コハルアンのひと

神楽坂の上の方 矢来町で静かにうつわ店を営む50代 2021年12月「季節やシーンを楽…

コハルアンのひと

神楽坂の上の方 矢来町で静かにうつわ店を営む50代 2021年12月「季節やシーンを楽しむ 日々のうつわ使い」(翔泳社)を上梓 https://linkfly.to/40802QOD8JB

最近の記事

はるみちゃんがいた日々

今から7年ほど前のこと。 店の前の小道で、地域猫のファミリーがくつろいでいる光景を頻繁に見かけるようになった。 どうやら午後になるとそこで遊ぶのが日課になっているようだったが、しばらくしたある日、見慣れない子猫が一匹増えていることに気づき、目を瞠った。 まだあどけない様子のちいさな子。つい手懐けたくなるけれど、いきなり近づけば、猫攫いの変質者として親猫を警戒させてしまうだろう。 まずは怪しまれないくらいの距離で、危害を加える意思がないことを認識してもらい、次は数十cm近くへ。

    • UTAU

      坂本龍一さんの訃報に接してから、まもなく2か月。 今年1月には高橋幸宏さんが亡くなっているので、70年代後半から80年代前半にかけてYMOを熱狂的に支持していた人たちの喪失感はいかばかりかと想像する。 40年前の私は、彼らの先鋭的な音楽を理解するにはまだおぼこ過ぎる子どもだったが(ませた同級生は既に聴いていた)、それでも今に至るまで、坂本さんにはさまざまに感化を受けてきたと思う。映画のために書き下ろした音楽、多彩なアーティストとの共同作業、歳を重ねてからのファッション、社会問

      • たまむすびが終わる頃

        ローティーンの頃に夢中で聴いていたのが深夜ラジオ。 当時は無二の親友のような存在だったけれど、高校に入って以降は家を留守にする時間が増え、ラジオとはずっと疎遠な関係が続いていた。 が、コロナ禍でリモートワークを余儀なくされると、作業中にながら聴きできるメリットにあらためて気づき、数十年ぶりでアクセスするように。ありきたりな例えかもしれないが、今は、しばらくぶりの友人と旧交をあたためているかのような感慨をおぼえている。 若い頃に聴いていたのは主に深夜帯の番組だったけれど、50

        • Blue 修業中

          最近はテレビをオワコンとして馬鹿にする人もいるけれど、昭和生まれの私は生粋のテレビっ子だ。 今も面白そうな番組があればチャンネルを合わせるし、好きな番組をリアルタイムで見られないときは録画予約をする。 よく見るのはNHKのBSプレミアム。 特に気に入っているのが、2015年から不定期で放送している「京都人の密かな愉しみ」というシリーズだ。 ドラマパート(フィクション)を中心に、紀行、ドキュメンタリー、料理といった情報パート(ノンフィクション)を組み入れて構成した斬新な番組で

          台湾で出版された本のこと

          翔泳社から「暮らしの図鑑」というシリーズ書籍が順次発売されているのをご存知の方はいるだろうか? 私がこのシリーズのなかの2冊——「うつわ」と「民藝と手仕事」に監修者の一人として参加したのは、2019年と20年のこと。どちらも編集の自由度が高く、楽しく仕事させてもらった記憶がある。 かなり日が経つため、自分の中では既にアーカイブ的な存在になっていたけれど、今年になって、これらの翻訳版が台湾で発売されるという知らせが届いた。 自分が携わった本が台湾で翻訳されるなんて思いもよらな

          台湾で出版された本のこと

          生ききる、ということ

          2021年は、自著の執筆と撮影に多くの時間を費やした一年だった。 ちょっとした情報だったら無料で手に入る時代にわざわざ本を買ってもらおうというのだから、(どう評価されるかは別としても)持てる力は出しきったつもりでいる。 コロナ禍が続いたことで、店舗営業の縮小を余儀なくされた時期もあったけれど、心折れずに日々を過ごせたのは、気を張ってこの作業に専念していたからかもしれない。 ところが—— 今年の春頃から、昨年一年の疲れが遅れて出たのか、それとも長引くコロナ騒ぎに緊張の糸が切れ

          生ききる、ということ

          問わず語り

          まだ若く迷える子羊だった四半世紀ほど前、たまたま見てもらった占い師に「頻繁に居場所を変える相が出ています」と言われたことがある。そのときにはピンと来なかったのだけれど、もしかしたらこの言葉には「あなたは飽きっぽい人ですね」という意味合いも含まれていただろうか。 これまでいろいろなブログサービスを利用してきたが、3~4年も続けていると、飽きてしまってぶん投げたくなるのが常。その「飽きっぽさ」のために幾度も別のサービスに乗り換えてきたことも、「頻繁に居場所を変える」行為に含まれる