癌口

詩、ポエムなどを書く。あるいは短編小説。色々あるけれども、とりあえずは物置。

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マガジン

  • 小説VS漫画リレー作品#01

    • 24本

    小説と漫画で交互に続きを書きながら作品として完成するのか、というゆる~い実験作品です。

  • ポエム・詩

    ポエム

記事一覧

小説VS漫画 リレー作品:第22話(小説)

「あんたは最初から自由じゃないか」  俺の最初とは「いつ」からだろうか? 俺が偽物として生まれた時か、それともソウイチとして生まれた時か。仮にソウイチとして生ま…

癌口
5年前
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小説VS漫画 リレー作品:第20話(小説)

 タイヘイの言葉を聞き科学者の死体を見ると、確かに獣にでも荒らされたかのように見えた。実際に獣に荒らされた死体を見た事はないが、イメージで言えば一番近い。 「ボ…

癌口
6年前
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小説VS漫画 リレー作品:第18話(小説)

 ポケットから携帯を取り出すと、一件の新着メール。ついでに電源が残り少ない事にも気づいた。 「新しいメールだ……」  クサリが画面を覗き込みながら「なんて書いてる…

癌口
6年前
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小説VS漫画 リレー作品:第16話 癌口(小説)

   殺した人間が再び目の前に立つ。ありえない話だった。この世界に来るまでは。あいつは俺を見た時、「コワイ」と言った。突き刺さる、言葉が、心臓を抉る。  俺に抱く…

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6年前
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小説VS漫画 リレー作品:第14話 癌口(小説)

「自分だって人殺しのくせに」  その言葉の衝撃に脳が麻痺し、時が止まったかのように感じた。思い出すのはしばらく自分の中でも薄れていた記憶、紛れもなく俺が殺人をし…

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6年前
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小説VS漫画 リレー作品:第12話 癌口(小説)

 瞬間、身体が浮いた。と、感じた時にはひっぱられるかのように、底の見えない闇の中へ吸い込まれた。 「……ッ」  悲鳴をあげようにも声がでない。遠くからクサリの声が…

癌口
6年前
4

小説VS漫画 リレー作品:第10話 癌口(小説)

「こんなものがあったのか……ハハハ……」  ガラス一枚、その向こうに、「空っぽのボク」がいた。もう二度と見る事は出来ないと思っていた。気が付けば涙が溢れだしてい…

癌口
6年前
5

小説VS漫画 リレー作品:第8話 癌口(小説)

 どことなくペンギンに似ているようにも見えるが、ペンギンとは程遠いともいえる。ペンギンはあんなに醜悪ではない。頼りなく見える細長い足を素早く器用に動かして、上半…

癌口
7年前
3

小説VS漫画 リレー作品:第6話 癌口(小説)

 俺には笑っていたという女の人がどうなったのかは分からない。ただ、お前「も」人じゃないんだという男の叫びが頭から離れなかった。俺は今、自分の事を人だと言えるだろ…

癌口
8年前
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小説VS漫画 リレー作品:第4話 癌口(小説)

 元の世界に戻るためのヒントは気絶する前に見た「飛び降りる」というメールだけだ。しかしそれが罠ではないとは言い切れない。それでもそれしかないのだから縋るしかない…

癌口
8年前
3

小説VS漫画 リレー作品:第2話 癌口(小説)

 エレベーターの扉が開いた瞬間、生暖かい空気が一気に流れ込んできた。視界に広がるのは現実から遠く離れた狂気の世界。薄暗い中で芋虫のように蠢く臓物と、血溜まりに悦…

癌口
8年前
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小説VS漫画 リレー作品:第22話(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第22話(小説)

「あんたは最初から自由じゃないか」
 俺の最初とは「いつ」からだろうか? 俺が偽物として生まれた時か、それともソウイチとして生まれた時か。仮にソウイチとして生まれた時だとして、思い返すと自由ではあったかもしれない。大学や家族、周りの評価など面倒な事柄に縛られていたようにも感じるが、結局は死ぬ程深刻な状況でもなかったし、やろうと思えばある程度の事は出来たと思う。けれどもし俺の最初が偽物だとしたらど

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小説VS漫画 リレー作品:第20話(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第20話(小説)

 タイヘイの言葉を聞き科学者の死体を見ると、確かに獣にでも荒らされたかのように見えた。実際に獣に荒らされた死体を見た事はないが、イメージで言えば一番近い。
「ボク達化け物は危害を加えられないから違うとして、他にこんな事が出来る生物に覚えがないなぁ。一応野生の生き物もいるけど、ほとんど駆逐されてるし化け物達を振り切って科学者を殺せる生き物なんていたかな……」
 クサリがペンギンの死体を見つめながら呟

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小説VS漫画 リレー作品:第18話(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第18話(小説)

 ポケットから携帯を取り出すと、一件の新着メール。ついでに電源が残り少ない事にも気づいた。
「新しいメールだ……」
 クサリが画面を覗き込みながら「なんて書いてるの?」と、興味深そうに尋ねてくる。携帯が存在しなかった時代に生まれたというクサリにはメールの事を手紙に例えて簡単に説明している。実際にメールを見るのは初めてのはずなので、気になるのだろう。
「あれ? この世界ってケータイ使えるの?」
 タ

