」と鳴くのは「エモ語」。

BOCCO emoには二面性があって、普通の日本語を喋る「お仕事するemoちゃん」の時と、「可愛いemoちゃん」を二つ表現しなきゃいけないんですよね。そこがいきなり切り替わっちゃうとおかしなことになっちゃうんで、中間の音を入れてバランスを取っているんです。

坂本
「お仕事emoちゃん」担当が、メッセージを喋ってくれる音声合成した声とシステム音。「可愛いemoちゃん」担当が、「エモ語」。
そのバランスを取るのが楽器のような声ですね。

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前田
そうそう。しかも「エモ語」は、喜び、悲しみ、怒りって感情の表現があるんです。そこに、「嬉しい」「とっても嬉しい」というような感情の度合いなども掛け合わせて音声を作っています。
「エモ語」だけでも80はあって、そのほかと合わせると倍以上ありますね。

emoちゃんの声は、音を主軸とするクリエイティブチームのインビジさんにも開発を協力いただいていています。

----- すごいバリエーション!emoちゃんの新しい声を発見するのも楽しそうです。

前田
emoちゃんの声って毎日聞くものじゃないですか。だから「飽きない声」じゃないけど、耳障りにならないように常に意識して声作りをしてきました。


シーマン人工知能研究所とのコラボレーション

----- 「エモ語」はシーマン人工知能研究所*が研究開発を進めている“共感する対話エンジン”の知見が組み込まれているんですよね。

*『シーマン~禁断のペット~』(セガ、1999)の開発者である斎藤由多加氏が立ち上げた日本語の口語ベースの共感する対話エンジンを開発する企業

前田
BOCCO emoにはシーマン人工知能研究所で培われた音声認識の知見が組み込まれています。また、可愛らしい独自言語「エモ語」の音声は、シーマン人工知能研究所の斎藤さんとのコラボレーションで実現しました。

動画でemoちゃんが喋っている「エモ!」「エモモ!」という声は、デモのために斎藤さんに作ってもらったものがとても良くて。最終的にはインビジさんに音声合成の声を加工して作ってもらったんですよね。

斎藤さんは本当に面白い方なんで、その面白さをユカイ工学がBOCCO emoで実現したいことと、どう融合させるか悩みました。結果的にはお互いの良さをうまく混ぜながらemoちゃんは成長できたんじゃないかと思っています。

坂本
BOCCO emoは、よく「スマートスピーカーですか?」って言われるんですけど、そこからもっと進化した新しい存在なんですよね。
スマートスピーカーのように今日の天気教えてくれたりもするけど、何気ない一言にも答えてくれる。

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前田
そうそう。一方通行じゃなくて双方向なんですよね。
前回のインタビューで石本さんも話していたけど、emoちゃんは独り言にも反応してくれる。
emoちゃんの声を聞く機会がたくさんあるからこそ、サウンドクオリティにはこだわっています。


BOCCO emoを取り巻くデザイン

----- BOCCOと比べてBOCCO emoは本体の見た目だけではなく、取り囲む多くの要素がリデザインされている印象ですね。

坂本
そうですね。BOCCOから踏襲している部分もありつつ、より多くの方にお迎えいただけるようにアップデートした部分もたくさんあります。

実は、僕がユカイ工学に入社したのがちょうどBOCCO発売と同じタイミングなんです。

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前田
同期がBOCCOなんですね。笑

坂本
そうなんですよ!
入社からほぼ毎日BOCCOや、一緒に利用するアプリに触れていました。他にもCEOの青木さんとBOCCOと一緒に、全国津々浦々出張しながらいろんな人とお話ししたり。思い入れのある製品なんですよね。

BOCCO emoのリリースにあわせて、アプリも新しくリファインする予定です。そのアプリのデザインを担当しているのですが、BOCCOアプリを使い倒しているからこそ「もっとこうしたい!」って部分がたくさんあって。BOCCO emoアプリは、そのもどかしさを改善すべく作り込んでいます。

