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窓越しの世界・総集編 2017年12月の世界

12/1【どちら側も同じ】
長い影が伸びる青梅街道。反対車線は朝の通勤ラッシュが始まっている。

もうしばらく行けば地方都市へ向かうこちら側の車線でも渋滞が始まる。

朝陽も西日と同じくらいに眩しい。そしてほんの少しの時間だけ、まっすぐ目に刺さる。

どちらに行っても同じ。

12/2【夜光虫】
コンビニが消え、コンビニが生まれる。

コンビニはいつまで増え続けるのか。

コンビニを過ぎても、またコンビニが現れる。

今夜も夜光虫のように吸い込まれていく。

12/3【落ち葉色の宝石】
焙煎室の天井が焙煎機の鏡面で転がされる。

次第に煙が上がり香ばしさが街に広がっていく。

落ち葉色に焼き上げた宝石。

12/4【2年くらい】
2年くらい経って、やっと素直に話せることがある。

2年くらい経って、やっと形になることがある。

2年くらい経つと、すこし前に進んでいることに気がつく。

12/5【11年目の冬】
録音に集う音楽家たち。

guzuriを育んでくれたのは彼らだ。同じように私のことも。

感謝している。

11年目の冬が始まっている。

12/6【えいよう】
昼間の装いにコートを重ねて出かける。

二つ隣町までの電車は帰宅ラッシュ。

帰るときは空いているね。

栄養をとって冬を蓄える。

12/7【ただ生きるということが】
道を横断する。

たったそれだけのことが、あの人にとっては簡単ではない。

胸の底から内臓が押し上げられる心地がして、苦しかった。

僕は同情していた。

そして、ただ生きるということがとても美しく見えた。

12/8【トトはかすがい】
トトを囲んだ輪。

僕たちの時間は随分と離れていたけれど、すっと繋がった。

トトはかすがい。

12/9【たどり着く旋律】
リズムの波にメロディーを乗せてみる。

音符が階段を上がったり下がったり。

何度も繰り返してたどり着く旋律。

12/10【初対面の街】
強い風とサンセット。口の中でざらつく砂。

全てのシルエットが美しい逆光。沖を目指すウインドサーフィンのスピードや、小さな映画館。

初対面の街は、下校時刻の後の安らぎを湛えていた。


12/11【許していけばいい】
幸せなリビングに招かれる。

たった一つ、一心不乱に生きていくことの安らぎ。

肩を寄せ会い、時が進む。

たくさん、たくさん許していけばいい。

12/12【落葉あとのシルエット】
落葉した木々のシルエットが美しい冬の夕暮れ。

いつだか、この景色が好きだと言っていた母。

この季節になると思い出す。

12/13【再会】
どんなに時間が経っても、何事もなかったかのように時が埋まることがある。

何もかもあの日の続きから動き始める。

そんな時間の流れもある。

12/14【メロディーが生まれるまで】
薄暗いテーブルランプが夜の闇を際立たせて、ストーブの香りと共に冬の夜を演出している。

崩しては積み直すメロディーが、まだ今はちぐはぐしているけれど、

感触はしっかりとしているから、多分もうすぐ、輪郭が見えてくる。

12/15【献立】
何も決まっていないままスーパーマーケットをウロウロしている。

目移りしながら、少しずつ決めていくのは、なんだか僕の人生そのものだ。

今日は、鶏肉の甘辛煮が出来上がった。

そろそろ、献立を作ろうと、そう思っている。

12/16【世界を動かしているもの】
満たされない衝動が世界を動かしている。

空腹、物欲、支配欲、様々な欲。

満たされても、また膨らんだり、減りもする。

12/17【録音物は嘘をつかない】
1日の最後にたどり着く音楽の時間。マイクをセッティングして歌う。

まだ、違う。

録音物は嘘をつかない。
 
 
12/18【信じている】
弾き語りは、ざっと7つのことを同時に行なっている。

発声に4つの意識(筋肉はもっと)。ギターの右手左手。最後にイメージ。

一歩ずつ、理想の響きを手繰り寄せる。

今は僕にしかわからない違いだけれど、完成すれば誰もが頷くと、そう信じている。
 
12/19【さよならアルマカン】
終わるということ。

区切りをつけるということ。

必要なことだと思った。

12/20【世界そのもの】
夕日と反対側の空が美しすぎる茜色。
 
西の空は暗く沈んでいるのに、東の空は潤んで輝いていた。

この世界そのものだった。

12/21【減らす】
減らしていきたい。

減らす必要がある。

減らせるはずだ。

12/22【正しい気がする】
一つのことに集中したい。

それが今は正し気がする。

12/23【昔からそうだ】
昔からそうだ。

いいことがあっても、素直に喜べない。

喜んでしまったら、それ以上がない気がして。

12/24【もういくつ寝ると】
よく冷えこんだ朝と曇り空。

湿った土に明け方の雨を想像したけれど、霜が溶けたものらしかった。夕方からの雨予報はキラキラした光の差す夕暮れに変わって清々しい。
 
来客の顔ぶれにも年末を感じるクリスマスイブ。

もういくつ寝ると、お正月。

12/25【腰痛は突然に】
予期せぬ激痛。

いいことも、わるいことも、突然起きる。

腰痛は突然やってくる。

12/26【愛おしい街】
西富士道路を抜けると、午後の光に照らされた街が輝いていた。

富士の裾野の斜面から、すり鉢状に広がった故郷。

いつもとは違って見えて、

愛おしい。そう思った。

12/27【あり続けること】
師走のうどん屋。変わらない味と人がそこにある。

知る人ぞ知る存在から10年。繁盛店になっていく様を少しずつ見てきた。

あの頃と、何も変わっていない。

ただ、ずっとそこにあり続けていた。

12/28【菊正宗のCMじゃないけれど】
午後も深くなると、その美術館は山の斜面で影になっていた。

暮れの独特の空気が始まっている。

いい仕事を見ると、いい仕事がしたくなる。

うまいものを食べると、うまい酒が飲みたくなる。

菊正宗のCMじゃないけれど、そういうことだ。

12/29【心豊かな出会い】
落ち葉を踏む音が暖かい夕暮れの散歩道。

こんなにも落葉樹だらけの公園だったのだと、梢から抜ける夕焼けの光線を浴びながら思う。

知っていたけれど、気づけないこと。

心豊かな出会い。

12/30【沈黙が育むもの】
言葉のない空間に浮かぶ心地よいもの。

沈黙は時を育む。
 
12/31【来年は新しい】
実家で年を越すのは10年ぶり。

来年は新しい。

帰ろうと思ったのは、そんな風に思えたから。



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