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【第2話 適性検査「ミキワメ」秘話】 〜臨床心理学者が採用・組織開発ベンチャーに転職した話

はじめに

2本目の投稿です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。コロナが長期化する中、SNSでは「疲」「ストレス」などの用語のつぶやきが増えているらしい。災害など緊急時のストレス症状は、現実の危機対応のあと、時間的に遅れてやってきます。忙しい平日には考えなかったことも、時間のある休日には頭に浮かんできます。SNSも良いですが、ぜひ身近な人と電話やテレビ電話をしてみてくださいね。声出すだけで世界は変わる!

さて、本日は適性検査の話題。弊社リーディングマークでは、2020年4月2日に新しい適性検査クラウド「ミキワメ」をついにリリース‼️ これは、能力検査と性格検査からなり、就活生の性格が、社内の誰に似ているのか?どの部署に合っていそうか?を一目でわかるようにした画期的サービスです。

適性検査クラウド「ミキワメ」https://mikiwame.com/

前身サービスである「キャリアベース」を含めると、立ち上げから6年になりました。私はこの検査の作成と整備に学術的な立場から関わってきました。ここ3年では400社、13万人あまりにご利用いただいており、大変光栄です。(キャリアベースとリーディングマークの皆様のおかげです!)今日はこれがどのような想いに基づいて作られているかをお話ししたいと思います。採用に課題を感じておられる方だけでなく、広く心理学などご関心のある方にぜひご一読いただきたいです。ちょっと堅めの文章にはご容赦を!

適性検査「ミキワメ」の特徴

ミキワメの性格検査は、「採用で重視する特性」に特化し、「対策されにくく」「わかりやすく・ローコストで実施できる」ものです。詳細は以下!

1.採用で重視している特性に特化

採用担当者が重視している性格特性というのは、トレンドがあるにしても、多くは何十年もあまり変わっていません。岩崎・西久保(2012)による以下の表を見ると、主体性や成長志向、コミュニケーションが重視されるようになってきているものの、「チャレンジ精神」「バイタリティ」「意欲」「創造性」「行動力」などは長い間、上位に君臨しています。

岩崎・西久保(2012)

しかしこれらの抽象的な概念は、どうやって見極めているのでしょう?ほとんどは、面接者の経験や勘に頼っているのではないでしょうか。もちろん、それである程度妥当な場合もありますが、根拠を提示しにくかったり、就活生の演技に乗ってしまったり、学生の移動や面談のコストがかかったりと、課題は多くあるように思います。

ミキワメは、採用担当者が重視する特性である「コミュニケーション」「ストレスマネジメント」「バイタリティ」に関連する性格をデータ化します。全て心理学的な理論をベースに定義し、必要な質問項目を収集しています。質問項目はサンプル調査での比較検証により信頼性と妥当性を兼ね備えるようアップデートしています。この辺りの詳しい説明は別の機会に譲ります。

脱線しますが、私は「コミュニケーション"能力"」という呼び方には疑問を抱きます。コミュニケーションの仕方に高いも低いも無いと思うのです。社交的ではなく、内面に関心があり、人がたくさんいるのは苦手だけれど、個人技があり、少人数の場で居心地よく過ごし、力を発揮する人もいます。コミュニケーションは"能力"ではなく”特性”として扱うべきでしょう。

2.対策されない構造〜心構えを変えたい〜

性格検査といえば、就活生にとっては「いかに良く見せるか」が大切なものです。何を詳しく見られているかわかりにくいぶん、その傾向は余計に強くなり、ついつい見栄が出てしまいます(これを「社会的望ましさの影響」と呼びます)。

しかし、性格というのは本来、表裏があるものです。長所が強調される特性にも、短所が必ずあります。チャレンジ精神のある人は、日常業務が退屈でやる気が出ないかもしれません。社交的で行動力のある明るい人は、孤独でじっとしていることに耐えられないかもしれません。何かの特性が高ければ良い、というわけではないのです。ミキワメでは、性格を各特性の「偏り具合」によって表現するため、どんな人にも長所・短所が見つかります。これにより、受検者にとっては素直に答える方がむしろ利益を得られます。また、検査結果のフィードバックがあるので、自己理解やその後の就活に役立てられるようにも設計されています。このように、ミキワメではライスケール(嘘をついているか見抜く質問項目)を混ぜる手法ではなく、検査の構造や心構え自体を変えようとするスタイルをとっています。無駄な腹の探り合い、もうやめませんか?学生と企業の双方に利益のある検査文化を醸成したいと願っています。

3.ローコストでわかりやすい

企業側の視点になりますが、ミキワメの性格検査は質問を約100問に絞っているため、実施はオンラインで1人10分です。また受検には1人500円しかかかりません。結果の出力は、心理学の専門家ではなくてもわかるような説明を心がけています。また自社社員の誰に似ているかが一目でわかるようになっています。詳細はHPをご覧ください。

適性検査を有益に使うための3つの心得

適性検査は万能ではなく、扱う側の理解の仕方が大変大切なものです。最後にこの点を少しまとめておきたいと思います。

心得その1 心の数値 検査結果は現実の数値ではなく、その人が自分を省みて感じている数値です。自分で思う自分と、人から見られる自分は異なっています。そういったメタ的な視点で検査結果を見る必要があります。この点を見誤ると、有能な人材を見逃してしまう恐れもあります。

心得その2 状況による変化 検査で測定している特性は、変わりにくいものもあれば、変わりやすいものもあります。人は変化する生き物で、ライフステージや立場、状況によって検査結果が変わってきます。就活生が受検する場合は、あくまで就活という状況のもとで受検したものであることを忘れてはなりません。

心得その3 目に見えないリスク 本来は見えないものが数値化されると、わかった気になってしまって、無意識に偏見や決めつけが生まれます。検査結果は先述のようにあくまでもその人の断片を記述したもので、その人の全てを示すものではありません。加えて、いうまでもなく検査結果は貴重な個人情報です。検査結果が自分の知らないところで見られてしまうことは、大変リスキーなことなのです。したがって検査結果データは慎重に扱う必要があります。個人の結果を利用するのは役員や人事、採用担当者にとどめることを徹底すべきで、それは偏見に左右されず、「個人や会社の利益のために使える人」でなければなりません。そうでない場合、人間関係の悪化や、パワハラなど別の問題に繋がってしまう可能性があることを肝に銘じるべきでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。適性検査やそのリテラシーについて少しでも理解が深まっていただければ幸いです。性格検査は、互いに長所を伸ばし合い、短所を補い合う、そんな人間関係を構築するために使われなければなりません。性格情報を大切にし、個人の可能性を最大化し、社内で良い関係を築き合い、事業を促進し合う。そういった文化が、適性検査を使う全ての企業に拡がっていけば良いなと切に願っています。

あ、「ミキワメ」に興味湧きましたか?では以下のURLをクリック!

https://mikiwame.com/


引用文献

岩崎暁・西久保日出夫(2012)大学新卒者採用における「求める人材像」の業種別傾向に関する研究―企業ウェブサイトの発信メッセージ分析を通して―, コミュニケーション科学, 35, pp179-207.

https://repository.tku.ac.jp/dspace/bitstream/11150/283/1/komyu35-14.pdf 

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