ゼミ

【〇〇ゼミ】文系のゼミたち、何が違うの?(2)

 学部決定後、遅かれ早かれ所属することになる「ゼミ」。1・2年生にとっては遠い存在だと思われがちだが、実は主題科目の中には1・2年生でも受講できる多彩なゼミがある。今回はそんな文系のゼミ紹介の第二弾。

・全学自由研究ゼミナール「平和のために東大生ができること」
通称:軍縮ゼミ

 中央アジア・コーカサス地域を対象に、戦争と平和、これらにまつわる諸問題について再考するゼミ。民族とナショナリズム、民主主義と持続可能な開発目標(SDGs)など、様々な視点から旧ソ連諸国を捉える。特にAセメスターのゼミはA2タームの国際研修への事前準備と選抜を兼ねており、選抜に合格すると中央アジアでの研修に参加できる(渡航先は例年カザフスタンかトルクメニスタンで、1年ごとに切り替わる)。最初の2〜3週目では選抜を兼ねたレポート(約3000字程度)の提出が必須だが、ついて来れた受講生が晴れてメンバーとしてこれ以降のディスカッションや発表準備に関わることができる。

担当教員:岡田晃枝先生
活動頻度:授業は週1回だが、レポートやディスカッションの準備は各自で時間を取って進める必要がある。国際研修は集中講義で、例年春休みの間に2週間ほどで実施。
こんな人におすすめ:
・将来外交官を目指している
・国際関係に関心がある
・レベルの高い人と一緒に活動し、成長したい

メンバーの声:
 普段あまり馴染みのない中央アジアについて詳しく知ることができるうえ、Aセメでは選抜に合格すれば中央アジアに行ける。自分では絶対に行かない地域なので忘れがたい経験になる。レベルの高い学生とのディスカッションを通して多くを学ぶことができる。国際研修の事前研修の一環で、省庁や有名企業の方から中央アジアの内情など貴重な話を伺える。
 大変な点は、とにかく周囲のレベルが高いので自信が削がれることもしばしばあること。レポートやディスカッションの準備が負担になることもある。特にAセメは初めの2〜3週のレポートが大変で離脱していく人も。

・全学自由研究ゼミナール「難民から学ぶ『人間の安全保障』」
通称:難民ゼミ

 日本が外交原則や政府開発援助(ODA)の指針としている「人間の安全保障」を理解し、実践するための入門的なセミナー。とりわけ、地球規模の課題の1つである「難民」に焦点を当てる。講師として難民を招き、体験談から難民の生活を知り、その解決と予防について考える。参加者もグループで様々な難民について調査し、可能ならば難民や庇護申請者からの聞き取りをし、提言を含めた発表を行う。英語のみで行う場合もある。授業の前半は知識のインプット、中盤はフィールドワークやリサーチ、後半は調査などを踏まえた報告や発表を行う。

担当教員:佐藤安信先生
活動頻度:授業は週1回で、フィールドワークやリサーチ、発表準備のために個人またはグループで時間を取る必要がある。
こんな人におすすめ:
・将来国際機関などで働きたい
・地球規模の課題や難民問題に関心がある
・講義型の授業は受動的でつまらない

メンバーの声:
 難民の方から貴重な生の声を聞き、問題意識を持って日本の政策を見つめ直すきっかけを得ることができる。また、対話・体験・実践を通して授業を作り上げることができ、主体性が身に付く。
 大変な点は、良くも悪くも授業は学生主体なので積極的に議論を起こしていく必要があるということ。英語のみで実施されることもあるので注意。


・全学自由研究/体験ゼミナール「伊豆に学ぶ」
通称:伊豆ゼミ

 体験ゼミナールでは伊豆の豊かな自然の中で普段の日常生活の中で気づかない新たな学びを発見することを目的とし、竹炭焼きやカカオ豆からのチョコレート作りなどのアクティビティを行う。自由研究ゼミナールでは伊豆での学びを発信することに重点を置き、体験ゼミナールを既に受講した学生が初修生のファシリテーターとして活動したり、学園祭でジビエ商品の販売やビーントゥーバーチョコレート作り体験を実施したりしている。学んだことをそのままにせず、発信していくことを大切にするゼミ。

