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626 ベッドフォード通り

東京の魔力などというものを認めたくはないが、たしかに、宮崎から戻ってきてからの2ヶ月、何かを書こうという気がまるで起こらなかった。それまで何かにつけてこのnoteに書き散らしてきたのが、東京に来たとたんにストンと、まるでそんな気が起きなくなった。実際的なものごとによる略奪は仕方なしに増えて、地下鉄の揺れが少しずつ、宿主に気取られないよう細心の注意を払いながら、最大限の優しさをもって、僕から一個の人間だという自覚を剝ぎ取っているような気がする。久々に会うと「ポエム書いてるらしいって心配してたけど、思ったより元気そうでよかった」と言われることもあって、最初は笑い飛ばしていたけれどだんだん笑い飛ばし方がわからなくなってきて、トーキョーの種がまた自分の中に根を生やしはじめているのがわかる。しかし僕はこれと戦わなければならないし、戦いたいとも思っている。言葉にすることでしか僕は現在地が分からないし、言葉にするとなんとなく本当にそんな気もしてくる。洗脳されやすいだけなのかもしれないけれど、僕はこれまで言葉に吐き出すことで自分をコントロールしてきたし、いまのところはそれで上手くいっている。だからこの営みは無理にでも続けていきたい。死ぬか、東京に消費されるまでは。それは同義かもしれないけれど。

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