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爆買がストップした2019年。1月〜9月のデータから今後の動きを読み取る!週刊インバウンドニュースマガジン11月1週号

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百貨店訪日購買の動向は?購入金額は下げ止まりも、件数は減少継続

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中国における代理購入の規制をきっかけに、2019年は訪日客の”爆買い”需要が急激に低下しました。

中国人の“爆買い”に影響か、1月1日に電商法が施行 - 週刊BCN+【上海発】中国で1月1日、電子商務法(電商法)が施行された。www.weeklybcn.com

さて、規制から半年以上が経過した現在の動向はどのようになっているのでしょう? 日本百貨店協会が10月23日に発表した、9月の全国百貨店売上高を確認してみましょう。

2019年9月免税売上高・来店動向【速報】 (日本百貨店協会)
https://www.depart.or.jp/press_release_other/files/

発表によると、訪日客による消費額は2ヶ月ぶりにアップしているものの、客数自体は4ヶ月連続マイナスが続いています。

ドラッグストアの動向も見てみましょう。

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〈ドラッグストア2019年9月のインバウンド消費調査〉化粧品が過去最多!TOP30に16商品がランクイン~インバウンド購買金額のマイナス幅は縮小傾向~ (株式会社True Data)
https://www.truedata.co.jp/news/release20191031

データマーケティングの株式会社True Dataの発表によると、全国のドラッグストアにおける1店舗当あたりのインバウンド購買金額は今年3月から7ヶ月連続減少。

3月をピークに購買金額が減少し続けるのは昨年も同様ですが、昨年に比べると全体に購買金額は小さくなっています。

10月に発表された製薬・化粧品・化学メーカーの決算からも、同様の傾向が読み取れます。

花王、純利益4%増 19年1~9月 増税前に駆け込み需要花王が30日に発表した2019年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比4%増の1035億円だった。10www.nikkei.com


<東証>ポーラHDが7%安 インバウンド需要減速で今期2度目の下方修正(11時、コード4927)ポーラHDが5営業日ぶりに反落している。前日比173円(7%)安の2476円まで下落した。前日のwww.nikkei.com
小林製薬、1~9月期のインバウンド売上高4億円減小林製薬は30日、2019年1~9月のインバウンド(訪日外国人)向けの推計売上高が74億円と前年同期に比べて4億円減ったとwww.nikkei.com

前述のドラッグストア購買金額を見ると、減少は続いているものの、減少スピードは鈍化しています。

これまでが高すぎたと考え、現在の水準を基準に戦略を組み立てるのがよいでしょう。

日韓関係に改善の兆し?訪日韓国人減少はまもなくそこをつくのか

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安倍首相と日本のムン・ジェイン大統領が滞在先のタイで言葉を交わすなど、ここ数カ月間続いた日韓関係の不和にようやく変化が見え始めています。

日韓首脳がやり取り 日本政府は韓国側の姿勢変化を注視 | NHKニュース関係が冷え込む日本と韓国の首脳が4日、訪問先のタイでことばを交わしました。日韓両国の間では軍事情報包括保護協定=GSOM…www3.nhk.or.jp

日本政府観光局(JNTO)でも、延期を続けていた韓国向けの広告を一部再開。自粛ムードの漂っていた対韓訪日マーケティングが再び動き出していると言えるでしょう。

韓国向け広告一部再開 田端観光庁長官「できるところから」 - 観光経済新聞 韓国からの2019年9月の訪日旅行者数は、前年同月比58.1%減となった。日韓関係の悪化が影響し始めた7月から3カ月連続www.kankokeizai.com


旅行事業者や自治体の人々に話を聞いても、「韓国人旅行者の減少は今年いっぱいでボトムをつける」と予測する声をよく耳にします。

過去の事例を見ても、政治問題に端を発する訪日需要の減少は、時とともに改善を見せることがわかっていますが、それまで耐えられるかは各地域・事業者の体力に左右されます。

韓国人の旅行者を多く受け入れてきた九州では、中国・欧米豪などの地域からの受け入れを増やそうと、顧客構造の改革を進めています。

JR九州の唐池会長「訪日外国人、まだまだ増える」JR九州の唐池恒二会長は29日、第21回日経フォーラム「世界経営者会議」で講演し、「インバウンド(訪日外国人客)はまだまだwww.nikkei.com
訪日客誘致、欧米豪に照準 九州、ラグビーW杯契機 「韓国に依存」脱却探る
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/556645/


トラブルを経験し、短期的な需要変化に耐えられる体制をつくることのできる地域・事業者だけが、中長期的に生き残ることができるのでしょう。

航空業界にも人手不足の波。政府の増便目標に暗雲

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過去のマガジンでもご紹介したように、日本政府は将来的に成田・羽田の国際便発着数を約20万回増やし、世界の主要都市にならぶ100万回越えを目指しています。

