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TIMELINE for ”HOMELAND 11 blues” 東京Veats Shibuya 感想

はじめに

 tacicaによるワンマンツアーTIMELINE for HOMELAND 11 blues。ツアーファイナルはVeats Shibuya。一週前に台風接近の最中で大阪公演、名古屋公演と連日行ってきた。9月に入って少しは涼しいかと思いきや、まだまだ残暑でめちゃくちゃ暑い。
チケットはsold out。配信有り。


感想①ノンストップHOMELAND

 チケットsold outもあってか、スタッフの方から前に詰めるように度々促された。
今回は16時30分開場となっており、1時間近く待った。スマホの電波が全く入らなかったので、HOMELAND 11 bluesの音源を聴き続けていた。
   
 ほぼ定刻通りにメンバー登場。
1曲目のbarefootは猪狩さんのソロ。
人間は何故 暴風 豪雨〜の暴風の部分で声を荒げるように歌っていて先日の台風のことが思い起こされる。
 演奏が終わったと同時に小西さんのベースが会場を包んだvase。ズンズンと響く低音が胸を貫く。コーラスで声を張り上げる小西さんも素敵。
(特に"包帯だらけ"のところ)

 newsongは若干高いキーの声が出しづらそうに思えた。でもそんな振り絞っているように声を発する猪狩さんの姿は輝いて見えた。
 紅白の照明とストロボが強烈だったCo.starはそれに負けていないくらいの演奏。お三方の発する熱量が会場に伝わり、観客の盛り上がりもそれにつられていた。イントロのギターはわざと? なのか単なるミスなのか少し音が飛んだ。

 大陸は今までの流れを一度落ち着かせるようなミドルテンポかつ猪狩さんの声が冴え渡った。
歌詞にもあるようにまさしく吠えているような声。いい意味で動物的、野生的な音と声。そしてそれを支える優しげなドラムとベースのリズム隊。
 かと思えば、何かが乗り移ったのかと思うほどに激しく頭を揺らして、演奏していた猪狩さんが印象的だったEmpty Dumpty。照明も絞られて暗めのステージで演奏する姿に妖しさを感じる。
こんなにもカッコ良い曲だったとは。TLツアーではこういう発見が出来るのがまた良い。
 そして、さらに一転して爽快なサウンドとコーラスで短い曲なのにインパクトのあったbearfoot。終わり際に中畑さんが笑みを浮かべているのがとても良い。
曲終わりにようやく猪狩さんがいつものようにありがとう! と言葉を発するも特にmcは無し。

 真っ暗なステージに白い光が照らしだす。それがまさに月光のようだったFrom the Gekko
特にこの曲の時は小西さんのベースを凝視していた。手の動かし方、別にベースとか触った事無いのに真似してみたくなる。
 シームレスに繋がったFool's Goldはcメロの際に小西さんがマイクに近寄って声を張り上げて歌っている姿はまさにtacica。その後の"戯言"の猪狩さんの歌い方に痺れた。
もっとライブでやって欲しい。もっともっと聴きたい。今回来られなかった方の為にも是非ともまたコンスタントに演奏してほしい一曲。
 ドラムが先行した後に中畑さんのカウントでギターとベースが入ってくるMr.。猪狩さん、小西さん2人で向かい合って演奏している場面で興奮。
2番入りの猪狩さんの変幻自在の声。本当にこれ生歌唱だよなと思わせるくらいに声の切り替えが凄まじい。
 
 ラストのDANは言わずもがな圧巻で最高。11曲目の筈なのにその疲れを感じさせない。むしろ1曲目のような熱のこもった歌声と演奏。汗を滲ませながら、力強く命を振り絞っているかのように演奏するステージ上の彼等はとても輝いて見えた。
11曲もやっていたんだっけと思うくらいあっという間に時が過ぎてしまった。

感想② グッズ紹介

 猪「ありがとう。配信を見てくれてる方もありがとうございます。台風が来てたりして、先週は大変で来れない人もいた。だから急遽配信をしています。緊張してます」
先週の大阪のmcでも話していたが、来れない方のことも分かっています、と事情が事情なので仕方ないことではあるが悔しい思いをした方々はたくさんいると思う。でもこうして救済してくれるのがtacicaだから、こちらは信じて一生ついて行こうと思える。

