内海隆雄

インプロアカデミー代表/群馬大学非常勤講師。インプロビゼーション(即興)の専門家として…

内海隆雄

インプロアカデミー代表/群馬大学非常勤講師。インプロビゼーション(即興)の専門家として、人やチームの即興性を引き出す仕事をしています。10年を超えるインプロ経験、100回を超えるパフォーマンス経験、1000回を超えるワークショップ経験があります。NHK『あさイチ』出演。

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インプロを見る3つの視点と、「インプロもどき」との違い

僕はインプロを始めてから10年くらいになる。インプロは日本ではまだまだマイナーだが、それでもこの10年の間にずいぶんと広まったと感じている。おそらくインプロをやっている人の数は3倍以上になったし、インプロを知っている人はもっと増えただろう。 僕のミッションはインプロを広めていくことでもあるから、これは基本的に望ましいことだと思っている。一方で、インプロが誤解されて広まっていく可能性も高まっていると感じている。インプロゲームはとっても楽しい。しかしそれ故にゲームだけが独り歩き

    • 韓国へ観劇旅行に行ってきたので、小劇場を観てきた感想を書いておくよ

      今年の初めに「そうだ、韓国に観劇に行こう」と思い立って、HISの初夢ツアーを使って2泊3日の韓国観劇旅行に行ってきた。せっかくなので、その感想を書いておこうと思う。 ちなみに、筆者は日本でちょっと演劇に関わっているので、わりと創作者視点の感想が多いかもしれない。その点はご了承を。 今回の観劇旅行では、1日目に大劇場でミュージカル『レ・ミゼラブル』を、そして2日目に大学路(テハンノ)で小劇場を3つ観た。 大学路はソウルにある小劇場の街で、日本で言う下北沢みたいな所である。

      • 韓国でミュージカル『レ・ミゼラブル』を観てきた感想

        韓国でミュージカル『レ・ミゼラブル』を観てきたので感想を書くよ!(ざっくりと) まずはみんな歌がうめぇぇぇ!というか、そもそもの発声がいい。みんな声量がめっちゃあるし、ブレないしで、「天然でうまい人たちが歌っている」というよりも「鍛え上げられた人たちが歌っている」という印象を受けた。 「声量がある」ってマイクのある現代だと見落とされがちだけど、「井上尚弥は基本的なパンチ力が違う」みたいな感じでライブではめっちゃ大事だなと思った。 特にジャンバルジャンの俳優さんは「イタリ

        • いつでもどこでも誰とでも、インプロができるようになりたい

          「いつでもどこでも誰とでも、インプロができるようになりたい」 インプロバイザーであれば、一度は考えたことがあるテーマではないだろうか?かく言う僕も、何度も考えたことがあるテーマである。 一方で、それを実現するのは思ったよりも難しい。特にストーリーテリングは共通認識がないと積み上げていくのが難しい。 僕はストーリーテリングのインプロが好きなので、ここ2・3年は「いつでもどこでも誰とでも」という考えはあまり持っていなかった。(去年ノルウェーでリー・ホワイトがお客さん3人とイ

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          いいインプロバイザーになるための4段階

          今年は5月にデヴィッド・ジンダーからマイケル・チェーホフテクニックを、7月にウィリアム・スコットからマイズナーテクニックを学ぶ機会があった。どちらも世界トップレベルの素晴らしい講師で、同時にどちらも自分のテクニックをすごく構造的に捉えていたのが印象的だった。 特にデヴィッドは講師養成クラスで「私の方法論は私が思う素晴らしい俳優を育てるためのものである。それに必要のないものは全て省いた」と言っていて、それはとても印象に残っている。 その日から「いいインプロバイザーを育てるに

          いいインプロバイザーになるための4段階

          ファシリテーターは4つの人格を使い分ける

          この記事は「ファシリテーター Advent Calendar 2022」の22日目の記事になります。 ファシリテーターという職業は複雑なものです。ある時には聴くことが大事でありながら、あるときには勇気ある介入が大事だったり、またあるときにはタイムマネジメントが意外と重要だったり、必要なことがめくるめく変わっていく職業だと感じています。 僕はこの複雑さを、「ファシリテーターは4つの人格を使い分けている」と考えることで捉えています。この記事では、その4つの人格を紹介します。

          ファシリテーターは4つの人格を使い分ける

          言葉を使わず、遊びあう「サイレント・プレイ・ワークショップ」を行います!

          こんにちは、内海です。年明け早々となりますが、2023年1月3日(火)の午後に、言葉を使わずに遊びあう「サイレント・プレイ・ワークショップ(Silent Play Workshop)」を行います。 進行も含めて、言葉を使わずに行うワークショップです。「言葉を使わなくても、いや言葉を使わないからこそつながれた!」を目指します。 聴覚障害のある方もご参加頂けます。ご興味ある方は以下お読みの上、どうぞご参加ください。 きっかけワークショップのきっかけは、インプロ体験会に参加し

          言葉を使わず、遊びあう「サイレント・プレイ・ワークショップ」を行います!

          ITIのインプロフェスティバルに参加してきました

          8月28日~9月4日にかけて、ノルウェーのトロンハイムで行われたインプロフェスティバル「Trondheim International Impro Festival」に参加してきました。これはITI(国際シアタースポーツ協会)が2年に1回開催している、国際的なインプロフェスティバルです。今回も世界的インプロバイザーによるワークショップ、ショーが多数行われました。 この1週間は、僕のインプロ人生の中でも特に濃厚な1週間となりました。ここでは印象に残っているいくつかのことを書い

          ITIのインプロフェスティバルに参加してきました

          「今ここ」に集中するとはどういうことか?