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小説VS漫画 リレー作品:第16話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第16話 癌口(小説)

 
 殺した人間が再び目の前に立つ。ありえない話だった。この世界に来るまでは。あいつは俺を見た時、「コワイ」と言った。突き刺さる、言葉が、心臓を抉る。
 俺に抱くのは憎しみではなく、恐怖だとでもいうのか。俺を殺そうとした人間が俺に恐怖するというのか。
 言いようのない不安を孕んだ怒りが湧いてくる。だからといって動けもしない。何もできない。目の前にある現実を受け入れるには、あまりに混乱していた。
 

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小説VS漫画 リレー作品:第14話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第14話 癌口(小説)

「自分だって人殺しのくせに」
 その言葉の衝撃に脳が麻痺し、時が止まったかのように感じた。思い出すのはしばらく自分の中でも薄れていた記憶、紛れもなく俺が殺人をしたという事実。
「一人殺そうが何十人殺そうが大して変わらないよ?」
 受け入れ難いのはタイヘイの言葉ではない、自分の中で殺人の記憶が薄れかけていた事だ。そして他人が殺人を犯す事に対しては嫌悪を示す自分の中の矛盾。
「何で俺が人殺しだなんて…

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小説VS漫画 リレー作品:第12話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第12話 癌口(小説)

 瞬間、身体が浮いた。と、感じた時にはひっぱられるかのように、底の見えない闇の中へ吸い込まれた。
「……ッ」
 悲鳴をあげようにも声がでない。遠くからクサリの声がしたが、聞き取る間もなく落ちていく。上も下も分からぬ中、タイヘイと名乗った男とチェーンソーが先に落ちていくのが見えた。
 頭から落ちては死ぬ。頭の中でそれだけを考え、身体を丸めながら両手を後頭部に持っていく。
 ――ドプンッ、ドポンッ
 

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小説VS漫画 リレー作品:第10話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第10話 癌口(小説)

「こんなものがあったのか……ハハハ……」
 ガラス一枚、その向こうに、「空っぽのボク」がいた。もう二度と見る事は出来ないと思っていた。気が付けば涙が溢れだしていた。その涙は歓喜、後悔、怒り、様々な感情が入り混じって濁っているかのようだった。実際流れてきた涙を右手で救いあげ、目の周りを覆っている包帯をずらして良く見ると、灰のような粒子が混じっていた。
「ハハ……久しぶりに見たな……そっかこの涙は……

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小説VS漫画 リレー作品:第8話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第8話 癌口(小説)

 どことなくペンギンに似ているようにも見えるが、ペンギンとは程遠いともいえる。ペンギンはあんなに醜悪ではない。頼りなく見える細長い足を素早く器用に動かして、上半身をグネグネと揺らしながら醜悪ペンギンは逃げていく。体が揺れるたびにクチバシがかっぱかっぱと開き、その隙間から唾液が絡まったホイッスルのような濁った甲高い鳴き声を発している。その様子は壊れた幼児用の玩具のようであり、あやしい宗教の人形のよう

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小説VS漫画 リレー作品:第6話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第6話 癌口(小説)

 俺には笑っていたという女の人がどうなったのかは分からない。ただ、お前「も」人じゃないんだという男の叫びが頭から離れなかった。俺は今、自分の事を人だと言えるだろうか?
 人を殺した。初めてだった。それなのに俺は感動を覚えている。今自分が生きている奇跡に感動している。悲しみも焦りも後悔も存在しない。
 簡単だった。足元に落ちていた骨で人は死ぬ。そんな脆い生物だったのだ。殺される側と殺す側の違いはなん

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小説VS漫画 リレー作品:第4話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第4話 癌口(小説)

 元の世界に戻るためのヒントは気絶する前に見た「飛び降りる」というメールだけだ。しかしそれが罠ではないとは言い切れない。それでもそれしかないのだから縋るしかないだろう。

「この辺りに飛び降りることができる場所はありますか?」

 片腕を鎖で首に繋がれているこの紳士風の男、先程は気が動転していてそれだけの印象だった。けれど今こうしてある程度落ち着いて向かい合うとその異常性に目がいく。

 まずこの

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小説VS漫画 リレー作品:第2話 癌口(小説)

小説VS漫画 リレー作品:第2話 癌口(小説)

 エレベーターの扉が開いた瞬間、生暖かい空気が一気に流れ込んできた。視界に広がるのは現実から遠く離れた狂気の世界。薄暗い中で芋虫のように蠢く臓物と、血溜まりに悦ぶ蛆。一歩先の地面は赤黒くブヨブヨしていて、生肉のようにも見える。エレベーターの床との境目が、現実との境界線にも思えた。
 脂と血の臭いが容赦なく肺に流れ込み、胃袋がひっくり返りそうになる。鼻と口を押えてもまるで意味がなかった。頭がぼんやり

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