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窓越しの世界・総集編 2017年9月の世界

9/1【愛おしい音】
蝉の音もマイクに乗るけれど気にしないことにした。

日に日に遠くなるこの夏の記憶が閉じ込められる気がしたから、逆に愛おしくなる。

9/2【心に触れる感触】
光が美しいという感情が自然に湧き上がる朝。

季節が動くのを感じる朝が好きだ。

肌に触れる始まりと終わりを纏う空気が、心に触れる感触で心地いい。

9/3【パラレルワールド】
子猫の後を追った。

核実験が隣国で行われようとも、平和な珈琲店の午後が流れていた。

夜のカウンター席で日本酒と本を傾けながら、パラレルワールドを感じていた。

9/4【止むを得ない喜び】
買いものカゴには子猫用のキャットフード。

室外機の隙間から覗く小さな眼差しに見つめられてしまった、そんな後の心では仕方がない。

止むを得ない喜びと言える。

 
9/5【昔ばなし】
よく知っているはずの景色は、もうほとんど知らない風景になっていた。

アーケードのペンキが塗り替えられた日のこと、シアターのそばにあった健康食品の店の佇まいも、昔ばなし。

そう、昔ばなし。

9/6【かつての喫煙者】
霧雨の街。軒先の席で雨雲レーダーに映らない雨を眺めた。しばらくして雨は上がり、珈琲とタバコの匂いが染み込んだ店に流れた。

小一時間の珈琲タイム。

かつての喫煙者は、いよいよ本当に煙草が嫌いなんだな。そう思った。
 
9/7【穏やかな始まり】
霧雨の街は続く。タクシーより先に現れた路線バスに飛び乗り、駅まで。

今朝からの頭痛は少しの微熱とともに去っていた。体に優しい食べ物と少しの日本酒をいただいて、今度はタクシーを捕まえる。

穏やかに執着から離れることを始めている。穏やかに始まっている。

9/8【もしかして】
いつもの窓から見えている景色を歩いてみる。こんなに近くても、初めて歩いている事が新鮮だった。

もしかして、僕にも君にも、そういう場所がまだまだある?