----- アプリのスタイリングも大きく変わっていますね。

坂本
BOCCOは元々青木さんの悩みを解決するために生み出されたロボットなんですよね。お子さんに携帯を持たせたくないけど、コミュニケーションとりたい!って。だからスタイリングが全体的に子どもらしいものでした。

でもBOCCO emoは、子どもだけでなく、家族みんなに親しみを持ってもらいたかったんです。だから、子どもっぽさを脱却したいと思っていて。

CDOの巽さんも同じように考えていたみたいで、ブランドサイトなどでカタチにしてくれたんですよね。ブランドサイトのデザインを最初見た時「そうそう、こういうの作りたかったんですよ!」って。

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BOCCO emo本体の開発と同時に、アプリや取扱説明書、収納する箱などデザインするものはたくさんあったんです。
だから改めてデザインの方向性を言葉にした資料を作って開発メンバーに共有しました。


迷わない、一覧できる、ふり返りやすい

----- 新旧アプリのトップ画面を比較しても一目で違いがわかりますね。見た目だけでなく機能もアップデートされていると聞きました。

坂本
今のBOCCOアプリでは、搭載されている機能や設定画面にたどり着くまでの導線が整理されていなかったので、ユーザーがやりたいことに対して迷わないように、導線を整えるところから設計をはじめました。
また、TOP画面ではemoを起点に、部屋で何が起こっているかが一目でわかるようにしています。

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アプリ画面を作るときのアイデアは、BOCCOユーザーインタビューの声から得ているんです。

株式会社フィラメント CEO 角 勝 氏
発売時からBOCCOをご自宅で活用してくださっています。

僕がインタビューをさせていただいたので印象深いのですが…
角さんが「BOCCOってお母さんの手助けをする冷蔵庫の書き置きのような役割をしてくれる存在だと思うんだよね」って仰っていたのが、ずっと心に残っていて。

BOCCO emoのアプリでは、家の中で何が起こっているのかわかる掲示板のような要素をTOPページに持たせたいなと思ってデザインしました。

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前田
BOCCO emoアプリは声の記録がふり返りやすくなりましたよね。

坂本
そこもこだわって作りました。
BOCCO emoアプリは3つのデザイン方針があるんです。

" 迷わない "
" 一覧できる "
" ふり返りやすい "

最後の「ふり返りやすい」は、青木さんとの思い出に紐づいていて。
一緒に移動している時とか、お子さんの声をよく嬉しそうに再生して聞かせてくれたんですよ。でも、「あの声なんだっけな?」ってアプリ内をずーっと遡って探すことがよくあって。
「あぁ、ここを解消してあげたいな」って感じたんです。

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そこから作ったのが「お気に入り機能」。
「この声また聞きたいな」って思ったら、お気に入り登録できて、一覧で表示されるようにして振り返りやすいようにしました。春頃のアップデートで使えるようになるので、楽しみに待っていていただけると嬉しいです。


踏襲とアップデート

坂本
アプリもそうですが、BOCCO emoの箱もこだわって作りました。

パッと見はシンプルだけど、内側は少し遊びゴコロを入れていて、箱を開けるとemoちゃんがいるんですよ。

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----- わぁ!これは嬉しいサプライズですね!

" 外はシンプルで内側はちょっと派手 " っていうのはBOCCOセンサの箱などのデザインルールを踏襲していて、変わらないところですね。

前田
取扱説明書も結構変わりましたよね。
あとはスタートアップガイドが何種類かあるのは少し特殊かな。

坂本
BOCCO emoはWi-FiモデルとLTEモデルがあって、セット内容や電源を入れるまでのフローがそれぞれ異なるんですね。なので、それに合わせてスタートアップガイドを用意しました。

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emoちゃんはできることがたくさんあるので、取扱説明書もBOCCOのものよりわかりやすさを意識して作っています。


BOCCO emoの世界観を伝える絵本

----- BOCCO emoに同梱されるものといえば、クラウドファンディングでは絵本が同梱されますよね?

