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窓越しの世界・総集編 2017年11月の世界

11/1【曲ができる時】
よく知っている街を眺めながら生まれた、始めの言葉。
 
口をついた一行目の響きが、すべての歌詞を先導する。

そうやって曲ができる。

11/2【James Taylor の前座】
目覚めると、なんとなく遠い日に居る気がした。

二度目のアラームで目がさめると、いつもの朝だった。

深い眠りの中で、James Taylorのライブの前座をしていた。

11/3【さすがの特異日】
灯油の燃えた匂いがいつもよりも濃く濃く漂う航空祭の朝。

カーテンから公園を覗き込むと、アスファルトが濡れている。

ここ最近は毎週末の雨。極め付け、先週の祭りも台風に見舞われた。

しかしさすがの11月3日。快晴。

11/4【その場所へ行けば】
その場所へ行けば、誰かしらが。

約束もなく、予定はその場で決まる。

そんな場所がかつてこの街にあった。


11/5【その僅か】
たくさんのことがひと段落すると、暗くなるまであとわずか。

工具を出して準備をはじめる。

どちらにしても毎日少しずつだろうからと、トレーラーの床貼りに着手。

あっという間に日が暮れたけれど、確かに進む。

その僅かが、心を軽くしてくれる。

11/6【そんな存在】
ただそこにあるカフェに立ち寄っただけだろう。

そんな存在が心地いい時がある。

営業告知をしていない珈琲店に来る人たちを見て思う。

11/7【豆を転がしながら】
空気もピンと乾燥し始めると、煙の立ち方が盛んになる。というか、よく見えるようになる。

風に乗って遠くまで運ばれて行くのがよく分かる。

その道すがらでは、梢からの木漏れ日が光の筋となって実体化されていく。

豆を転がしながら季節の移ろいを思う。

11/8【秋の夕暮れ前】
舗装された溝の深い都会の川。公園まで続くその川を沿いを歩く。
 
池のほとりの人々は、ランニングや愛犬の散歩の装い。

私は冷めたコーヒーを片手に、愛猫を抱く。

秋の日暮れ前。

11/9【木枯らし何号?】
台風並みの強い風の朝。

街路樹から吹き飛ばされた枯葉が行き交う車に右往左往しては、不意に空高く舞い上がる。

テーブルに差し込む光は午後に向かうほどに手元を暖かく照らした。

2杯目のモーニングコーヒーも冷めてくる頃。

11/10【練る】
イメージが湧く。取り掛かる。失敗してやり直す。

これまでのやりかた。

イメージが湧く。練る。取り掛かる。成功する。

この頃のやりかた。

11/11【余りにも近くに】
長い影が始まってからはあまりにも早い夜の訪れ。

工具をしまい、店を閉めて、ギターケースを開ける。

もしかしたら、求めていることは余りにも近くにあって、

それを証明するために全てがあるのかもしれない。

11/12【回鍋肉】
フライパンからあふれんばかりのキャベツも火にかかると次第に嵩を減らしてゆく。

豚バラ肉は縮み、長ネギは楕円形にとろける。

今夜は回鍋肉。

11/13【10年熟成の声】
自分は何を求めていたのか。

10年前にはもう知っていた気がする。

10年かかって、あの時ほんの少しだけ手の届かなかった声が、いまここにある。

11/14【僕に還る】
濡れた落ち葉がアスファルトに刻印されている夜の道。
  
冷え込みの来ない暖かい雨が止んで、また秋が深まった。

駅を背にして登る坂道で、僕は僕に還ろうと思い始めたのかもしれない。

何か別のものに生まれ変わることをやめて、僕は僕を求めて行くのかもしれない。

11/15【休日】
ファミレスのモーニングから始まり、当ての無いドライブ、なんとなくの散歩。

夜になれば結局いつもの店に腰を下ろす。

深夜営業のリサイクルショップは欲しいものだらけで、結局何も手につかない。

