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『猫町』 (萩原朔太郎)

【朗読教室ウツクシキ】
2022年10月オンライングループレッスン
*アドバンスコース
テキストは、『猫町』(萩原朔太郎)です。

|朗読テキストを考える|
来月のアドバンスコースについて悩み中です・・・。
10月は遠野へ行くけれど、「遠野物語」を書いた柳田國男は既に二回もアドバンスに登場しています。遠野町のお隣は花巻ですが、その花巻出身の宮沢賢治はビギナーコースのみならずやっぱりこのアドバンスにもすでに登場済みです。芥川も太宰も漱石も小泉八雲も谷崎も鏡花も、ぱっと思い浮かぶ文豪たちはやはり登場しているし、、、と頭を抱えていたところ、世田谷文学館で10月1日から「月に吠えよ」萩原朔太郎展が開催されることを知りました。そうだ、朔太郎がいた!ただし『月に吠える』ではなく、あの『猫町』にしよう!

2008年夏。まだ朗読を始めて1年ほどしか経っていない時期に、この『猫町』を題材に朗読会を開催したことがありました。茅場町にあった森岡書店で、吉田昌平さん、井山桂一さんという若い作家さんの展示に合わせたもので(吉田さんとは十年後に再会するのですが)、本の町に迷いこんだかのような展示風景に合わせて町に迷い込んでしまう物語を選びました。「迷う」ということについて今に到るまで興味をもったのもこの時がきっかけになっています。

多くの場合は、「迷わない」状態の方が良い気がします。「迷っている」・・・AにしようかBにしようか、もしかしたら自分が考えつかないCという道もあるのかもしれない、ええいいっそすべて投げ出してしまおうか。
迷っている時にはいろんな道が現れます。けれど袋小路、どの道を選んでも視界が開けないような幻影も見ることがあるでしょう。この「迷っている」という状態が、『猫町』では淡々と描かれています。
また、迷ったとしても、すぐ解決して正しい道が現れたらそれほど苦ではないでしょう。けれどこの『猫町』は、「迷う」という面倒な過程を経てようやく違う世界が目の前に現れてくれるのです。その世界がよいものか悪いものかはさておき、このとき「迷う」ことは、違う景色を見るための手段として存在しています。

・・・とここまで考えて、このとことん迷う物語のおかげで、自分は迷いに迷った今月のテキストを決めることができた、ということに気づきました。『猫町』で迷いこんでいる景色に共感するのは、直前まで自分が迷いながら歩いた思考の道と同じだからなのです。袋小路に苦しみながら、その迷いのおかげでたどり着いた『猫町』。ご一緒に迷いの町を散策してみませんか。

*10月のスケジュール
http://utukusiki.com/202210_online/

*「月に吠えよ、萩原朔太郎展」
於:世田谷文学館
期間:2022/10/1〜2023/2/5 
https://www.setabun.or.jp/exhibition/20221001_sakutarohagiwara.html

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