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楽々精算のマーケティングトレース

先日決算資料を公開された株式会社ラクスさんのサービス「楽々精算」のマーケティングトレースをしてみたいと思います!

■概要
テーマ企業名:株式会社ラクス( https://www.rakus.co.jp )
選定理由:2020年3月期の決算資料が公開され、主力サービスである「楽々精算」の売上高が伸びているため、その秘訣と今後の戦略を分析します。
仮説:クラウド経費精算サービスのニーズ拡大、オフライン施策への投資(TVCM、展示会)

自社サービスとはターゲットは違うものの、BtoBのSaaSサービスという共通点もあり、TVCMや展示会でお目にかかることも多く、注目しました!

事業・サービス概要

事業内容:クラウドサービス(バックオフィス、メール配信システムなど)
ミッション:「IT技術で中小企業を強くします!」
機能価値:「中小企業の様々な業務の効率化、付加価値化に貢献するクラウドサービス(SaaS)」
コンバージョンポイント:資料請求、無料お試し
従業員数:586名 ※単体

「楽々精算」をはじめとした楽々シリーズ、「配配メール」など、中小企業に特化したキャッチーなネーミングでサービスを展開するラクスさん。クラウド事業だけで9つのサービスを展開されていたとは驚きでした!

以下からは、クラウド経費精算システム「楽々精算」に的を絞って分析していきます!

PEST分析

政治
・経済産業省が2018年ごろからDX推進を取りまとめ
・2018年に「クラウド・バイ・デフォルト」方針を発表し、国自体もクラウドサービスの利用を進めている
経済
・中小企業におけるクラウド経費精算システムの普及率は17.8%
社会
・労働人口現象による業務効率化/生産性向上の要請
技術
・クラウドサービスの普及

このトレースをしている2020年5月時点はアフターコロナ/ウィズコロナの議論が盛り上がり、日系の大企業でも続々とリモートワークやクラウド化、ペーパーレス化に注目が集まっていますね。

特に就労管理システム市場は、働き方改革関連法案の施行にあいまって、これからも拡大することが予想されます。

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https://www.itr.co.jp/wp-content/uploads/2019/07/190718_zu01.png

自社でもクラウド経費精算サービスを使っているので全く想像できないのですが、紙やExcelとどう戦っていくのかがポイントになりそうですね。

3C分析

顧客視点
・中小企業がターゲット、費用面で利用障壁がありそう
自社視点
・「楽々精算」は2009年7月より販売開始、「国内導入数No.1」
・バックオフィス系クラウドサービスを複数展開しているため、クロスセルが狙いやすい
競合視点
・経費精算サービス市場は競合が乱立するものの、機能面・費用面でポジショニングにばらつきあり
・価格帯や知名度の観点では特に「ジョブカン」「マネーフォワードクラウド経費」がが競合する

クラウド経費再選ソフトの普及率は低いものの、競合サービスが多いのがこの市場の難しいところですよね。その中でも「楽々精算」はターゲットが明確であること、サービスの提供開始が早く導入実績があることが強みになりそうです。

マーケティングファネル整理

認知:TVCM、展示会
比較検討:web広告、オウンドメディア「経理プラス」、外部比較サイト、販売代理店
コンバージョン:資料請求、無料トライアル
営業:大阪エリアへの拡大
成約・ファン化:カスタマーサクセスに注力

楽々精算のマーケティングで特徴的なのが、認知を獲得するTVCMですね。過去の決算資料を見ると、2016年からTVCM放映を開始したそう(地方エリア)。今でこそBtoBサービスのTVCMが多く放映されていますが、2016年ではまだ事例も少なく、かなり積極的な投資と言えるのではないでしょうか。

また、クラウド経費精算ソフトは競合が多いため、比較サイトの存在も多くミラます。料金が発生しているのかは不明ですが、楽々精算は上位にランクインしています。競合が多いからこそ、認知獲得が重要になってくるのでしょうか。

さらに今後はカスタマーサクセスに注力していくことが採用情報から伺えます。SaaSサービスはユーザーが使いこなせないと、そして導入先企業に浸透しないと簡単に解約されてしまいますから、オンボーディングに投資する戦略なのでしょう。また、楽々精算と同じターゲットで「楽々明細」や「メールディーラー」のサービスも展開していることから、導入企業を軸としたクロスセルの戦略も取れそうです。