とっちらかっているような、それでいて何か統一されていた休日。

11/16【冬を感じる】
外に出ると、少し冷たい風が心地いい。秋も終わりに近づいている。

しばらくすれば、枯葉の落ちた木々の隙間からもう一寸多くの木漏れ日。

穏やかで強く乾いた風に、何もかもが吹かれている。

夜はこの秋一等冷え込んで冬を感じずにはいられない。

11/17【暖かさが見える季節】
焙煎の煙が日に日に濃くなる。気温の低下とともにあらわになる。

吐く息もいつの間にか白い。
 
暖かいものが良く見える季節。
 
11/18【寒い夜ほどに】
白いハウスの街に今年もイルミネーションが灯りはじめる。

寒い夜ほどに暖かく灯る光。

寒い夜ほどに暖かいトト。

11/19【二つの夢】
真っ暗な闇に一筋の光だけが浮かび上がる。
追い越し車線や反対車線から時折差し込む目くらましのようなヘッドライト。

深夜の高速道路は、その日の出来事を、まるですべてが夢だったかのような心地にさせてくれる。

すごいスピードで景色という景色は黒く塗りつぶされて行き、時間と現在地だけが刻々と動いた。

玄関を開けて明りを灯すと、夢は覚める。

そして今度は、本当の眠りのなかで夢に落ちる。


11/20【チャンスは近い】
よく眠った。

思うようにいかないことの原因を突き止めるにいは、うまくいくまで何度も試すしかない。

思うようにいっている時こそチャンスであり、ここ1番の探究心を発揮しなければいけない。

チャンスは近い。

11/21【静かな感動】
西日が終わり、茜色や紫、紺、黒、オレンジ、様々なグラデーションの時間。グッと冷え込む。

ギターを持つ手はすっかり芯から冷たい。

気がつけばしっかりと雪をたたえた富士の輪郭を一日中眺めている。

じっくりと確実になっていく声に、静かに感動している。


11/22【束の間の共作】
もう一人の自分が、的確にアドバイスをしてくれているような不思議な感覚。

「もしかしたらこんな日がくるのかもしれない。」

そんなドラマチックな妄想は一度もしたことがないけれど、訪れてしまった不思議。

一時帰国中の父と、束の間の作曲。

11/23【一生思い出す】
御茶ノ水あたりから外堀を新宿方面へ。飯田橋駅を横切る。

大震災の日、大渋滞していた道。

たくさんの人が列をなした、家路というには果てしない家路。
 
ここを通るたびに、きっと一生思い出す。

11/24【想像通り】
向かう先は地下駐車場。

真夏や真冬なんかは、自然と車のハンドルをその方向へ斬っている。

想像通りほんのり暖かい地下の大空間。

11/25【君のことだよ】
大渋滞の橋の上から見える夕闇と夕焼けの間。
 
綺麗だね。

うん。
 
君のことだよ。

11/26【歌は遠くまで】
輪止めを外したみたいに、ほんのわずかな切っ掛けで動き始めることがる。

僕を旅立った歌は、しばしば何かしらの形でまたここに帰ってくる。今日はそんな日だった。

来年はレコードを出すことになった。

11/27【持ち直す】
声が思い通りに響けば響くほど不安になる。

一つの終着のそのあとには、結果という審判が待っている。

そして最近、会う人会う人に励まされている気がする。

言葉を交わすたびに、持ち直す。

11/28【Living Day】
書類整理をしていると、何年も前の日記と鉢合わせた。

30歳になったばかりの僕の言葉に、泣かされた。

あの頃、僕は君の何を知っていたのだろうか。
 
11/29【エプロンをすると】
エプロンをすると、気が引きしまる。

エプロンをすると、自信を持てる。

エプロンをすると、優しくなれる。

11/30【グダグダ】
夕方からグダグダした。

呑みに出かけるのをやめて、食材を買い込んでグダグダした。

グダグダした次の日は、仕事が捗るに決まっている。

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