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窓越しの世界・総集編2018年10月の世界

10/1【嵐の後の祭】
嵐の去った参道には、人が溢れかえっている。

少子化という言葉が嘘のように、子供達で賑わう。
当時と何一つ変わっていない的屋の風情に包み込まれて、目を閉じてみる。

嗅覚と視覚。どちらかを選ばなければならないとしたら、僕は嗅覚をとるかもしれない。

そんなことが頭をよぎってすぐに、どちらも失いたくないと思った。

お参りをして、すべての感覚を持っていることに感謝した。

10/2【いつかに寄りかからない】
いつか、必要かもしれないもの。いつか、必要となる気がするもの。

そんな物を沢山処分した。

いつかに寄りかからない、そんな生き方の始まり。

10/3【成長できる余韻】
大きな音を出すと、細かいところまで浮き彫りになる。

生音では気がつかない自分の欠点が見える。

欠点が見えるということは、成長できる余韻があるということ。

それを見つけるのが趣味なのかもしれない。

10/4【クリームシチュー】
街の小さな図書館に集う人々を見ていると、この国は豊かだなと思う。

静けさの中で誰かがページをめくる度、紙質の違う音がして面白い。

ふと隣の席でめくられたページのクリームシチューが目に留まる。
外は暗くなり始め、小雨もぱらついてきた。

この雨でまた少し季節は動きそうだ。

帰り道のスーパーマーケットで、僕は生クリームとシャケを買い物カゴに入れた。

10/5【ちょっとした格差】
ちょっとだけ高級なスーパーマーケットへ行くと、身近な格差社会を体験できる。

平均的に100円くらい高い野菜や、100gあたり100円ほど高い肉。魚。
普通に買い物をしても、普段の感覚よりも1000円以上高くつく。

すれ違う人の身なりもそれなりに見えてくるけれど、ほとんどは気のせいだと思う。

横浜まで繋がった西武線が東横線のエリアへ入ると、急に周りの人々が垢抜けた風に
感じられるような、そんな錯覚に近い。

お目当ての富士宮やきそばは売り切れ。
止むを得ずの献立変更で、それなりの会計金額を見ると、
やっぱり普段のスーパーとは違う、ちょっとした格差を感じる。

10/6【離れて行けばいい】
客席で語らう人々。
そんな風景のあるguzuriを見ていると、やっぱりいいなと思う。

そう思う傍で、もう僕はここにいるべきでは無いとも思う。

レコーディングを終えた曲のように、僕の手から離れて行けばいい。

10/7【みんなの歌】
長い間育てて来たものの意味は、自分が一番よく知っているけれど、
実感と喜びを運んでくれるのは、いつも僕以外の人々だった。

僕のための歌であればあるほど、みんなの歌になる。

今は、そんな風にワガママに思える。

10/8【未熟だけど、良い】
見えない電波で 繋げられてる

そう歌い出す、10代の終わりころに作った曲のメロディーがふと聞こえてくる。

このごろ昔作った曲が気になって、歌い直してみると、これがなかなか面白い。

言葉もメロディーも未熟なところばかりだけれど、それがまた表現の面白いところ。

未熟だけど、いい。

guzuriもそう。未熟だけど、いい。

10/9【トトの温もりと】
叩けば埃が出るくらい汚れて帰ってきたトト。

一緒に湯船に浸かると、気持ち良さそう。
お風呂上がりはなぜか甘えん坊のトト。
膝の上に飛び乗って来てひたすら毛づくろい。

今日はもうギターを弾く気になれないから、トトの温もりと、カボスの水割り。

10/10【普通の幸せ】
紅葉の始まる前の公園は、先週の台風のつめ跡が痛々しい。

これから色づいていくはずの紅葉を指差したりしながら歩いていると、池のほとりのベンチから軽やかなウクレレの音色が聞こえてきた。

ちょうど5時のチャイムが鳴って美しいそれをかけき消すと、ウクレレのおじさんも家路に着いてしまった。

夕焼けにカメラを向ける青年や、同じ夕暮れを見つめる人たち。
やけに高く見えた雲に、なんだかごくごく普通の幸せを感じていた。

