★一夜のお姫様 むー(2年3組宮本武蔵)

白馬の王子様に憧れた。
いつか、白馬に乗った王子様が私を迎えに来てくれる。
そして、お城に行って王子様と愛を誓う。
これが私の夢だった……。

王子様は私を迎えに来た。
17の冬。
4つ上のあなたは突如として私の前に現れた。
あなたはとてもかっこよく、頼り甲斐もあって私が好きになるのもそう時間はかからなかった。

私とあなたの関係は少し歪だった。
あなたに恋した私は今ではあなたの彼女だった。
出会って数日。
思い切ってのダメ元での告白。
あの日私の初めての口づけを交わした。

付き合って一週間。週末。
あなたは私をお城に連れて行った。
あなたは私の手を取り、白馬のように白くて傷ひとつない自動車に乗せた。

お城の一部屋。
2人っきりの空間であなただけを1番近くで感じる。
温もりを、体温を。
声を荒げて、息を荒げて、体を荒げて。

一定のリズムに合わせて高い声が響く。
一定のリズムが崩れ、激しくテンポの早いリズムに変わる。
低い声も加わって、絡まって、まるでメロディーかのように思えた。

私たちは愛し合った。
幸せだった。
もう死んでもいいと思えた。
そう、思えるほどに幸せだった……のに……。
夢は叶ったはずだったのに。
嬉しいはずだったのに。

あなたは私を置いて行った。
あなたの温もりが微かに残ったベットで私は疼くまって雫をこぼした。

なんで涙は止まらないの…………。
あなたにとって所詮私は……。


一夜のお姫様

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