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本当に夢でよかった

先日夢を見た。

その日、私はいつものように仕事へ向かう彼を見送った。「行ってらっしゃい」「行ってきます」の会話を済ませ、彼の帰りを待った。
そして夕方。
帰ってきた彼はどこか様子がおかしかった。いつもの笑顔はないし、顔色も悪い。
どうしたのと聞くと、「俺、人を殺してしまった。」と俯いたまま口を開いた。ニュースでは彼の顔や名前が出ており、『見つけた場合はこちらまで電話してください』と報道されていた。
これからどうするの?と聞くと、「海外に逃げる」と私の目を真っ直ぐ見つめた。
お互いが今持っている全財産を持ち、パスポートを作り、空港に向かう。
検査を通り、あと少しで飛行機に乗れるというとき。
空港に警察が駆けつけた。
私たちに銃を向け、「荷物をその場に置いてこちらに来なさい」と語りかけてきた。
何とか彼だけは逃げてほしいと思った私は、自分のお金も荷物も彼に渡して「急いで逃げなさい」と彼を行かせた。
警察は彼に銃を向けた。
彼を庇った私は、撃たれてしまった。
彼は慌てて私に駆け寄り抱き抱えて、何度も名前を叫んだ。その時の彼の表情は、今でも忘れられない。
私は死んだあと空から彼のことを見ていた。
私に覆い被さって泣き叫ぶ彼。
力なく捕まり、パトカーに乗り込む彼。
私が死んでからの光景はとても苦しかった。
助けられなくてごめんねと涙が溢れた。


そんな夢を見た。
私を呼ぶ声で目が覚めると、「どうした?大丈夫?」と心配する彼の顔があった。彼の話によると、頭を抱えてうずくまっていたらしい。笑

夢でよかったと本気で思った。
痛いなんてもんじゃないくらい痛かったし、彼の私を呼ぶ表情が苦しかった。私に覆い被さる彼が痛く切なかった。

目が覚めてからしばらくは、彼の腕の中で動けなかった。「大丈夫?」と聞かれて夢のことを話すと、「刑事もんの見すぎだな」と笑われた。
こっちは本気で怖がってたのに!と思ったけれど、夢ならいいかとすぐに立ち直った。
ずっと頭を撫でてくれていたのですぐに回復して、その後は沢山遊びました。

これを書きとめようと思ったわけは、ついさっき「贅沢」という題名で書いたnoteを自分で読み返したからだ。
「贅沢」の後半には、『死に際は経験できない』みたいなことが書いてあり、あの夢は忘れたくないなと心から思ったのだ。


あんな顔見るくらいなら、貴方より後に死にたいな。

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