10/11【芽吹きの朝】
テラスに並ぶ小さな植物達。小さな苗から育つのを見てきた。

植物を育てることは、生活を育てることに似ている。

コツコツ積み重ねていくこと。

その豊かさに’触れたとき、僕の中にも芽吹きを見た気がする。
どんな花が咲くかも、そしてどんな実をつけるのかもわからないけれど、確かに何かが芽吹いたのを感じる朝。

10/12【豊かさの象徴】
大学の裏口から校内に入ると、仄かに湿った森の香りがした。

芸術は世界を美しく切り取るばかりではないけれど、人間が持つ豊かさの象徴のような気がした。


10/13【その瞳が変わる瞬間】
後輩たちに何が伝わったのかは、今はまだ僕も、彼らにだって分からないはず。

ただ、その瞳が変わる瞬間を見た時、僕も同じように、変わった気がしたんだ。

10/14【故郷の土】
枯葉が土に馴染むまで。

風に舞い、雨に打たれ、霜が降り、雪に覆われて、ゆっくりと静かに。
そう、じっくりと静かに、人知れず。
そして、確かに。

人も同じように、時間をかけて、ゆっくりとその土地の土になっていく。

ふるさとの街の人々に、そんな時の移ろいを感じた。

10/15【なくなっていく】
冷たい雨が降り始めているけれど、膝の上で眠るトトが暖かい。

富士宮、入間、そして都内の自宅へ向かう道中。
トトが泥のように眠る姿を見て、思ったよりも疲れていない自分に気がつく。

余計な気持ちや、持ち物が、少しずつ、なくなっていく。

10/16【時に、残酷】
捨てられないものがある。
何年も着ていない服や帽子、貰ったCD。

捨ててしまった捨ててはいけなかった筈の物の事を考えると、
なんでこんなものが捨てられないのかと思ってしまう。

正直になるということは、時に残酷だ。
でも、本当に必要なものだけに囲まれていればいい。

10/17【世界と関わるということは】
悪い子のトトも、いい子のトトも、僕次第。

トトはトトでしかない。

いいことも、わるいことも、解釈次第。

世界と関わるということは、そういうこと。

10/18【損という感情】
少しずつ進むguzuriの片付け。

溜め込んだ膨大な物、もの、モノ。きっと、全部なくなってしまっても僕は困らない。

ただ、損をするだけだ。

損という感情を捨てることができたら、この世をもっと楽しめるだろう。

10/19【帰ろう】
分厚い雲のせいで薄暗く光の移ろいも無い、時間の感覚がしどろもどろな午後。
珈琲のお代わりを何度かしている間に、いつのまにか夜が迫っている。

窓ガラスの向こうに傘がちらほら。雨が降り始めたのを見ると僕は、何故かそろそろ帰らないとという気持ちになる。

雨が酷くなる前に、帰ろう。夜が来る前に、帰ろう。

10/20【プロセス】
見て見ぬふりをしてきた。

それは、僕自身にだ。
それが一番悔やまれる。

いつの間にか無くしたものが、気がついた時には、随分と大きな穴になっている。
もう、何を無くしたのかも分からないくらいに。

その穴は、決して埋まることは無いだろうから、
ちゃんと蓋をして、次に進もう。

その穴は必要なプロセスだったに違いないのだから。

10/21【予感】
テーブルに斑らな木陰が揺れるのを見ている。

かつての僕は暇を持て余して、何かを探していた。
珈琲店のドアを開け、一杯の珈琲と小説の中に、その何かを探していた。

小説の一節に何かを見つけてはノートに書き留めて、私的なフィルターを満たしていた。
そこに熱い気持ちを注げば、自然と曲は生まれて、それは止め処なかった。

神保町や御茶ノ水、御徒町あたりの古い珈琲店は、古い小説の舞台のようで、
そんな空間でタバコを燻らしている午後は、完璧だった。

頭の中はメロディーで溢れていた。

もう少しで、また似たような、そんな時代が訪れるような、期待のような、予感。


10/22【好き、嫌い】
珈琲が苦手な人に、珈琲を出しても喜ばれない。
きっと最高に美味しい珈琲だからと思っても、喜ばれないだろう。

好き、嫌いで、ほとんど片付いてしまう世の中で、僕は自分の好きを売り物にしている。

