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「体験」がその後の学びも変えてゆく。北京で語学留学をして

「私を変えたあの時、あの場所」

~Vol.26 中華人民共和国/北京語言大学 ~

東京大学の先生方から海外経験談をお聞きし、紹介していく本コーナー。

今回は、遠藤 智子先生に、中国へ語学留学に行かれた当時のお話を伺いました。取り上げた場所については こちら から。

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大学生最後の夏休みを活用し、語学留学へ

――遠藤先生は短期・長期含め複数回留学に行かれていますが、今回は学部時代の語学留学についてお伺いします。まず、留学のきっかけを教えてください。

遠藤先生: 夏休みを利用して、第二外国語として教養学部で選択した中国語をより深く現地で勉強しようと思い、北京での5週間の短期語学留学に申し込みました。当時は大学4年生で、大学院への進学を予定していましたが、大学生活最後の夏休みを有効に使う選択肢の一つだと思い、大学の留学案内所のようなところにパンフレットをもらいに行きました。


街の光景に新鮮な驚き。慣れる過程を楽しんだ

――第二外国語がきっかけの語学留学だったのですね。留学先で印象的だった出来事を教えてください。

遠藤先生: 教室で勉強するときは日本での学生生活とそれほど大きな違いを感じませんでしたが、滞在していたキャンパスを一歩出て、周囲の街を歩いたり、バスに乗って出かけたりすると、人々のたたずまいや行動が違うことに新鮮な驚きを感じました。例えば、山のように大きな荷物を荷台にくくりつけた自転車が走っていたり、道端にたたずむおじさんたちがタンクトップをたくしあげてお腹が丸見えだったり、バスに乗ったら切符の売り子さんが切符を買うよう大きな声で呪文のように唱えていたり、道端で髪を切っていたり、子どものお尻が丸見えだったり…。何か一つの出来事というよりも、日常の風景やその中で聞こえてくる音や匂いが日本のそれとは違っていて、はじめは驚き、次第に慣れていく過程を楽しみました。

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▲北京語言大学のキャンパス内にある池の写真。「2018年に学会のため訪れた際に撮影したものですが、1999年に語学留学したときにもよくこのあたりを散歩しました」と遠藤先生。


――驚きと同時に、慣れていく過程を楽しまれたとのこと。異文化に触れたことで、ご自身にどんな影響がありましたか?

遠藤先生: 全般的に自分から働きかけないと物事が進まないことが多かったので、与えられるのを待つのではなく自分で取りに行くという姿勢が身につきました。滞在中に日本から旅行で友人が来たので一緒に北京動物園に行ったのですが、人垣をかきわけて入場券を奪い取るように購入した私に、友人が「強くなったね…」と言ったのを今も覚えています。ほしいものを手に入れるには行動しなければいけないということが、頭だけではなく、体で理解できたように思います。

学部4年生の短期語学留学の後は、修士2年生のときに米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校で言語学のサマースクール参加(6週間)、博士3年生で学位取得のため米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院留学(滞在3年間、学位取得まで合計6年間)をしましたが、語学留学という比較的負担の少ないものから始めたことで、自分にとって必要であれば日本以外の場所で勉強するという選択肢を自然に選べるようになりました。


海外生活は、多角的に考えるきっかけに

――海外体験全体を通じて、得られたと思うことがありましたら教えてください。

遠藤先生: なんでもありだな、という感覚を得られたことが一番大きいように思います。生まれ育った国や地域の習慣は、それが自分にとってのスタンダードであるため改めて意識することが難しいですが、海外に行って普段と違うやり方や行動を目にすると、今までの当たり前が必ずしも当たり前ではないということに気がつきます。郷に入れば郷に従えといいますが、日々の生活でどう行動するのかは、個人が主体的に選択しているように見えても実際は置かれた環境の慣習に強く束縛されています。実際は絶対にそうしなければいけないわけではなくてもです。慣習は慣習として従うべきことも多いですが、世界の他の場所では他のやり方もあるということを知っていると、悩みがあるときに解決法を多角的に考えられるようになると思います。


――帰国後も、海外の体験が活きていると思うことを教えてください。

遠藤先生: 語学留学の場合は、その外国語を知識としてだけではなく、体験として学べたことが、帰国後に勉強を続ける際の気持ちの違いにつながったと思います。専門的には記号接地問題と呼ばれますが、言葉の意味が世界に実際に存在するものと対応しているということは、機械翻訳にはなしえない、人間による言葉の理解に不可欠なものです。もちろん今はさまざまな教科書や動画などで疑似体験ができるようになっていますが、やはり実際の場所に立ってみたり、食べ物を注文して食べたり、洗濯や買い物等々、生活のさまざまな活動を現地の環境の中で経験することで、その言葉を使って生きる感覚を得られます。そのような感覚を得たうえで、帰国後に勉強を続けると、その言葉により親しみを持って学び続けることができるのではないでしょうか。

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▲留学先で知り合った友人たちと天安門広場で凧揚げをしたときの写真。「すぐそばで売っていた鳥の形の凧を買ったのですが、あまりうまくあがらなかったので、がんばって走りました。着ている服は天津に遊びに行った際に買ったもので、帰国後もよく着ていました」


「学生」だからできる交流がある

――体験的に学ぶことで、その後の学習にもいい影響を受けられるのですね。最後に、留学や国際交流に興味のある学生たちにメッセージをお願いします!

遠藤先生: 留学や国際交流体験は、学生のうちにするべきことのうち最も優先度が高いものの一つだと思います。なぜなら、学生という身分と若さや体力は、いずれ失われるものであるだけでなく、他国の学生と共通してもつもので、それだけで同じ場所にいて交流する理由になるからです。学生はもちろん勉強することが仕事ですが、専門的職業という意味ではまだ何者でもないその未確定さが、さまざまな世界に飛びこむことを可能にします。他にもやりたいことはいろいろあると思いますが、海外での勉強や国際交流はぜひどこかの段階で経験してほしいと思います。

私が中国を初めて訪れたのはもう20年以上前のことなので、そのときの体験のうちのいくつかは、今ではもう見られないものとなりました。北京はその後も何度か訪問していますが、行く度に、変わったところと変わらないところの両方を興味深く観察しています。長期間の滞在でなくても、一度行ったことのある場所というのは親しみを感じるものです。子ども時代に生まれ育つところを自分で選択することはできませんが、学生時代に訪れる場所は、自分で決めることができます。なんとなくでもいいので、学生のうちにいろいろな場所に行ってみたらよいと思います。

――ありがとうございました!



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