9/9【いとなみ】
この世界の片隅で、何にせよ生きている。

いとなむために稼ぐのか、稼ぐためにいとなむのか。

ほんとうは、どちらでもないと思う。

9/10【ときめきをくれる音】
ギターに合わせて、ピアノの調律も444Hzにする。

日々、音楽と向き合う時間を待ち望んでいる。

その音は、ときめきをくれる。

9/11【酒を辞めたい】
酒を辞めたい。そう思う朝は今年何度目だろうか。

ほんとうは、適量を超えたあたりで適量だと判断できることが望ましいが、とても難しい。

半日以上は体が未完全で、思考能力も乏しい。回復と同時に夜が更けていく。

9/12【忘れたいこと】
忘れたいことが沢山ある。

忘れたいことを忘れることは、なんて手間のかかることなのだろうか。

覚えていたかったことは、なんとなく忘れていくのに。

9/13【白波をたてる海】
窓ガラスの向こうに、すぐそこに海があった。西日になりかけている日差しが白波を印象づけている。

その刹那で、私はいくつもの時代を感じた。

それは駿河湾のフェリー乗り場や、富士宮青果市場の事務室、不動産販売時代のデスクだったりしたはず。

目の前でハンコをつく事務員と女性職員のちょっとしたやりとりの間、白波をたてる海を見ていた。

9/14【子猫の背中】
公園を見つめる背中は日に日に成長している。

こちらの気配に気がついて、少しの間見つめ合う。

相変わらず縮まらない距離だけれど、そのくらいが心地よいのかもしれない。

9/15【秋と夏のあとさき】
芝生に寝そべって見上げた空。季節を3つまたいだ空。

蝉の声が耳をかすめていくけれど、たまに通り過ぎる西武鉄道の走る音の方が印象的で、
稲荷山公園の夏はもう息絶え絶えだった。

耳をすませば、どんぐりの心地よく地面を叩く音が聞こえてきそうな、秋と夏のあとさき。

9/16【かごの中】
台風の影響を受けて風を帯びている雨雲。降りそうで降らない灰色の空のまま夕暮れ時を迎えた。

台風はまだ九州沖を北上中。暗くなって雨が降り出した。

ドラッグストアの買い物かごには子猫用のキャットフード。

9/17【出発までの時間】
コードを追いかけて、数時間。

たどり着く場所は、目的地ではなく出発点。

出発をするまでの時間を、惜しみなく楽しみたい。

9/18【十年後に】
台風一過のまっすぐな光が、じりじりと大気を焼いている。

しんとした炎天下は、妙に映画っぽくて、どこか記憶を覗き込むような感覚。

あの時、君はどんな気持ちでいたのだろうか。

十年後に聞いてみよう。

9/19【記憶が邪魔をする】
そのエスカレーターを降りると、活気のあるスーパーマーケットがある。

外に出ると、スロープがあり、歩道とバス通りの向こうにパルコがある。
 
ジョーマスターの売り場が移ったこと。商店街の2Fにある老舗のイタリアンレストランがなくなったことも、知りたいことではない。

記憶が邪魔をして、新しい思い出が薄れてしまいそう。

 
9/20【今がある】
かれこれ数時間。だだっ広いホームセンターのフロアを彷徨う。

無数にある工具や道具、材料を組み合わせる心地は、言葉を組み立てるそれに似ている。

コツコツ、コツコツ。そうるすしか術はない。

気持ち良い諦めの先に今がある。

9/21【なだらかに】
品川駅で終電車を待つ間に日付が変わっていた。

長い一日はまだ続いている。

今日と明日の境目は確かにあるのだけれど、なだらかに繋がって、

明日の朝には初の台湾。

9/22【体力勝負】
道にせり出したテーブルに腰掛ける。得体の知れない魚の揚げ物を一口。異国の味だ。体がそう反応する。

道すがら香る様々と、高い湿度。気温は30℃くらい。
 
灼熱と室内の冷房のギャップ。普段歩きなれない体と寝不足。それでも夜市に繰り出しては体に鞭打つような食事と人混みの元へ。

観光は体力勝負。

9/23【ホッとする顔ぶれ】
暮れていく空と、明るくなっていくネオンに照らされた街を歩く。

定刻通りにくるバスに、少し関心して乗り込んだ。停留所をいくつか過ぎると、行き交う人々の姿に予備知識のなかったバスのルールも頭に入ってくる。

すっかり暗くなった初めての夜道。たどり着いた場所で再開した、ホッとする顔ぶれ。

9/24【喜びを従えた仕事の後】
円卓に食事が運び込まれ、ビールが注がれる。

中央に引き寄せられたグラスが弾ける時というのは、なんて幸福なのだろうか。

それぞれが、それぞれの喜びを従えた仕事を終えて、話を交わす。

心を許せて、心を正せて、誠実にいられる。


9/25【もしもの生活】
世界中には様々な生活がある。異国の風景に思うのは、もしもの私の姿。

路地裏のアパートや、高層ビルのオフィスに、もしもの私を巡らせる。

なぜそうするのかは、自分でもわからない。

ただ、望むのであればどこにでもいける。そんな気がする。

9/26【一年に一度だけの朝】
一年に一度だけの朝だ。そう思った。今年初めてのキンモクセイの香り。まだ蝉の音もしている。

ロイヤルホストの指定席から朝の街道を眺めながら考えていたのは、今日のこれからのことや台湾でのこと。

そして放っておいた未解決のことは、なんとなく解決している。

9/27【惜しみない準備】
雲行きが怪しい。風が騒ぐとガルバリウム版がすこし煽られて足元がぐらついた。

大工仕事をするたびに思うのは、完璧な作業スペースのこと。いい道具を使い、仕事は丁寧に時間を惜しまずに。
 
それには準備が必要であり、そこにも同じように惜しまず時間をかけること。

私には準備が足りない。いつも見切り発射をする。今日もそんな調子で作業を始めたのだが、しかし。これからの私は、準備にも心を注いでいける。そんな気がする。

9/28【約束を果たすための日】
私はしばし約束を守らない。正確にはまだ果たしていないものが幾つかある。

期日の無い約束は果たしてそうなる。

今日は、約束を果たすための日。

9/29【今がわかる】
夜風に心地よく祭囃子が響く。歩きながら呑む缶ビールが一年で一番うまい夜。

射的を構える少年は、いつかの私。少女とのすれ違いざま照れ臭そうに挨拶をすると、仲間から途端に冷やかされた彼も、いつかの私。

毎年決まった場所にたむろする今どき女の子たち。変わりそうにない的屋のヤンキー風情。

祭りへ行くと、今がわかる。

9/30【白浜】
潮騒が聴こえる。真っ黒な海から。

次第に明るくなって行く空。露わになる海岸線と白い砂浜。

しばらくここに留まって曲が書きたい。

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