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蚊に刺されながら

木々が触れ合う音。
鳥の囀り。静寂。

ここは九品仏である。

東急大井町線沿線、自由が丘の隣の駅。
駅から少し歩くと、大きな寺がある。
敷地内のベンチに座りながらこの駄文を書いている。

「そういや九品仏の寺ってちゃんと入った事ないな」
自由が丘で買い物をしながらふと思い、立ち寄ってみた。
自由が丘から二子玉川まではよく歩くが、この寺は初訪問である。
思っていたより敷地が広い。
世田谷区の大井町線沿線は結構歩き尽くしたと思っていたが、まだまだ知らない場所というのはあるものである。

静寂と書いたが、近くのおばちゃん達の井戸端会議の声だけは賑やかに響いている。
蚊もブンブン飛び回っている。既に何箇所も刺された気がする。O型は蚊に愛される。辛い。

さて、何を書いたものか。

書きたい事は多分ある。
だが言語化は上手く出来ない。
そもそも書く事すらろくに無いのかもしれない。

5月の後半…つまり約1ヶ月前なのだが、デザフェスに出展した。
かねてからの憧れだった。
出展が決まった直後は「ぬいぐるみを作ったりしようか」などとぼんやり考えていた。
が、度重なる失敗。1月はネット回線が不安定なせいで原神に逃げ、2月も祖母の死による諸々で精神が不安定になったりならなかったり。
3月までくると出展応募した頃の熱意も薄れ。
4月はもはや憂鬱になり。
5月はFF14を始めた事もあり、別世界へ逃避した。

デザフェスへの熱意が冷めたどころか憂鬱になり、出展を辞めたいと思うレベルだった。
しかし「とにかく逃げずに出す事に意義がある」と自分に言い聞かせ、友人の力も借りて何とか出展。
当然準備を頑張れるはずもなく。
しょぼいディスプレイ、SNSによる宣伝などする気力もない。
そんな状態で立ち寄ってくれる人もほとんどおらず。

今回出したのは自分のイラスト本と缶バッジなどのこまごまとしたグッズだった。
その出来は自分では申し分ないと思っている。
しかし、デザフェスには"よいもの"がそこらじゅうにある。
当然、ただ良いだけでは埋もれる。見向きもしてもらえない。
だからこそ、みんなSNSなどによる宣伝活動を必死でやっているのだ。熾烈な顧客獲得競争。そういう時代だ。
技術よりマネジメント能力やブランド力が問われる時代である。


ずっと漠然と感じていたこと。
「私などいてもいなくても変わらないな」
改めて突きつけられたこの事実。
昔はこの事実に抗いたかった。爪痕を残したいという気持ちもあった。
だが、今は割とすんなりと受け入れてしまっている。
それが良いことなのか悪いことなのか、わからない。わからなくていいかなとも思う。

しょせん1人の人間なんてちっぽけな存在だ。
たかが100年足らずの人生。
FF14の主人公…光の戦士のように、世界を救う英雄などではない。
仮に歴史に残るような偉人だとしても、全知全能の力などない。
どんなに立派で歴史の教科書に名を残した人間でも、知らない人からしたら「誰?」の一言で片付けられてしまう。
界隈では大人気の神絵師でも、界隈の外ではただの一般人だ。

人は誰しも多かれ少なかれ「自分は他人よりは少し特別な人間だ」と感じているらしい。
過度な奇人変人にはなりたくないが、枠を外れない程度には変わり者でいたいというか。普通すぎるのも嫌というか。
もちろん人は一人一人違う。特別である。
だがそれは特別であり、特別でない。
うむ、自分で書いていて分からん。

デザフェスの後、そんなことをぼんやり考えたりしつつ「じゃあ結局自分のやりたい事をやればいいな」というありきたりな結論に至った。
それで1ヶ月くらいネトゲ廃人としか言えない生活をした。今はとにかくFF14がやりたかったから。

しかしプレイするにつれ「絵も描きたいな」という欲望がわく。14の絵だって描きたいし。
「他にもやりたいことたくさんあったな」と思い始める。
一生終わらない部屋の片付けもどうにかしたい。
料理をきちんとしてたあの頃に戻したい。

ゲームをすっぱりやめるわけではない。
FF14とは今後長い付き合いをしていきたいし、上手く折り合いをつけられればと思う。
ようはバランスだ。

あえてこの1ヶ月FF14を自重せずにのめり込んでいたのは、本当にやりたい事を見極める為だったのかなとも思う。
絵が描きたくなかったわけではない。単純にそれよりも14をやりたい気持ちが上回っていただけである。
少し言い訳じみているが。
「どうせそのうちまた別の事もやりたいと思うようになるんだろうな」
ギアを戻そうと思えばすぐ戻せる確信はあった。

また文章もぼちぼち書くようにしたい。
毎日何かしらの駄文を書いていた去年の自分が眩しい。

足が痒い。
10箇所くらいは蚊に刺されたような気がする。
蚊、許すまじ。

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