趣味の文芸

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人は生活者としてどう文章と向き合っていくか。生活者は文章で社会とどうつながっていくか。「趣味の文芸」に込めた想い。

#趣味の文芸 と言うタグを作った。 これは、そこに込めた想いを語った記事だ。 このタグに込めた想いを一言で表すなら 「趣味の園芸のように」である。 ・短編集のタイトル#趣味の文芸は元々、自分の短編集をまとめていたマガジンに付けた名前だ。マガジンの説明には以下のような文章を添えた。 生きる。そのついでに書く。 庭に作った風景と季節の彩りが、わずかに世間との接点を持つような。 そんな趣味の園芸のように、文芸を趣味で嗜む。 社会と個人の中間にある、そんな空間。 これをワード

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きっと、いつか必ず私はあなたの前からいなくなる―――それも、なんとなく。

理由があって辞めたことは、やり始める理由があれば再開出来る。 だけど、なんとなく辞めたことは理由がないから再開が難しい。 「なんとなく」とは、なんて強い力なのだろう。 気付けばもう逃げ道がなくなっているような、 極めて重い「日常」という地層に圧し潰されるような、 無味無臭の毒がいつのまにか充満しているような。 意識すら出来ていないことに抗うのは不可能に近い。 私の名前はHowa(ほわ)と言う。 「Howaという名義で今は活動している」と言ったほうが正確かな。 今、T

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考える馬

私は馬。 でも馬じゃない。 飯塚さんは、銅像を作る人。 飯塚さんのアトリエには、いろんな銅像がある。 女の子、肩車をするお父さん、踊り子さん、犬。 飯塚さんが作る銅像にはみんな、命が芽生える。 もちろん私も、飯塚さんに作ってもらった馬の銅像。 飯塚さんの銅像にはみんな、仕事がある。 それは、ずっと立っていること。 私は、ある駅の前に置かれることになった。 ここにずっと立っている。それが私の仕事。 私が初めて駅に立ったとき、皆が拍手してくれた。 毎日たくさんの人が私を見

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みにくいアヒル/の子

『みにくいアヒルの子』というお話を知っていますか? みんなから「みにくい、みにくい」と言われたアヒルの子は、本当はキレイな白鳥だった、というお話です。 でも今からするお話は、そうではありません。 あるところに、アヒルの親子がおりました。 子供たちはかわいらしいヒヨコでした。 ですがお母さんはたいそうみにくいアヒルでした。 だから、子供たちは「みにくいアヒル の子」と呼ばれました。 みにくいアヒルの子であるグラハムはお母さんが大好きでした。 グラハムはヒヨコなのに、いつも

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いっしょに考えてみよう~やる気が出ないときのこと~

「な~んか今日はやる気が出ないなぁ」って思うことない? 「いやいや今日はやる気バッチリです」ってあなたは、やりたいことをやっておいで。 いってらっしゃい、またね。 「うんうん、今日はやる気が出ないんだよなぁ」ってあなたは多分、今はこれを読んだり聞いたりしていないでゴロンとするのがいいかもしれない。 ゆっくり休んでね。 「あ~、たしかにたまにやる気が出ない日があるなぁ」ってあなた、もし今ヒマだったら少しだけ話をしていかない? あなたがヒマになるまで私は待ってるから。 ――

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ネコのいるベンチ

私の散歩コースには、ネコのいるベンチがある。 あるとき。 新たな散歩コースを開拓しようと思い、いつもの公園の外に出た。 見知らぬ池と川。 見慣れぬ車道と林道。 その先に、森に囲まれた工場があった。 工場では、大きな音を出しながら火花を散らしていた。 そしてそれ以上に大きな音で、ラジオを流していた。 工場が出す音は、森の中に吸い込まれていく。 機械音と木々のざわめきが、不思議と調和していた。 そんな、人と森の音が交わる場所に、ネコのいるベンチはあった。 庭園の一角

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ボクのきもち、キミのきもち。

春です。 冬の毛から春の毛になったウサギは大好きなニンジンと、原っぱにピクニックに来ていました。 ウサギは丘の上からニンジンをころがしました。 「ニンジンさ~ん、まっておくれよ~。  よ~し、ボクもいっくぞ~」 ウサギも丘の上をゴロゴロところがりました。 ウサギもニンジンも、原っぱをころがったおかげで草だらけ。 「あははは、あはははは」 ニンジンと楽しくあそんでいたウサギの前に、女の子のウサギがやってきました(われらがウサギは男の子です)。 ウサギはその子を見たとた

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或ル夢ノ話。

飛行機で海の上を飛んでいると、埋め立てられた土地が見えてきた。 大きなものから小さなものまで、海の上に点在するその土地土地は、一つ一つが鮮やかな色彩を放っていた。 私は貴方に告げる。 「ここはピンクの砂を栽培して輸出してるんだって」 「へぇ、そうなんだ」 「うん、ここは―――ハワイだ」 私達は比較的大きな、繁華街らしき埋め立て地へ降り立った。 降り立った、とは言っても飛行機を着陸させた形跡はない。ただ足が、そのまま地面に着いたような感覚だった―――私達は飛行機に乗っていた

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春の手

フサヨさんは、おばあちゃんです。 フサヨさんは、おさんぽが大好きです。 でも病気をしてから、おさんぽできていません。 毎日、お家のベッドの上にいます。 「おばあちゃん、見て見て! お花!」 フサヨさんのまごのあこちゃんが、むらさき色の花をもってきました。 「これはハナニラよ、あこちゃん」 「バニラ?」 「ハ、ナ、ニ、ラ」 「ハニナラね!」 「ふふ。もう春なんだね」 フサヨさんはさいきん『あること』をよく考えます。 それは「あと何回、春をむかえられるんだろう」と

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あこちゃんとニンジン

あこちゃんはニンジンがきらいです。 ごはんのときニンジンがあると、のこします。 あこちゃんのお父さんもお母さんも「きらいならムリに食べなくていいからね」と言ってくれます。 あこちゃんのニンジンぎらいは、ほいくえんのみんなも知っています。だからあこちゃんがニンジンをのこしても、だれもなにも言いません。 ある日、ほいくえんのみんなでカレーづくりをしました。 おにく、じゃがいも、たまねぎ、ニンジン……そう、ニンジンです。 じゃがいもとニンジンは、ほいくえんのはたけでそだてたもの

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そこにいない私(宣伝と報告を添えて)

お墓参りに行ったときのこと。 墓石を洗うため、備え付けのバケツに水を注ごうと思い、水道を使っている人の後ろに並んだ。 水道を使っている人は、花瓶を洗っていた。 霊園には墓石を洗うための道具は一通り揃っており、墓石を磨く大きいブラシ、墓石に掘られた字の溝に溜まった苔を磨く歯ブラシ、そして花瓶を洗う用の長めのブラシもあった。 だがその人は花瓶を洗う用のブラシを使わず、ひたすらに水流で花瓶を洗っていた。 何度も何度も水を注いでは流しを繰り返し、花瓶にこびりついた苔を落とそうとし

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