 そして、ここから小西さんのグッズ紹介へ。
小「最後のグッズ紹介しようと思います」
何処となく重々しい感じな気がしたけれどその後すぐに「……あっ、今回のツアーでですよ」と付け加えたのでいつも通りの空気感に戻る。
ちなみにこのとき、中畑さんに何かあったのかスタッフさんが駆け寄って対応していた。

小「自分が着ているんですけど、このツアーTシャツ作りました。ただ人気でもう売り切れちゃったみたいで……。買えなかった人すいません。
その代わりと言っては何ですけど、ニュースペーパーバッグっていうものを作りまして……」
Tシャツの代わりがバッグ? と頭の中に疑問符が浮かんでいた。
「2色作ったんですけど、自分たちで決められなくて。ファンクラブサイトで、どっちの色が良いか皆さんに聞いたんですけど、半々に別れちゃって、両方いっちゃおうか! ってなって両方作りました」
ここで実際のバッグを小西さんが肩にかける。何故か中畑さんの方を向く小西さん。
中「似合うよ!」
ずっと中畑さんの方を見ていたが、中畑さんに客席の方見てと促されていた。
中「今日オーバーオールじゃないんだ」
小「オーバーオールじゃないです。迷ったんですけど」

今度は肩にかけていたバッグを手に持って詳細説明。
小「これ、中に第二のポケットがついていて、色々小さいものが入ります」
ここで観客がザワつく。第二のポケット? 第一のポケットは何処? と呟く声が聞こえた。 
バッグの片付けをしようとしていた小西さんに
配信されてるよと中畑さんからツッコミが。
さらにバッグからタオルを今度は取り出す。
小「タオルも作りました。家にいっぱいあっても困る物じゃないですか。これ、吸水率凄い良いんで」
中「率?」
小「はい。吸水率良いんでおすすめです」

小「あとコースターも作りまして、オシャレにできたなと個人的に思ってます。そのまま使うのも勿論、部屋の中に飾るのも良いのかなと」
他にもグッズあるんで見ていってください、とここで紹介終了。

以下反省会。

猪「緊張した?」
小「今回のツアーの中で一番ダメだったかも」
猪狩さんが何か言おうとしているのを察した中畑さんが言わないで! と静止していたが、猪狩さんが話し出す。
猪「俺、第二のポケットで鳥肌が立ったよ。第一のポケットどこにあるの?」
小「いや、これ自分でも気づいたんだよね。これ第一のポケットじゃんって」
猪「めちゃくちゃ怖いよ。どこに第一のポケットあんの。
あとニュースペーパーバッグも言えてなかった。
ちっちゃいスがいっぱい入ってる感じ。
ニュースペースパースバッグスみたいな。
だから、そんなに悪くなかったよ。いけてたよ」
小西さんはただただ苦笑い。

猪「今日来る時にお笑いコンビのFUJIWARAがロケやってて。小西が楽屋に来た時に『FUJIWARA、来てたでしょ』って聞いたら
『ライセンスの?』って言われた。
ライセンスの藤原のこと、別に藤原って言わないし」
じわじわくるよねと猪狩さんが笑っていた。

最後までよろしくお願いしますと
ここからはjibunの演奏に移っていった。

感想③jibun

 先ほどまでのグッズ紹介のやり取りが嘘だったかのように演奏モードにスイッチが切り替わる。
優しげな音色と伸びていく歌声が印象深かったCAFFEINE 珈琲涅。
歌詞としては明か暗かでいえば後者だけれど、アウトロで盛り上がっていくのもあり、そこまでの暗さを感じさせない。
 続くRAINMAN 雨人は打って変わって曲調的には明るめの曲。雨のジメジメした感じはない。だけどどこか苦悩するような、淋しさも垣間見えるような不思議な曲。

 激しい音が会場を包んだHUMMINGBIRD 蜂鳥
御三方の気迫溢れる演奏はもちろんのこと
"キミらしい命"というフレーズにギュッと心を掴まれるようだった。
 限りない日々の〜と力のこもった歌声から始まったANIMAL 動物

あの自分さえ偉大に見えたら
もう分かり切った生命に別れを

そんな声とは裏腹に、あの自分さえと卑下するような歌詞。その後に続く歌詞も何だか不穏だ。
でも管楽器の音色が響いているメロディはどこか讃えるようなパワーを持っていた。