          ここ10年くらい、「今ここ」という言葉がよく聞かれるようになっている。その牽引役はマインドフルネスだろう。また、『嫌われる勇気』が大ヒットとなったアドラー心理学もまた「今ここ」を重視している。 そして僕が行っているインプロ(即興演劇)もまた「今ここ」を重視している。そもそも「即興」を意味する という英単語の語源は「Im(~でない) + pro(前もって) + visation(見ること)」であり、まとめると「前もって見ることをしない」。つまり「今ここ」に集中することを多分

          「今ここ」に集中するとはどういうことか?

          インプロマインドあふれる社会をつくる

          悲しい事件や虚しい選挙結果がテレビから流れてくる。ここ数日は、そんな中で自分がインプロを教えることの意味について考えていた。 その結果分かったことは、僕のインプロバイザーとしてのビジョンは「インプロマインドあふれる社会をつくる」ということだった。そしてそれは次のような社会である。 好奇心を大事にする社会 僕は人間とそれ以外の動物を分けた最大の要因は「好奇心」だと考えている。そして好奇心はそれ自体に価値があるものだと思っている。 インプロマインドあふれる社会では、人は自

          インプロマインドあふれる社会をつくる

          「3日でつくる演劇ワークショップ」にてインプロを行ってきました

          今年のゴールデンウィークは栃木にて3日間のインプロワークショップ&発表会をファシリテートしてきました。これはトッコ演劇工房「3日でつくる演劇ワークショップ」の一企画として行われたものです。僕が3日でつくる演劇ワークショップに行くのは6年ぶり3度目で、前回の様子はインプロ漫画『プレイフル』の題材にもなっています。 この企画はいつも素敵な時間となるのですが、今回もまた素晴らしい時間となりました。帰りの電車に揺られながら、簡単なレポートにまとめようと思います。 2つのヴィジョン

          「3日でつくる演劇ワークショップ」にてインプロを行ってきました

          心理的安全性を高めるリーダーシップとは?

          この記事は、心理的安全性を高めるリーダーシップについて書くものである。インターネットで心理的安全性を高める方法を調べると「1on1をしましょう」「雑談をしましょう」といったことが書かれているが、これらは施策レベルの話である。 この記事ではそういった場面でリーダーが何を考え、どのように振る舞ったらいいかを紹介する。これが抜けていると、せっかく1on1や雑談をしても心理的安全性が高まらないかもしれないからだ。 心理的安全性の研究に基づいて書くと同時に、10年以上に渡る筆者のワ

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          心理的安全性に対する誤解~馴れ合い・ぬるま湯・性格の問題~

          昨今、「心理的安全性」という言葉が急速に広がっていると感じる。実際、Googleの検索数を見ても「心理的安全性」というキーワードの検索数は明らかに増えている(最初の要因はGoogleによる研究成果、次の要因は『心理的安全性ののつくりかた』によるものだろう)。 僕は心理的安全性という概念はチームの本質をついたものだと思っているので、その言葉が広がることは好ましいことだと思っている。一方で、心理的安全性に対する誤解も増えていると感じる。それは「心理的安全性は馴れ合い」「心理的安

          心理的安全性に対する誤解~馴れ合い・ぬるま湯・性格の問題~

          「相手にいい時間を与えよう」はバトンのようにまわっていく

          僕は「インプロ」と呼ばれる即興の演劇をしている。台本の無い中で、プレイヤーたちのやりとりの中から演劇を生み出していく、というものである。 僕がインプロに出会ったのは、大学の授業においてだった。東京学芸大学で教育学を学んでいたところ、「ワークショップを学べる授業があるらしい」と行ってみたらそれがインプロだったのだ。 インプロはイギリスの劇作家であったキース・ジョンストンという人物が始めたものである。キース・ジョンストンは85歳となった今でもインプロを教えていて、そして「私は

          「相手にいい時間を与えよう」はバトンのようにまわっていく

          インプロは明るい人にしかできないものか?

          以前、小堺一機さんが話していたことで印象に残っているものがある。それは「芸能人はだいたいシャイ」という言葉だ。『ごきげんよう』で有名な小堺さんは数多くの芸能人と出会う中で、そのことに気づいたとのことだった。同時に、「シャイだからこそできる表現があるのだろう」と話していたのも印象的だった。 さて、インプロをやっているとよく言われる言葉に、「私はみなさんのように明るくないのでインプロはできません」というものがある(若い人からは「コミュ障なので」とも)。 しかし、僕はインプロは

          インプロは明るい人にしかできないものか?

          「いい子」とは「都合のいい子」の言い換えに過ぎない

          小学校や中学校などで演劇ワークショップをすると、終わった後に先生から「普段とは違う子どもの姿が見られました」と言われることがよくある。 さらに、ワークショップ中は「積極的で素直で、いい子だなー」と思っていた子が、先生から「普段はよく怒られる子なんですが……」と言われてびっくりすることもある。 そこには、学校の授業における「いい子」像と、演劇(特に僕の場合はインプロ)ワークショップにおける「いい子」像の違いがある。 ざっくり言えば、学校の授業における「いい子」とはじっくり

          「いい子」とは「都合のいい子」の言い換えに過ぎない