マーケティングを支える組織構造

ラクスさんはCAGR(年平均成長率)30%、導入企業数2万社達成を目指して成長投資を強化する方針を取っており、今後もしばらくは成長フェーズとなりそうです。組織が拡大する中で着実に成果を出しているマーケティング施策の裏にある組織文化を探っていきます。

1、テックが強い

これはマーケティングとは直接関係なさそうですが、会社として技術力に重点を置くことはSaaSを提供する上で重要ですよね。子会社でエンジニア派遣事業をされていることもありますが、ラクスさん本体でもエンジニアブログや開発部のTwitterアカウントがありますし、テックはラクスさんの強みとしてありそうです。

2、徹底的な検証

ラクスさんには「数値で語る」「PDCAを回す」などの検証する文化が根付いているようです。

検証の文化が高いレベルで根付いているからこそ、大きな予算を投下して着実に成果を出すことができているのですね!

ラクスさんは「リーダーシッププリンシプル」を掲げており、その中で「小さく試して大きく育てる」「費用対効果を考える」が掲げられています。こういった基本的で具体的な行動指針が、会社の方針として明文化されていることに価値があると思います。

私たちは施策の実行にあたっては、必ず仮説を立てます。実行したら、数値をもとに振り返り、仮説が正しかったのかを検証し、次のアクション計画を立てる。目的に向けてロジカルに物事を考え、PDCAを徹底する。

それを取りまとめて言語化したものが、ラクスの行動指針である”リーダーシッププリンシプル”なのですが、ただ言葉としてあるだけではなく、ラクスの社員の考え方や行動のなかに、しっかりと息づいているのです。
( https://career-recruit.rakus.co.jp/interviews/leader003/ )

3、教育する風土

とはいえ、そういう文化をどう作っていくのか、が一番難しいですよね。誰もが検証が大事と思っていても、組織文化として根付かせるのは至難の技だと思います。この行動指針に基づいて、育成制度も整備されているようです。


楽々精算のマーケティングトレースまとめ

楽々精算のマーケティングの優れているポイントをまとめます。

1、競合サービスとの差別化・ブランディング
「中小企業」とターゲットを明確にし、自社のポジショニングを確立したマーケティング施策を展開しています。

2、徹底的な検証
マーケティング組織だけでなく全社として「数値で語る」「PDCAを回す」文化が根付いているので、大きなマーケティング予算を投下しても着実に売り上げを伸ばしています。

3、BtoBサービスの複数展開
「楽々明細」「メールディーラー」など、業務効率化の市場で複数サービスを展開している強みを、今後カスタマーサクセスを強化していく中でクロスセル戦略として活かせます。

今後の戦略仮説

● 紹介制度(すでにやっているかもしれませんが)
ターゲットが中小企業であること、そして競合が「Excel」でありITリテラシーが高くないことを考えると、ニーズを喚起するためには導入企業からの紹介が最強のマーケティング施策になるのではと考えます。

そのためにまずは、ユーザーにサービスを使ってもらって、業務効率化を達成し成功体験を積んでもらうことが必須になります。その意味でも、カスタマーサクセスが今後の鍵を握ると考えられます。

●カスタマーサクセスの拡大
これはすでに実施されており、これまでの実績で解約タイミングが半年→1年後に伸ばせたそうです。

>「楽楽精算が顧客サポートに力を入れる理由とは?」
https://www.manegy.com/article/detail/247

これに加えて、サポートが充実しているサービスとしての認知を獲得していく施策をとることで、競合との差別化を計ります。具体的には、資料や事例などのコンテンツ制作とユーザーを起点とした口コミでしょうか。ユーザー層とSNSの相性が成果の鍵を握りそうです。

●サポートプランの追加
ターゲットが中小企業ということで利用料金を上げるのは難しいと思います。それでも契約期間が短い中でのオンボーディングは成果が出にくくなってしまいます。

そこで、少額でサポートプランを設置し、プランに申し込んだ企業を重点顧客としてオンボーディングさせ、長期化を計ります。


以上、「楽々精算」のマーケティングトレースでした!これからも伸び続けることが予想される楽々精算のマーケティング施策を参考にさせていただきます!

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