猪「台風が来たりとか、一時は開催が危ぶまれてしまったけど無事に出来て……。
個人的にHOMELAND 11 bluesが一番好きなアルバムで。もっとみんなに聴かれても良かったのになって」
そう言うと、込み上げるものがあるのか、暫く猪狩さんが落ち着かせるようにギターを触る。
こういう思いを打ち明ける猪狩さんはなかなかレア。それだけ自信があったアルバムだったのだろう。少なからず私はこのアルバムは大好きだ。
 
ラストを飾るSUN 太陽はそのタイトル通りの暖かさが会場に広がっていくようだった。外のギラギラした光ではなく、朝日とか夕日に近い暖かさをもつ曲。
普段ラストでよく演奏されるアースコードのようなアウトロは鳴らさず、しっとりと静かに音が止んだ。
ありがとうと朴訥ながらもそこには感謝の想いが溢れていたのがわかった。小西さんも中畑さんも観客へ向かって頭を下げる。
そんな彼らを讃えるように拍手で送り出した。

感想④アンコール

 今か今かとアンコールを待ち侘びるもなかなか出てくる気配がない。しかし尚も手拍子は鳴り止まなかった。
5分ほどしてようやく再び姿を現した。
猪狩さんは今回のツアーTシャツに着替えていた。小西さんも着ていたのでお揃いの2人が眩しい。
 おそらく新アルバム発表があるだろうと身構えていたら、開口一番に猪狩さんがブレインスリープを買いましたと聞き慣れない単語を並べたことに驚いた。
これに中畑さんは大笑い。聞かせて聞かせてと猪狩さんの話に興味津々だった。
猪「ブレインスリープっていう、脳が眠る枕があるんだけど。ここ3日間くらい使ってて、もう脳がシャキッとしてる。ここ一年くらい買うかどうか迷っていて。結構値段もするから」
中「相当頭クタクタだったんじゃないの?」
猪「だから今はもうシャッキっとしてます。
ネットで買うのは怖いなと思ってて、実際店で寝てみて決めようとしてた。でも店員さんがずっとブレインスリー"ブ"って言ってた」
小「本当は"プ"なの?」
猪「うん。だから、もしそういうトラブルとかになったらね。いやこっちはブレインスリーブって言ってましたよ、って言われたら確かに……としか返せないよね」
そこまで話すと猪狩さんがスタッフから何やら資料を受け取る。
猪「一年前から作ると言っていたアルバムが出来ました」
ここでとうとうニューアルバムの発表!
タイトルは「AFTER GOLD」
それに伴ってツアーも全17箇所! 
近年なかなか無かった数のツアー日程に観客からも思わずどよめきが起こっていた。
さらに20時からチケット先行販売、ティザー映像と収録曲の「物云わぬ物怪」のMV公開。0時には「物云わぬ物怪」の先行配信! という盛りだくさんの情報が解禁!

猪「今回ずっと前から気になっていた高崎にあるTAGO STUDIOに合宿でレコーディングをしていました。それでそこの感想とかを話してる動画も上がるんだよね。
カフェとかもあって良いところなので、もし高崎に行くことがあれば是非」

調べてみると確かにオシャレで雰囲気の良い場所だった。是非行ってみたい。

そんなアルバムに収録されているミカラデタサビをアンコール一発目に披露。
中畑大樹50祭で初披露され、その後のcivilianとの対バンでも演奏されていた曲。なので、こちらをプッシュしてMV公開や先行配信をするものだと思っていた。
曲としては小西さんのベースから始まり、中畑さんがスタンディングでドラムを叩くというインパクトの大きいイントロから歪みのある猪狩さんのギターが交わるといったギラギラしたロックナンバーという印象。
また、血の色といったお馴染みのフレーズが溢れていた。

 新曲終わりの喝采の中に続いたのはアロン。もう最近では割と定番の曲になりつつあるし、とくにアンコールで披露されやすくなっている。とは言っても何度聴いてもカッコいい。それぞれに目立つパートがあり、それぞれにスポットライトが当たるようでまさしくalone(孤独)のように思う。
 
猪「このアルバムツアーをやる時からずっと考えてきたんだけど、LOCUSというアルバムに入ってるHELLO FAMEという曲を最後にやります。
さっき最後にやったDANと同じ人のことを歌った歌です」
DANは「悪魔とダニエルジョンストン」という映画から影響を受けて作られた曲。つまりダニエルジョンストンのことの歌。私自身はこの映画を見たことはなく、ダニエルジョンストンについても深くは知らないがそれでもどこか共感出来る歌詞が、心地よいメロディが頭に残る。猪狩さんの書く歌詞のパワーと曲のパワーが重なり合い、小西さんと中畑さんのリズム隊が入ることでさらにより良い音楽になる。