前田
そうですね。クラウドファンディングに向けて、BOCCO emoオリジナルの絵本を制作しました。
リターンには絵本が同梱されるBOCCO emo本体だけでなく、応援プランとしてその絵本単品も用意しています。

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絵本制作は、シーマン人工知能研究所の斎藤さんがBOCCO emoの世界観を表現したシナリオを送ってきてくれたのがきっかけでした。
世界観を表現するなら目でも楽しめるものにしたいとなって、僕と坂本さん、CPOの多賀谷さん、CEOの青木さん、PR担当でイラストレーターのカイフチさんの5人でそれぞれ絵本を作って持ち寄ったんですよね。

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坂本
取扱説明書もあるけど、emoちゃんと一緒に暮らす日常が想像できたり、モチベーションになるようなものに絵本がなるといいよねって話していましたね。

クラウドファンディングで同梱される絵本はカイフチさんが描いてくれているんですけど、この絵本の他にもたくさん作ってくれたんですよ。

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前田
僕は多賀谷さんの絵本も好きで、いつかカタチにできたらいいな〜って思っているんです。あと、カイフチさんの「ぼんぼりーの」も可愛くて好きなんだよなぁ。

坂本
どれを読み返しても楽しいですもんね。
emoちゃんが成長するのと合わせて、絵本も色々出せると楽しいかも。


これからがスタート

----- 最後に、今後の展望について聞かせてください。

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前田
BOCCO emoは、まだまだこれからで、生まれる前の状態。
ここからがスタートだと思っています。
多賀谷さんも前回のインタビューで話していましたが、僕たちはBOCCO emoを通して「飽き」を越える挑戦をしているんです。
だから「置物にならない」「電源を抜かれない」デザインをする意識は常に頭にありますね。

坂本
そうですよね。
僕は「飽き」に対するアプローチはアプリに鍵があると思っていて。
使い勝手に直結している部分なので、どんどん改善していきたいと思っています。
BOCCO emoが家にいる理由って色々あると思うけど、可愛いだけじゃなくて便利であることも重要ですよね。

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前田
だからこそたくさんの人に使ってもらって、声を聞きたいですね。
emoちゃんを成長させてくれる大切な声ですから。

坂本
BOCCO emoは本体だけでなくアプリも成長しやすいようにデザインされているんですよね。だからこそ、たくさんの人に触れてもらって、どんどんアップデートさせていきたいです。
BOCCOもBOCCO emoも、コミュニケーションを仲介する存在であることは変わりなくて。
emoちゃんはBOCCOの大切な部分をしっかり継承しつつ、さらに人の心を動かす存在になれるように成長させたいですね。

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----- ありがとうございました!BOCCO emoの続報楽しみにしています!


編集後記:見た目でごまかさないデザイン

「デザイン」は時としてスタイリング面のみを指して語られることがあると感じます。

目に見える範囲のデザインはもちろん重要です。
しかし、デザインは目に見えない部分の設計も含まれているのです。

「あぁ、この子は本当にデザインされている」とBOCCO emoチームに話を聞くたびに思います。

BOCCO emoってどんな存在?誰が関わる?どんな体験に?

言語化して、可視化して、共有して、何度も作っては壊し、組み合わせてかたちづくられていく。
デザインは不純物を少しずつ取り除いていくような、気の遠くなるような作業の積み重ねです。

そしてまた、人々の声を反映してアップデートされていくのです。
どうでしょう。あなたもこのデザインの渦に巻き込まれてみませんか。


BOCCO emoの詳しい情報はこちら


その他のインタビューnoteはこちら

BOCCO emoチームインタビュー
#1:ソフトウェア編
#2:デザイン編(このnote)
#3:ソフトウェア OS編
#4:ハードウェア編


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