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【第3話 適性検査の適正】 〜臨床心理学者が採用・組織開発ベンチャーに転職した話

私はものごとの本質を大切にしたい人間です。

どうも、3話目になりました。リモートワークが続き、「職場」ってなんだろう、とか考えたりしてます。家のウォーターサーバーの水の減り方がすごいです。

今日も適性検査のお話です。この話をしようと思ったのは、いろいろな検査を調べている中で、どうも疑問に思ったことがあったからです。適性検査をすでに導入されている皆さんは、それをどういった基準で選びましたか?

「みんな使ってるから」「便利そうだから」「コスト削減できそうだから」

いろんなビジネス的な理由もあると思いますが、本当に採用の質をあげたいのであれば、適正な適性検査を選択すべきです。その際、検討するべき本質的なポイントは何でしょうか?以下では心理学的に検査を作る側の視点から述べました。是非ご一読ください。

性格適性検査の仕組み 質問項目で性格を数値化

「性格を視覚化できます!」「データに基づいて客観的に判断!」そんな謳い文句は山ほど溢れていますが、それってどういう仕組みなのでしょうか。それ信用できるの?と思う方も多いはず。そうです、なにをどのように数値化しているかは、実は検査によってかなり異なっていて、似たように見えて全然違っています。どんな種類の性格特性を数値化しているかももちろん重要ですが、肝心なのは「どのように数値化しているか」です。

How to measure

「外向性」や「競争心」など、よく耳にする性格特性を、個人差のある量的なものとして捉えた概念を「心理量」と呼びます。心理量は直接測定することができないので、別の指標に置き換えることになります。例えば「外向性」であれば、「外に出かけるのが好き」とか「大勢の人と過ごすのが好き」とか、そういった外向的な人物が持っていそうな特徴を多く備えている場合に、外向性が高い、と判断するわけです。(外向性の根本的な定義には、「心的エネルギーが客体へ向かう」というものがあります。定義にも、概念上のものや、実際に測定する際の基準にするものなど様々な水準があります。)ある性格特性を数値化するためには、その定義を反映していると考えられる複数の文章(質問項目)が必要です。それらの文章が意味する内容の共通部分を、「心理量」として設定するのです。

回答者は、質問に対して、自分にどれほど当てはまるかを考え、数値に置き換えます。「あなたは大勢の人と賑やかに過ごすのが好きだ」などの質問項目に対して、「1.まったく当てはまらない」から「5.とても当てはまる」までの5段階で回答する、などは誰しも体験したことがある形式でしょう。目に見えないはずの特性を、数値に置き換えるわけです。1つの特性を数値化するために、似た質問を複数用いるため、検査を受けた人は、「なんか同じこと何回も聞かれるやんけ」という感想を抱くでしょう。そう、その「同じ」感覚こそが心理量です。複数の似た項目に対する回答の合計点が、その人の個人得点になります。例えば「外向性」を5段階×5項目で数値化しようとした場合、最高点は25点、最低点は5点、といった具合です。ここで、例えばほとんどの受検者が4や5をつけてしまう質問項目があれば、それは物差しとしての意味を持たず、弁別力のない項目となりますね。サンプルで分析してみて、どうも思った通りにならない場合は、質問文の日本語ニュアンスを修正したり、新たな項目を追加したりしながらソフィスティケートされていきます。

Simple is the best

ここで重要なのは、心理量の定義がどのように決められているか、ということです。特に「軸」をどのように定めるかという問題があります。例えば「自己主張傾向」の強さを測定したい時、その反対は何になるでしょうか。とある有名な適性検査では、「主張」と「受容」を同じ軸で捉え、どちらに近いかを回答させる形式で行われています。「自分の意見を主張する」ことと「人の意見を聞き入れる」ことは対概念でしょうか?どちらも大切にしている人や、どちらも意識しない人は、どう答えれば良いでしょうか。それぞれ別々の概念として測定したほうが良いのではないでしょうか。