夜明けが近い 太陽も月も
必ず僕を見つけてくれるでしょう
誰の眼にも届かないけど
逆様に描く様
鮮やかに照らすよ

こちらの歌詞で締め括った。
誰の眼にも届かないかもしれないけれど彼等は歌い続けている。それだけの期待感を彼らには寄せている。
派手に音を鳴らすこともなく、ステージ上の御三方は最後の一音まで噛み締めるようにしていた。

ありがとうございました。
猪狩さんがそう言ったのを合図にやりきったように御三方はステージを降りて行った。

実に濃厚な2時間弱の体験だった。

セットリスト

  1. barefoot

  2. vase

  3. newsong

  4. Co.star

  5. 大陸

  6. Empty Dumpty

  7. bearfoot

  8. From the Gekko

  9. Fool's Gold

  10. Mr.

  11. DAN    

  12. CAFFEINE 珈琲涅

  13. RAINMAN 雨人

  14. HUMMINGBIRD 蜂鳥

  15. ANIMAL 動物

  16. SUN 太陽

  17. en.ミカラデタサビ

  18. en.アロン

  19. en.HELLO FAME

 3公演全てセトリは同じだった。無論タイムラインツアーなので演奏される曲は分かってはいるのだが、改めて聴いてみると曲の繋がりなど色々な発見があった。

おわりに 

 東名阪の三公演。たった1週間で終わってしまったツアー。これだけではもの足りないくらいに好きなアルバムだったので、難しいとは思うけれどもう一度、もしくは円盤を出して欲しい。
そして今回の会場Veats Shibuyaは音も良かったし、照明もとても良くファイナルに相応しい場所だったと思う。
配信はいつものように有難いことに1週間のアーカイブ付きだったので何度でも何度でも見れる。

 そしてとうとう発表された新アルバムとそれに伴うツアー。この先半年近くの予定が一気に埋まったような気がした。自分は本当にtacicaに生かされているなと思える。
あと2ヶ月ほど。されど2ヶ月。この悶々とした気持ちのまま日々を生きなくては行けないと思うとそれはそれで辛い。だけど、きっとアルバムを聴いていて、ツアーに参加して、年を越して、いつの間にかファイナルで、4月5日の結成記念日を迎えているのだろうと思う。

 彼等の音楽が聴けなくなるなんてことはきっと無いだろう。

sold outの文字が嬉しい

おわりのおわりに(ただの飲み会の感想)

 今回終演後、鹿の仔に誘われて飲みに行くというイベントが発生した。X(ツイッター)の方にご飯に同行してくれる人を募集されていらっしゃる方がいたので、面識こそなかったが勇気を振り絞って参加させていただいた。

 ライブの後ということはもちろん、次のアルバムとツアー発表という怒涛の情報の後だったためかなりの白熱した状態だったなかで19:45頃に集まった。
集まるなり、ライブの感想を言い合う! 
というよりもまずは20時から解禁される諸々の情報をチェック。
三者三様にイヤホンをつけて、スマホをガン見。店内はほぼ満員で団体客も多くおり、騒がしい中の一角で黙々と各々がスマホを見ていたのはきっと異様だっただろう。
 10分ほどして、ようやく顔を見合わせる。
そこからは3人ともタガが外れたかのようにマシンガントーク。
次のツアーで何処へ行くか、どうやって行くか。何公演行くか。(行く事自体は全員決まっていた)
聴きたい曲だったり、好きなライブハウスは何処かなどなど。言葉が次々と出てきて決して会話が止むことが無かった。
 聞けば全員、先日の台風が騒がしている最中に関東から大阪に来た猛者たちだった。また一人とは帰りの飛行機まで一緒だったという衝撃的な事実も発覚。いつ何処に鹿の仔が潜んでいるのか分からない。きっと案外身近なところにも存在しているんだろうな。
 
 ライブにも劣らないような熱量で語っているとあっという間に時間は過ぎていった。またどこかのライブでお会いしたい。というか会うのだろうなと思う。
でも、いつも何処に存在しているのか、生態が謎に包まれている鹿の仔たちを探し出すのには骨が折れる気がする。
 
 最高の時間をどうもありがとうございました!

ナニユエくんをお借りして撮影。心なしかナニユエくんも嬉しそうに見える。


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