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「はじまりの灯り」演奏者紹介・五人目の灯り|「湯川トーベン」(青をえらべば・ベース)

「はじまりの灯り」プロジェクト
https://note.com/utagoekikou/n/n135d73ff7a45

2008年初夏。
吉祥寺のいせや公園店で、今日はお祝いだと言ってトーベンさんが奢ってくれた。1stアルバムが発売されたことをとても喜んでくれたのだ。

CDのスペシャルサンクスには「湯川トーベン」ただ一人。

でも、CDデビューについて、録音やその他で何かをしてくれたってことでは無い。じゃあ、なんでトーベンさんだったのか?

それを今日は書こうかな。

2000年代初頭、今のように音楽を「出したければ出す」ということが難しかった時代、何をどうしたらいいのかも分からない僕は、ただただライブをしていた。デモテープすらも作らず「誰かがきっと僕を世に出してくれる」という、今思えば危うい願いだけで歌っていた。

そんな中、僕に声を掛けてくれた初めてのプロの音楽家がトーベンさんだったのだ。トーベンさんのイベントに呼んでもらえたことが自信になって、それからの僕はよく下北沢の街で歌うようになった。お客さんというお客さんが居なくても、そのことが支えになって続けることが出来た。

そうやって続けた結果が一つ、2008年にCDデビューという形で芽を出した。

スペシャルサンクスっていうのは書き始めるとキリがなくて、当時1stアルバムにその記載はやめようとしていた。でもやっぱりトーベンさんを入れたいと思ったのは、プロの音楽家として初めて僕を認めてくれたことへの感謝の気持ちに他ならない。

それから12年。12年も経ってしまった。あの時みたいにお祝いをするような出来事って、もうなかなか無いけど、またあんな風に乾杯できる日が来るといいな。

そして今回、ベースをお願いしたのは「青をえらべば」という曲が、2008年からこれまでの僕を綴ったような曲でもあるからだ。

CDデビューをした、あのキラキラした2008年。録音もプロモーションも、すべてを周りの大人にお膳立てしてもらった。「青をえらべば」に込められた概念は、その後の僕が様々な経験を得て知ったことでもある。青いあの頃から、一回りして、2020年の僕は再び青くさい。

だから今、この曲にベースを重ねて欲しいのは、トーベンさんだと、そう思った。

送られてきたテイクにはコードチェンジするところをあえてしていない箇所が一つあって、「青をえらべば」というこの曲っぽいなって、嬉しくなった。

実は5月にはこのベースのテイクはもらっていた。

ここまで公開を引っ張ったのは、チャリティーとはいえ音楽制作にクラウドファンディングというお金集めを用いたことを少し後悔していて、そんな気持ちの中でトーベンさんの名前を使いたくなかったっていうこともある。

こんな風に、僕は自分一人では、いつも心がグラグラで、自分が決めたことにも自信を持てない。いつも誰かの言葉や後押しで僕は動いている。それを自分が決めましたって言うのは簡単だけど、自分だけでその気持ちを強く持ち続けられるほど僕は強くは無いのだ。僕はこの頃、自分のことをちょっと理解できるようになった。

だから、2000年初頭の僕に、その後歩いていく為のとても大きな糧となる言葉や気をかけてくれたトーベンさんの存在は本当に大きいのだ。

そして、僕のオリジナル曲にトーベンさがベースを録音するのは、これが初めて。
いつかはって思っていたけれど、この曲にはトーベンさんしか浮かばなかったのだ。

このベーストラックには2020年の5月の青空が写っている。

トーベンさん、いつもありがとうございます。


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