『氷と後光』
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『氷と後光』

朗読教室ウツクシキ

*2022年1月朗読教室テキスト①ビギナー
*著者 宮沢賢治

月が車室のちゃうど天井にかかってゐるらしく、窓の氷はただぼんやり青白いばかり、電燈は一そう暗くなりました。
「寒いねえ、もう一枚着せよう。」
「そんならわたしのコートやりますわ。」
「コートなんかぢゃ着ないも同じこったよ。だまって起しておやり。却って一ぺん起した方がいいよ。同んなじ姿勢でばかり居たんだから。」
「ええ。ですけど大丈夫ですわ。外套はお脱ぎにならなくてもいいのよ。」
 若いお母さんは、窓ぎはから子供を抱いて立ちあがりました。毛布は暖かいぬけがらになって殘りました。こどもは抱かれたまま、やっぱりすやすや睡ってゐます。
「まあ着せとけよ。どうせおれは着てなくたって寒くないんだから。」お父さんは立って席の横に出て外套をぬぎながら云ひました。
「毛布の中へ包めばいいよ。そら。」
 汽車は峠の頂上にかかったらしく、青い信號燈や何かがぼんやりと窓の外を過ぎ、こどもはまた窓のところに、前より少しうつむいて置かれました。深く息をしながらやっぱりすうすう寢てゐます・・・・・

師走を迎えました。ここ数年、この時期には年明けのイベント「春の白、冬の白。シャツとことば」の準備に追われます。気がつけば7回目を迎えるまでになり、長らく見守り続けてくださるみなさまも、初めましてのみなさまも、この度もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年はコロナ禍での朗読会となり、感染対策として「会場の後方から朗読する」という形式にしました。これは、古いチャペルの後方にオルガンが設置されていることに倣い、天上に届くよう願いをこめています。読み物も『銀河鉄道の夜の断片』再演とし、厳かな気持ちで開催いたしました。

今回は、「やさしい気持ち」がテーマです。これは、12月の朗読教室のご案内に、下記の文章を添えたことがきっかけです。

>大変だった1年、最後に静かな笑顔の時間を作れたらと思います。
>優しい気持ちでご参加くださいますと嬉しいです。

この文章を受けて、「やさしい気持ちで参加してみたいと思いました」とおっしゃってくださる方がいて、自分から何気なく発したこの言葉が外の世界に確かに作用したことを知りました。その作用していく様子をやわらかに見守ってくださる人がいることも・・・・。

今回選んだ『氷と後光』は、シャツとことばの展覧会でも朗読する物語であり、ただひたすらにやさしい物語です。子供に注がれる視線も、子供を守る父母を天上から見守る温かな気持ちも、汽車に乗り合わせる人たちも、ひととき、やさしく美しい時を過ごします。

2022年1月のビギナーコース・豊洲教室(対面)のテキストは『氷と後光(習作)』です。
実はアドバンスコースと対になっているのですが、それはまたおいおいお話ししたいと思います・・・。

オンライン 1月のスケジュール
豊洲教室(対面)1月のスケジュール

#宮沢賢治 #氷と後光 #朗読教室 #朗読

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朗読教室ウツクシキ
少し変わった朗読会と朗読教室を企画・開催しています。ギャラリーや美術館で開催したり、古い建物や特別な空間で行ったり、時には森の中で自由に歩きながら読んでみたり。言葉や物語が空間に立ち上がるお手伝いをしています。 http://utukusiki.com