
『ドグラ・マグラ』(夢野久作)
巻頭歌
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
私がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂の唸るような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。
それをジッと聞いているうちに……今は真夜中だな……と直覚した。そうしてどこか近くでボンボン時計が鳴っているんだな……と思い思い、又もウトウトしているうちに、その蜜蜂のうなりのような余韻は、いつとなく次々に消え薄れて行って、そこいら中がヒッソリと静まり返ってしまった。
たまたまですが、今月取り上げた賢治コースの『烏の北斗七星』も、お話の随所に出てくる「音」や「聲(こえ)」が物語の明暗をより深めていて、この『ドグラ・マグラ』も不可解な音から始まります。真夜中の暗さ、蜜蜂の羽音、そしてヒッソリと静まり返る音の変化が、一気に読者を「ただごとではないな」と思われる世界へ連れていきます。
手元にある『ドグラ・マグラ』は角川書店、上下巻で、平成15年(今から20年ほど前)に発行された文庫本でした。うっすら埃もかぶっていて、少し拭いたり、くしゃみをしながら読み進めると、意外と入っていけました。昔は無理でしたし、もっと昔は好きでした。今回は、脳内で物語が立体的になって、迷路を手探りながら進んでいる、そんな体感のようなものがありました。
賢治コースの『烏の北斗七星』といい、『ドグラ・マグラ』といい、今年のオンラインレッスンは少し暗いお話でスタートします。
暗いといいつつ、その言葉はどこを切り取っても面白味があって、朗読しがいがあります(上述した冒頭も、声に出すととても面白いです)
2025年1月のテキストは、『ドグラ・マグラ』から始めようと思います。
ご予約お待ちしております。
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