このように、検査の項目は「ぱっと見」納得がいくように書かれていても、実は複数の概念が混在していたり、想定する状況によって回答が変化してしまう行動傾向を質問していたりします。そういった項目が多いほど、回答結果は妥当ではなくなってしまいます。「心理量」は出来るだけ1次元で測定できるシンプルなものであるべきです。適性検査を選ぶ際には、そのあたりの基準がどうなっているかを確認してみてください。適当に作られたものは、見た目はすごそうでも、結局妥当な測定が出来ていないということになるでしょう。難しいのは、心理量は目に見えないため、妥当でない測定をしていても、ユーザーにはそれを確認する手軽な手段がないということです。数値になっているというだけで、それを信じてしまいがちです。データになっていれば何でもいいわけではない。しかし実際は、検査のそういった「正しさ」よりも、ビジネス上の理由や、形式的な導入を重視している企業が多いのではないでしょうか。それはデータサイエンスに基づいて採用を行っていると、はたして言えるでしょうか。なんとなくデータを使って、なんとなくその結果を信じ込んでいませんか?

Factor 検査結果に影響する要因

第2回でも少しお話ししましたが、性格適性検査の結果には、さまざまな要素が影響を受けます。特に以下の3点には気を使います。

どのような立場、環境で受検しているか

その検査の結果を誰がみるのか、何に使われるかによって、受検者の心構えは変わります。採用・就活の適性検査では、受検者は候補者や自社社員です。当然、会社の人事担当者が見ることを想定して受けるでしょう。候補者は良く思われたいと意識的・無意識的に思うでしょうし、社員も同じです。その影響を減じるために、検査では「ライスケール」と呼ばれる項目(「嘘をついたことが一度もない、など多くの人が同じ答えになるはずの項目)を入れるのが一般的ですが、これだけでは対策できてしまうので不十分です。大切なことは、検査を受けることが受検者本人にも利益をもたらすことを、検査前にきちんと説明することです。嘘をついたり、替え玉受検をしても意味がない構成にしておくことで、受検者のそういった意識を減じることが大切でしょう。そのため、適性検査は会社側だけに利益があるものではなく、会社と受検者双方にとって意味のある検査にすべきです。受検者への結果のフィードバックを充実させたり、自己理解につなげられる構成にすることで、検査結果は妥当なものになりやすくなります。会社が「採用したくない人」を一方的に選別するような検査は、あまりいい検査とは言えないでしょう。私は「適性検査は自分のために受けるもの」という認識と文化を拡充させたいと思っています。

受検前に何を見せられたか

そのように考えると、検査前の注意書きが実は大きな意味を持ちます。個人情報はきちんと保護されること、検査は自己理解を深めるためのものであること、会社側だけではなく受検者自身のためになること、嘘をついても意味がないこと、静かな場所で1人で受検すること等、事前に説明書きをするだけでも、多くの受験者の心構えを変えることができます。加えて実際に検査結果を厳重に取り扱い、受検者に不利益をもたらさないようにすることが、長期的にみて会社の利益や良いイメージにつながるのです。なにやらよくわからない検査をさせられる会社に入りたいとは思いません。きちんと説明し、検査結果をフェアに用いてくれる会社が魅力的でしょう。

受検中に何を思うか

検査結果を妥当なものにする工夫として、質問項目の数をしぼることがあります。もちろん信頼性の観点から、少ないほど良いということではないのですが、心理学の調査では、100問前後がちょうどよいと言われています。120項目ぐらいまでは頑張れても、200以上になってくると受検者のやる気を削いだり、疲れが影響し、後半の回答が雑になってしまいます。今使っている適性検査はどれくらいの項目数ですか?一度確認してみてください。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今使っている検査、正確ですか?使えると思っていて、実はそんなに妥当じゃないかも?それはどうやって検証していますか?どうも想定通りの社員が入ってきていないなどの肌感はありませんか?目に見えない性格、うまくいっているように「データの上では」見えているだけかもしれません。人を見極める前に、検査ツールを見極めてください。

私はものごとの本質を大切にする人間です。弊社の「ミキワメ」は、本記事の内容に気を遣って設計しました。ぜひ一度、お試しください。

適性検査クラウド「ミキワメ」 https://mikiwame.com/



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