でもどこかで、本当に美味しい珈琲だったら、って思うから、
自分の歌に磨きをかけ続けようと思う。

10/23【声のフォーム】
一昨日の歌があまり良くなかったから、再考察。軌道修正をする。

ノートに取ってあるメモに、新たに加わることは、ずいぶん前の焼き直しだったりもする。

バッターのフォームが崩れるのと同じように、声のフォームもあるのだ。
フォームが決まっても、また必ず崩れる。
修正して、修正して、より良いものにしていく。

10/24【歌】
歌は、誰にでも歌えるから、一聴で別物にならなければならない。

歌は、誰の声も特別だから、一聴でもっと特別でなければならない。

歌は、それだけで素晴らしいから、決して特別でなくていい。

夜はもう何もする気になれない。

10/25【身につけてしまえば】
目が覚めて、ゆっくり湯船に浸かった。

まだほんのり温かい体。ギターを手にとって歌を歌う。

フォームに身を委ねて、自由に。

人生にもフォームが必要で、それはきっと身につけてしまえば、自由だ。

10/26【かさぶたのような記憶】
どうやら記憶というのは、無くなるものらしい。
かさぶたのようにペリッとはがれて、もう僕の体の中のどこにもない。

流した血は、確かに僕のものだったけれど、新しくできた皮膚に押されて、
役目を終えると、ただのゴミになった。

あの日もきっと、旧山手通りから山手通りへ、そして駒場東大方面へ左折したはずなのだけれど、思い出せない。

10/27【足りない】
遠くの空に季節外れの花火が上がっている。
10秒くらい遅れて来る爆発音に、ここからの距離を想像する。
クライマックスの打ち上げが楽しみな、なかなかの規模だが、さっき予約したばかりのスタジオの時間が迫っている。

時計を見ると、いい時間。
色とりどりの球体に後ろ髪を引かれながらも、仕方なく出かけた。

18時から延長に次ぐ延長で、気がつけば5時間もスタジオにこもりっぱなし。

どうしてもできないことを、どうにかできるまで繰り返す。
藁にもすがる思いで低音を追いかけてみると、メロディーが見えた。

僕が想像している僕になるには、今の僕では足りない。

10/28【応えること】
夕焼けに染まり始めた空に身を委ねていた。
声が空に吸い込まれていくのが気持ちよくで、ついさっき終えたバンドの演奏でも、
こんな風に歌えたらよかったのにと思った。

演奏をしている時、僕は最近、僕の歌を聴きに来た人たちのことを気にしないようにしている。

気にしないことが、歌を聴きに来た人に応えることだと思っているし、何よりも歌に応えることだと思っている。

それが気持ちよくできていれば、ここから見える人たちのことを、歌と同じように大切に思えるだろう。

10/29【ご飯がごちそう】
夕焼けが始まると期待通り、くっきりと浮かび上がる富士山。
綺麗な夕焼けだよと、トトに話しかけてみる。
なんのことだかわからないみたいだけれど、僕は伝えたことで満足していた。

お腹が空いて、充分に水に浸した米を土鍋で炊く。

この頃は、ピカピカ光る炊きたてのご飯がご馳走。

10/30【こんな夜があと何度】
夜になると冷たい風が吹いて、昼間の小春日和を吹き飛ばした。
日が落ちるのが随分と早くなって、1日の終わりもあっとう間にやって来る。

明日は今年一番の冷え込みなのだと、ニュースのアナウンサーが伝えている。
家に帰りたいなと思ったけれど、今夜は入間にいることにした。

暖簾が風にたなびく居酒屋のカウンターで日本シリーズを見る。
こんな夜があと何度あるだろうか。

10/31【着々と整う】
目が冴えて眠れない夜でも、伸びをした時のように気持ちいいことがある。

そんな時は例えば、模様替えをしたり、新しい何かにワクワクしている時が多い。

今夜のそれは、guzuriのエンジニアルームの模様替えに着手したからに違いなく、
それと同時に自宅の書斎の構築も進んでいるから尚更にだ。

新しい環境が着々と整う。

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