羽田、国際線発着年3.9万回増 五輪に対応 来年3月29日から石井啓一国土交通相は8日の閣議後の記者会見で、来年3月29日の夏ダイヤから、東京都心上空を通る新たな飛行ルートを導入し、羽www.sankeibiz.jp

そんな政府の目標に暗雲が立ち込めています。全日空では来年3月の羽田増便に合わせ、反対に成田の国際線を減便させることを発表しました。

全日空、パイロット不足で成田国際線を減便へ : 経済 : ニュース 全日本空輸が成田空港発着の国際便について、来年3月から、1日の運航便の2割に当たる10便程度を減便する方向で調整に入ったwww.yomiuri.co.jp

羽田を増便しても、その分成田が減便となれば全体での増便目標は達成できません。減便の理由はパイロット不足とのことで、中期的に改善できる可能性はあります。

ただし、この問題は別の問題も孕んでいます。航空会社の羽田重視の傾向です。国際便を調整する際、より都心に近い羽田を優先する傾向が続けば、成田の地位低下やそれにともなう成田-都心エリアの観光需要にも影響するでしょう。

なお、余談ではありますが、航空便に関しては国際的に気になる動きが見られます。

欧米の一部の層を中心に関心が高まっている「フライトシェイム=飛び恥」問題です。

欧州の“環境意識高い系”の間で広がる「フライトシェイム」 | CO2削減のために飛行機に乗らない若者たち地球温暖化を懸念する人たちが、飛行機ではなく鉄道での移動を選択するようになっている。とくにスウェーデンでは「飛ぶのは恥」をcourrier.jp

CO2排出量の多い移動手段である飛行機を避け、鉄道などの移動手段を選ぶ動きです。

最近では、環境活動家グレタ・トゥンベリさんが、同じ理由で飛行機に乗らず船を利用したことが話題になりました。

飛行機乗らないグレタさんSOS 急にCOP開催国変更:朝日新聞デジタル 国連での演説が注目を集めたスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が困っている。チリで行われるはずだった第www.asahi.com

現状ではこのような動きがマーケット全体に大きな影響を及ぼす兆候は見られませんが欧米の旅行者の一部が飛行機を避ける動きがもしも活発になれば、訪日誘客のマーケティングストーリー、広告戦略にも調整が必要となるでしょう。

また、クルーズなどその他の移動手段の需要が喚起される可能性もあるため、関係する方々は注目してみてください。


政府がついにベジタリアン向けガイドラインづくりに着手、オリンピック前の指針づくりを目指す

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このマガジンでは以前から、ベジタリアン・ビーガン向けの受け入れ体制整備を喚起してきましたが、このほど日本政府でも関連する議員連盟(通称:ベジ議連)を立ち上げることがわかりました。

菜食主義でも安心して訪日を 指針策定へ「ベジ議連」:朝日新聞デジタル 肉や魚を食べないベジタリアン(菜食主義者)らが安心して食事できるよう、飲食店や食品メーカー向けのガイドラインをつくる検討www.asahi.com

訪日客の5%ほどがベジタリアン・ビーガンであると言われている現在、日本の飲食店・メーカーで彼ら彼女らへの対応が十分に進んでいるかというと、残念ながらそうではありません。

ビーガン向けと名乗っていながら料理に鰹だしを使ってるなど、ビーガン・ベジタリアン向け対応は十分ではなく、各事業者の意識・知識にもムラがあります。

そのような意味で、政府によるガイドラインづくりは歓迎すべき動きでしょう。オリンピック・パラリンピックの開催まで1年を切った段階で、制定が間に合うかは不明ですが、応援しつつ動きを注視したいと思います。

あとがき

先週末はラグビーワールドカップの決勝試合がありました。

私も都内のスポーツバーをいくつか訪問してみましたが、どこも満杯で予約がなければ入店することができませんでした。

ラグビーワールドカップが盛り上がることは以前から予測されていましたが、ここまでの盛り上がりを想定していた方は少なかったのではないでしょうか?

反対に韓国からの需要減などを正確に予測していた方もほとんどいなかったでしょう。

訪日市場で仕事をしていると、ポジティブ・ネガティブ両面で突発的な出来事が起こります。訪日観光は、日本のあらゆる産業に商機が見込める反面、世界中のあらゆる分野のトレンド変化の影響も受けることになります。

今回のマガジンで紹介した航空便のトレンド変化の兆しも同様です。すべてのトレンド変化を追い、さらにそれらに対応していくことは難しいでしょう。

本マガジンではそういった細かなニュースも拾ってまいりますので、気になるニュースや相談事項があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください!

お問い合わせはこちら!

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