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神話世界の構図

古事記に基づいて世界を大きく分けると、三つの段になります。上から順に、

高天原(たかまがはら)
・葦原中国(あしはらのなかつくに)
・黄泉国(よみのくに)

です。それぞれ上中下と分かれ、

天津神の住む国
・国津神の住む国
・死者の国

となります。

葦原中国は元々、乱暴者であった素戔嗚(スサノオ)が追いやられ、後に彼の子孫たちが国として作った世界です。そして素戔嗚の兄弟の天照(アマテラス)の孫である邇邇芸(ニニギ)もまたやってきて(※天孫降臨)、笠沙(かささ)の岬で木花開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)と逢いました。

葦原は今、私たち人間が住む世界といわれます。高天原には今も神が住み、黄泉には死者がいるというのが神道の観念です。

葦原へは近々に帰郷すると思う旨、此処に記す故、何卒御検討直しを願う

小説咲夜姫/山口歌糸

又最後と申すには吾、元の国は葦原中国へ戻る折、不死山を経由せねば成らぬと知りて通る次第で在ります。

小説咲夜姫/山口歌糸

作品では、邇邇芸の化身として現れた仁木が手紙の中で「葦原へ帰る」と記しますが、後に咲代さんがそれを誤りであり、私らは黄泉へ帰るものだと明かします。手紙にある「不死山」とは富士山のこと。そうして富士の頂上から本当に帰りました。

「葦原は、もう過ぎております」
「そうなのか」
 咲代は力がもう入らないのか、まっすぐには伸びきらぬ指を、後ろへ向けた。微かに震えてもいた。
「葦原は今、人の住む国であります。私が帰るのは」
 そこで一度、口を噤み、今度は前を指差した。

小説咲夜姫/山口歌糸