石の面のにはかに憩ふ春時雨 川崎展宏

秋ではなく春、雪ではなく雨である。明るい方に時は動いている。急に降ってくる通り雨に出会うことは珍しい。それを好機と捉え、喜びに浸っている。のどかな風景を潤す急な雨。ちょうどその瞬間に立ち会い、大地にぽつぽつと黒い雨粒が点々と記されていくのを目の当たりにする。土に石に甍の波に。乾燥した空気が潤いはじめ、乾いた心が満たされていく。静かな田園風景にさざ波が立ち、繊細な雨の姿にうっとりする。


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