窓越しの世界・総集編 2018年2月の世界
2/1【安堵】
雨は夕暮れとともに雪に変わった。
刻々と積もる雪をみていると、その事象に逆らうことのできない無力感が清々しい。
見守ることしかできない。それ以外の選択肢は無く、そのことに安堵する。
2/2【求め続ける限り】
昨日より良くなっているし、昨日より新しい。
そうとは限らなくてもいい。
求め続けるかぎり、何かは進む。
2/3【頑なな雪】
あんなに頑なだった雪。
みるみる溶けて流れていく。
あんなに頑なだった雪が。
2/4【頑張りすぎると】
頑張りすぎると、穴に落ちる。
頑張りすぎると、振り返った時、恥ずかしくなって消したくなる。
人生のリセットボタンは押せないから、
いつからか、頑張りすぎなくなった。
それでいいのかは、知らない。
2/5【静けさを見つけるために】
日が暮れる頃、集中力が枯渇する。
車に乗ると別のチャンネルが生き返り、小一時間のエネルギーが走り出す。
ロードノイズの低音もファミレスの雑踏も、自分の中の静けさを見つけられる。
2/6【夕焼けから夜まで】
冬の澄んだ夕焼け空。太陽が沈んだ後の方が、刻々と変わる美しさがある。
次第に飛行機の点滅がはっきりとしてくる。街の明かりもそれに続く。
最後に、この部屋の明るさが窓ガラスに反射して、夜が来る。
2/7【午前中を愛している】
久しぶりに飲酒をせずに夜を越えたせいか、起き抜けの筆は軽やかだった。
クラシック音楽を背に聞こえる雑談やフライパンの五徳に当たる音が、朝に調子をつけてくれるようで心地いい。
今日が動き始めている。やっぱり午前中を愛している。
2/8【変わらない匂い】
鯉がいなくなって、餌売り場もなくなった。鳩も、放し飼いの鶏も少なくなったそう。残念な気持ちと反芻するように、ノスタルジーの味わいもする。
やきそば後に残る仄かなラードの香り。
それがこの街の空気と混ざる匂いは、今も変わらない。
2/9【立ち返る】
アコースティックギターではガットギターの響きは生まれない。
僕からは、僕の響きしか生まれない。
上手くいかない時は、もう一度そのことに立ち返る。
2/10【同じでいい】
いつもと違うことをして失敗する朝。
思い返すと、そういうことは随分と減った。
食事も、着るものも、変化のない毎日。
それに支えられて、変化する毎日。
2/11【堂々巡り】
またか。と思う。
変化を続けていると、結局同じところへ出ることがある。
同じ花をつけても、年輪が増す木々のように。
そんな堂々巡りであるはず。
話は変わるが、母の誕生日だ。おめでとう。
2/12【過去と未来の共作】
アルバム録音初日は10年前の曲から始めた。
2曲目は12年前の曲。
今の僕には書けないけれど、今の僕が歌うべき曲たち。
過去と未来の共作。
2/13【テンポとリズム】
言葉にはリズムがある。テンポとは違う一つ一つに違う波。
それぞれに最適な乗り物を作る工程が一番難しくて、楽しい。
そんな時間を生み出す。そして、録音する。
2/14【知らない街】
夕方になって外に出た。いつもと違う道をてくてく。
暗くなってもまだ、住宅街を進んだ。
知らない街ではないけれど、知らない街だった。
2/15【餃子】
明るいうちに外へ出た。昨日の街をもう一度歩いてみる。
豪邸から警備員に誘導されて出てくる高級車、ランニングする人、犬の散歩や、タクシードライバーが憩う路地。
なぜか餃子が無性に食べたくなった。だから夕食は餃子だった。
2/16【楽しみは、保険】
楽しみたい。そう思って始めた事ばかりだ。
楽しみ以外のことがどんどん必要になって、今ではそれに支配されかかっている。
目的が曖昧になって、楽しみを見失う。それにも慣れて、なんとなしに楽しみからの距離がだんだん見えるようになった。
手を伸ばせはそこに楽しみがある。それだけで、少し安心できる。
楽しみは、保険とも言える。
2/17【戻れないけれど、覚えている】
心のままに体が躍動して、気持ちの向くままに走り、感情が素直に顔に現れる。
そんな一番簡単なことが、一番難しくなる。
まっすぐみていると、眩しくて、寂しくて、嬉しい。
もう戻れないけれど、覚えている。
2/18【トライアンドエラー】
トライアンドエラー。
エラーだとわかるから、またトライする。
どんどん自分を信じることが出来なくなっているけれど、信じたい。
信じたいって思う気持ちは、信じることができる。
2/19【不必要】
次から次へ積もる不必要。
必要を生み出すために、生み出される不必要。
気がつけば、不必要に埋もれている。
それをかき分けて、本当に必要なものにたどり着く頃には、日が暮れ夜が始まっている。
2/20【歩道橋をわたる時】
歩道橋を渡るとき見える、いつもとは違ういつもの景色。
もうスピートでくぐり抜けていく車を見下ろす心地は、なぜかいつも同じ。
歩道橋を渡った記憶、そのどれもが印象深い。
2/21【たねあかし】
路地を一本違えれば、知らない街が出現する。
歩きだから、ナビを振り切ってどんどん脇へ外れてみる。
不意によく知った通りへ出た時というのは、なんとも手品の種明かしを見た心地。
2/22【本場よ!】
セットアップには時間がかかる。
何事も、準備は本番よりも険しく緻密でなければならない。
本番よ!楽しむことであれ。
2/23【フリーズ】
塩を入れすぎた加湿器からもくもくと煙が上がる。
物事の整理が追いつかないまま、次が始まって、積み上がっている。
パソコンの画面が動かなくなる気持ちがよく分かる。
僕も、そろそろフリーズ間近。
2/24【バランスを保つドライブ】
とにかく車に乗ることだった。
景色は流れ、頭の中がほぐれてゆく。歌も気兼ねなく、渋滞も苦ではない。
もう、すっかり夜だけれど、バランスは保たれた。
2/25【僕のことではないけれど】
僕のことではないけれど。もしかして、人生の岐路なのかもしれない。
僕のことではないけれど、僕のことでもあるそれは、僕に託されているようだった。
僕は少し戸惑って、でも、なんだかワクワクした。
2/26【歯がゆい】
心が定まらない。決定を下すその瞬間まで、自分でもよく分からない。
もうどうしようもない場面まで来て、ようやく解決する。
選べるということは、選べないということよりも歯がゆかったりする。
2/27【海沿いのカフェ】
海沿いのカフェ。なんとなく一人で来た記憶が多い。
もしかしたら誰かといたのかもしれないけれど、僕は一人で海を見ていた気がする。
海を背にした女の子が、ここからは映画のワンシーンのようにしか見えない。
2/28【延期】
マフラーなしでもいいくらいの陽気だったけれど、マフラーをした。庭の蝋梅は散らないまま見頃を終えて、今はもう香りを放たない。
会館でインタビューを受けていると、電話がなった。
病院からだった。トトの肝臓の値が高いとのこと。
避妊の手術、とりあえず延期。
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