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よもやま語らいゼミ開催後記⑫「自分の寿命が売れるとしたらどうする?」

 よもやま語らいゼミとは東大生を対象に、あるテーマについて自由に話し合いをするイベントです。9月20日開催の今回は「自分の寿命が売れるとしたらどうする?」をテーマにし、運営側も含めて十人弱で話し合いました。ややSFチックなテーマだったこともあり、色々と想像が膨らみ、チャットも含めてさまざまな観点からの話が色々できました。その様子を簡単に紹介したいと思います。

 よゼミでは、最初に話題提供としてサポーターがテーマについて考えたことを簡単に話します。今回は、自分の寿命を売る・買うとしたらいくら欲しいか・出せるかについてのネット調査の結果が紹介されたり、現実世界で寿命というのは直接お金で買うことは難しいが、お酒やタバコ、不健康な生活などで、楽しさと引き換えに事実上寿命を売っているのでは、という考えが示されたりしました。

 最初に話題になったのは、寿命といっても、80代・90代の一年が延びるのか、20代の一年が延びるのかによっても違うよね、ということです。若いうちの身体・思考力・環境などなどを持った状態の一年の方が価値は高いと感じる人が多かったようです。20代の時間を買って、失敗を恐れず挑戦したいという意見や、そうは言っても若いうちはお金がないのでそんなにお金は払えない、などの意見が出ました。もし後払いができるとしたら使いたいといった人や、買ったとしてもその期間にお金がなくて自由に遊んだりできないならあまり意味を感じない、といった人もいました。

 また、もし若い時の時間を自由に買えるようになったら、アスリートの世界が劇的に変わりそうだという話も出ました。確かに、10代や20代が競技力のピークというスポーツも多くあり、そうなるとアスリートにとっては若い時の時間は何よりも価値のあるものかもしれません。一流選手が、その競技で大金を稼いで若い時の時間を買い続け、そのスポーツ界で長期間君臨することももしかしたら可能になるかもしれませんね。(そうなった時にそのスポーツが面白いかは別問題ですが...)

 もし寿命を売ることも自由だとしたら、老後の時間を売って、若い時の時間を買いたいという人もいました。しかし、もし老後の時間と若い時の時間が世界全体で釣り合いが取れていないといけないとしたら、需要と供給のバランスが悪そうだという意見も出ました。一方で、孫の結婚を見るまで死ねないから老後の時間を買いたいという人や、若いうち特有の悩みをスキップしたいという人など、老後の時間を買いたい人や若い時の時間を売りたい人も一定数いるのでは、という意見もありました。

 では、結局いくらなら売るのでしょうか。この点についてもさまざまな考えが出され、自分の今の年齢の一年間の時間を売ると仮定した時、1000万円という人や1億円という人などばらつきがありました。20代・30代・40代など、若さに応じて値段を分けて考える人もいました。生活費からしっかりと計算して導出してくださった人や、将来の年収を考えて計算してくださった人など、金額を導くいろいろな考え方がみられて面白かったです。お金だとインフレしたら価値が減るから、宝石か貴金属で欲しいといった人もいました。現実的ですね。

 次に、例えばお酒やタバコなど、寿命を縮めかねないとされているものをどれだけ摂取するか(=今の楽しみで、将来の寿命をどれだけ買うか)についても話されました。体に悪いことをして多少寿命が縮んだとしても、今楽しんでQOLが上がるならそうしたいという人や、今飲み会を我慢して長生きしても、将来周りの人が先に死んでしまったら逆に寂しいのでは、などという意見がありました。確かに、長生きするということは周囲の友人や家族などを見送ることも多いということになりますね。面白い観点だなと思いました。

 また、お金は持っている人と持っていない人の格差も大きいので、何かお金以外で時間と取引できるものがあれば良いのでは、という話にもなり、自分にとって嬉しいことが起こる回数や確率などを取引材料とすれば良いのでは、というアイデアも出ました。平等を重視するなら、寿命や嬉しいことの回数を全員一定にしてはどうかというアイデアもあり、そのような世界になると、もはや人間はロボットのような感じになるね、という声もありました。

 さらに、寿命が取引できると仮定した場合の、社会制度的な観点の話も出ました。軽はずみに売買したり、悪人につけ込まれたりしないように売買できる年齢に制限を設けては、といった意見や、貧しい境遇にある人が買い叩かれないように公定価格を設けてはどうか、などの意見も出ました。なんだかSF小説を考えているようで楽しかったです。

 今回は「自分の寿命が売れるとしたらどうする?」という非現実的なテーマでしたが、だからこそ自由に想像が膨らみ、開始前までは想定していなかったようないろいろな考えを聞くことができました。具体的に金額を考え出すととても難しいなと感じ、自分の一年に自分がどれだけの価値をおいているのかという、潜在的な思考が発見できるようでとても面白いテーマだったと思います。みなさんも一度、考えてみてはいかがでしょうか?

 今回の開催報告はこのあたりで以上にしたいと思います。参加してくださった方、ありがとうございました。10月のよゼミは、「『辛い分良いことあるよ』は本当か?」というテーマで開催します!
チャットのみ参加・聞き専でも、ご飯を食べながらでも大丈夫です。ぜひお気軽にご参加ください。


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