担当教員:鴨田重裕先生
活動頻度:体験ゼミナールと自由研究ゼミナールはSセメ・Aセメどちらも開講しており、体験ゼミナールは事前講義と事後講義が不定期に開催される。自由研究ゼミナールは週1回の講義がある場合も。
こんな人におすすめ:
・自然が好き、伊豆の自然に触れてみたい
・都会の喧騒を離れ、自然の中で自分の生活や行動を見直してみたい
・とことん物事を観察し、体験し、学んだことを主体的に発信していきたい

メンバーの声:
 伊豆の豊かな自然に触れるという貴重な経験ができるだけでなく、普段の生活で見落としてしまいがちなことに気づくことができる。物事を他人事ではなく自分事として捉える姿勢や本物の主体性を身につけることができる。
 大変な点は、能動的に働きかけていかなければ学びを得るのが難しいということ。ただ言われるがままにアクティビティをこなしていても「楽しかった」で終わってしまう。

・全学自由研究ゼミナール「障害者のリアルに迫る」
通称:リアルゼミ

 障害当事者、支援者、家族の方などに講演をお願いする。一般的なイメージの精神・身体的な「障害」のみならず、難病患者や依存症患者、性的マイノリティなど広い意味での「生きづらさ」を抱える人々に話を伺う。基本的には講義形式で、終了後の懇親会でディープな話を聞いたり、受講生同士で本音の議論をしたりする。長期休暇中に社会福祉法人を見学し、法人の方に経営の仕方や取り組みを伺うほか利用者の方とも話す。障害を扱う映画の上映会を映画監督を招いて行ったり、ゼミ祭りとして活動の振り返りイベントを開いたりとその他の活動も多岐に及ぶ。

担当教員:野澤和弘先生
活動頻度:駒場で週1回講義がある(単位取得希望者は出席必須)。通常の授業期間では月1程度、長期休暇では月2〜3回、社会福祉法人を有志で訪問する。(長期休暇の遠方訪問時には1〜2泊の合宿形式)
こんな人におすすめ:
・障害者を取り巻く状況を始め、様々な社会課題に関心がある
・「答えのない問い」に挑戦してみたい
・なるべく自分のペースでゼミに参加したい


メンバーの声:
 魅力は、「タブーなく語る」がモットーで他では言えないような本音を言える場であること。ゲスト講師の話が唯一の正解ではなく、それを通じて悶々と考えていくこと自体を目的としている。一つの「正解」を要求されず、もやもやとした状態が積極的に許容される。参加者の障害問題に対する関心度は様々。関心度の高さは要求されず、各自が考えを述べることを大切にしている。
 それでも、運営側になると各授業の講師へのアポ取りは負担となることもある。

・全学自由研究ゼミナール「駒場すずかんゼミナール『学藝饗宴』」
通称:すずかんゼミ

 創設者は、元文部科学副大臣の鈴木寛氏。自ら問いを立てて考え真の学問に触れるためには、学術だけに身を投じていてはその本質を理解することが難しい。学術から脱して、芸術を考えることに重きを置く「学芸饗宴」がゼミの趣旨。芸術体験を含むゲスト会、正規ゼミ生が中心となる学生会、読書会(グループワーク)が通常の活動。セメスターごとに最終制作をゼミ合宿で行い、テーマに対して何かしらの形で各メンバーが1人1作品ずつ表現する。

担当教員:鈴木寛先生
活動頻度:
・週1回ゼミ。6限の時間(18:45~20:30)で行われる。(曜日未定)
・毎週21時に終わった後に、食事会@KOMAD。ゼミメンバーでサロンにいるかのように語り合いながら、ご飯を作って食べる。
こんな人におすすめ:
・一味違った学問に挑戦してみたい
・議論が好き
・良質な本が読みたい
・芸術に関心がある

メンバーの声:
 魅力として、まず確実にいい本・読むべき本を紹介してもらえる。読書の達人みたいな人も多い。コミュニティとしての機能があり、みんなでお出かけとかもしばしばある。永遠に終わらない議論をする相手が見つかる。弁が立つこととは違う、論理的思考を伴った議論をすることできる。
 一方で、正規受講すると毎回課題が出るのである程度のコミット量が必要になる。読書会でもかなりハードな本を読むことがある。

 多くのゼミには選考がつきものだが、それだけ優秀な人材が集まっているというのもまた事実。東大という環境を活かして、ゼミで自分のスキルを磨いたり考えを深めたりするのも良いのでは。特に講義型の授業があまり好きでない人は、自分で調べて仲間と議論するという学問のスタイルに一度チャレンジしてみるのもあり!

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