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窓越しの世界・総集編 2017年8月の世界

8/1【人生という名のバス】
行く先を告げないで走り出したそれぞれのバス。

いつのまにか、行く先を求め、行く先を知りたがり、行き先を恐れた。

行き先のプレートは、何度もスクロールされただろう。どこかで乗り換えもあっただろう。

あの日私が降りたバスは、今もどこかの停留所に止まったままなのだろうか。
 
そしてそのバスとまた、巡り合う日が来たりするのだろうか。

8/2【一日は長い】
寒さを感じる朝。TO DOを書き出すと、一日がかりになりそう。

トレーラー販売のこと、guzuri と THE SOUTHの事務作業。生豆のピッキング。PUFFINの決算処理や、社の定款目的の変更。歌のこと、ライブのリハーサル。

吸気性の発声に、喉の回復機能を実感。

アマゾンプライムで映画見る。一日は長い。
 
8/3【歌に捧げよう】
今日も早朝は肌寒い。午後にかけて上昇した気温も大したことはなく、今年の八月は拍子抜けした陽気で始まっている。
来週の渡米に向けてアメリカと何度もやり取りをしている。本来ならば今頃は帰国予定の時期だったがパスポートの期限切れというミスで、スケジュールは一週間ずれ込んだ。災い転じてか、この期間にたくさんのことが片付いている。主にデスクワークなのだが。

なによりも嬉しいことは、これまで以上に声をコントロールできるようになっているということ。

司法書士にも税理士にも、任せることは任せて、私は歌に捧げよう。

8/4【導き】
たくさんの人に、導かれて来た。

今も導かれている。

私は、誰かを導いていたりするのだろうか。

8/5【祭りのあと】
祭りのあとだった。

国道16号線から川を渡ったあたりまで、真っ暗な夜道を行く人や、人。浴衣姿の人や子供ら。

祭りのあとの、その独特さ。

8/6【ヒーローでいっぱい】
狭い路地裏はヒーローでいっぱい。

このメロディーとフレーズだけで想起できる景色に魅せられ、かつての僕は立ち上がった。

狭いステージはヒーローでいっぱいだった。

8/7【カリフォルニアの夏】
向こう岸に着くと、湿ったまとわりつく熱気も、重たい心もカラッと晴れ渡っていた。
 
真夏の東京は遥か遠く、夜の真ん中。

ここは、蝉の音の無いカリフォルニアの夏。
 
8/8【霧がかった記憶】
夜を飛び越えてまだまだ太陽は高い。

時間の経過よりも激しく変わる風景に眠気の襲う頭がついてゆかない。

夢を見ているような、薄い霧がかった記憶だけが積もって行く。
 
8/9【憧れと好奇心】
ビバリーヒルズを抜ける頃、始まったばかりだと思っていた夕闇は終わろうとしている。タクシーを降りると、その路地裏は搬入口だった。

すかっり暗くなり、演奏は続く。

楽屋からステージに降りる階段。ステージを終えて搬出に忙しいミュージシャン。青白く光るネオン。

コロナビールとハンバーガー越しに眺めたステージが、かつての憧れと好奇心をくすぐるので、逆らわないように身を任せてみる。


8/10【軽やかな空気】
偏頭痛持ちの彼は、ロスに来てそれがなくなったという。

東京は雨が降っている。予想していた熱気も重たい空気も半分くらい。蝉の音ばかりはやっぱり激しく、重たい心はやっぱり重くかった。

気候は心と体を変えることができるらしい。あの空気が恋しい。

あの軽やかな空気が。

8/11【未来を創るものとは】
カリフォルニアの爽やかなものとはまた違う、潤いをまとった程よい陽気。日本らしくない過ごしやすい夏の日。
 
久しぶりに手に取るギターと響く歌声。豆を焼き、珈琲を淹れる日々。

毎日が少しずつ、未来を創って行く。

8/12【信じること】
流れ星は瞬く間に行った。

信じることを忘れた僕は、それでいて前よりも強く信じている。そんな気もする。

8/13【割れたガラス】
ガラスが割れる瞬間を見た。取り戻すことのできない時間が、私に突き刺さる。

どうしようもない無力感。忘れることでしか、その気持ちと離れることができないような、途方もない諦め。

生きていると、同じような気持ちになることが何度もあった。

それは、年を追うごとに頻繁になっている。そのことについて考えると、ガラスの割れる瞬間が過ぎて行く時間そのものに思えてくる。

悲しみは喜びの中。喜びは悲しみの源。

時は、割れたガラスのように無情で、触れると怪我をすることもある。
 
8/14【雨の中の灯】
雨が強くなって、カウンター席まで水しぶきが飛んできている。

先日までの選挙事務所はもぬけの殻で、それを覗き込む私のシルエットが雨の向こうの窓ガラスに動いているのが見えた。
 
期待通りの料理に、取り留めのない話が救われている。

明日の天気や、家族のこと。

行く当てのない、雨の中の灯。

8/15【真っ赤な雨】
真っ赤なレーダーの中にいた。階段室の踊り場で、缶ビールを傾けながら雨宿りをしてる。

予報ではもう少しで雨が止むのだ。

食材を買い込んだ手提げ袋の中から、2本目を取り出す。

まだ雨は止まない。真っ赤な雨の中。

8/16【そんな話】
霧雨がネオンに浮かび上がるのが雪に見えなくもなく、そのせいか、なにか思い出すがままに話をしていた。 

知る必要は無いし、きっと知ろうとも思わない。そんな話だった。
 
心が少し晴れて、でも、少し曇るような。そんな話だった。
 
8/17【夏の夜】
小松菜を刻み、豆板醤とバルサミコ酢で炒めたひき肉と和える。沸いたお湯にビーフンを入れ3分。水切りをしたそれに、小松菜とひき肉をたっぷり。改めて酢をかけ、パクチーをどっさりと添えた。

酢はすっぱくて、素晴らしい。

久しぶりの夜。ゆっくりと流れる夏の夜。

8/18【決めたのは私】
決まったコンビニで、決まった飲み物を買う。

決まった道で、決まった場所に帰り、決まったところで眠る。

決めたのは私。

8/19【富士見湖】
大雨が降って、公園に小さな池ができた。

富士見公園のそれだから、僕は富士見湖と言っている。

11年目のそれが写す公園の色は、いつの夏も同じで、同じように僕に優しい。

8/20【知らないコード】
知らないコードを弾くとき。

ぎこちなく開く扉を押し続けるような。そんな感じ。

少しづつ扉は開き、向こう側が見えてくる。

8/21【朝の光】
朝の珈琲時間。

聞こえるクラシックピアノの二分の一小節分だけが聞き覚えのあるメロディー。

テーブル越しの床に映る朝の光が、午後に向かっている。

8/22【刀削麺を求めて】
駅まで歩いた。駅からまた歩いて、それから隣町までバスに乗った。

隣町からはまた歩いて、最後はタクシーに乗った。
 
行き先を告げてから、やっぱり歩けばよかった、そう思った。

8/23【私が私に】
マイクに向かうのは久しぶりだった。

でも、マイクに向かうイメージはずっと持ち続けていた。

声が波形になってプレイバックされる時、私が私に委ねられるように、ただそれだけの為に。

8/24【しらんぷり】
見ないふりは、できる。

聞こえないふりも、できる。

見えていて、聞こえていることが、たくさんありすぎる。

だから知らんぷりでいい。

8/25【西武線】
夜の西武線に揺られる。真っ黒な窓ガラスに昔の私を見ている。

扉が開いて、階段をかけあがる。駐輪所の蛍光灯から暗い夜道へ出る時、もう出会うはずのない気持ちに出会えた。

そんな気がした。
 
8/26【早起きができそう】
生活の音が聞こえた。

あかりが一つずつ消えて、明日に向かうための休息が始まる。

早起きができそう。

8/27【ずっと後に】
私の人生は、いつの間にか幾つもの物語で構成されている。

進行形の物語もある。

物語の変わり目は、後になってから分かる。

ずっと後になってから。 
 
8/28【ちゃんと終われる】
24時間テレビと共に夏休みが終わる。

終わらない宿題や、最終章だけ読んだだけの読書感想文。

始まりというのには、身を任せていればいい。

ちゃんと終われる。

そんな人になりたい。
 
8/29【無関係な空】
見えない空でミサイルが飛んだ。

早朝のガソリンスタンドでサンドイッチを買ってから高速道路に乗った。遠くに見えていた雲が近づき、御殿場あたりで激しい霧の中に入った。

私には無関係な空が、そうではなくなっていく。

8/30【わたしそのもの】
眺めのいい部屋からは、真っ黒な雲がこちらへ向かって来るのが見えた。

車を走らせてどんどん近づいていく。真っ黒な雲は私を避けるように逸れて行き、準備の整った心だけが、ぽかんとするようだった。
 
少し前とは違う道を通るようになった。迂回や細い道を通るルートをいくようになっている。
 
回りくどい。私そのもの。

8/31【空腹との関係】
空腹のまま眠ると、明日がいい日になる気がする。

空腹が心地よくなると、穏やかでいられる気がする。

空腹といい関係になりたい。

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