モヤモヤに光をあてる「会話」の方法 ー三位一体型対話モデル(仮)
「楽しかった」と思う飲み会には共通点があります。それは自分のなかのモヤモヤのかたちを発見できたと思えることです。最近ぼくは「そのような飲み会ではどのような会話が行われているのか」を考察しながら、体系化し、ワークショップをつくることを試みています。今日はその経過を書きます。
自分のあり様を肯定する言葉の発見
たとえば、ぼくは最近ある悩みをもっていました。それはアーティストに仕事を依頼するときの態度についてです。「ちゃんと文脈をふまえていないといけないのではないか」とか「自分なんかがアーティストに仕事をお願いしていいんだろうか」という感じです。
そんなとき、先日実施したイベント『子どもの身体を踊る』の打ち上げで、ダンサーの砂連尾さんとぼくの間にあった会話がこのモヤモヤに光を当ててくれました。それはこんな会話でした。
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臼「今回のイベント、どうしても砂連尾さんにお願いしたくて、難しい企画を引き受けてくださりありがとうございました。」
砂「うすいくんってヤクザみたいなところがあってさ、それがよくて引き受けたんだよ」
臼「ヤクザって、どういう意味ですか・・・?」
砂「まだ価値化されていないものを、”これがいいんですよ、とにかく、これがいいんです”と押し切る人っていうかね」
臼「たしかに、そうやって砂連尾さんをお誘いしましたね」
砂「新しい物事を生み出す時には、そういう弱いヤクザみたいな人が必要なんだよね」
臼「・・・・なるほど、弱いヤクザ!」
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というような会話です。この会話を通してぼくはある感覚をおぼえました。それは「新しいことを依頼するときは弱いヤクザという心持ちで良いのだ!」という喜ばしい肯定感でした。ぼくの衝動のあらわれ方って「たしかにそういう感じかもしれない」と教えてもらえました。
これは一例にすぎません。ぼくたちは、こんなふうにささやかな喜びに満ちた会話をたくさんしているはずなんです。ただ、それは記録をされていることはほとんどないだけなのだと思います。
他人の解釈、メタファー
会話のなかで、自分のモヤモヤの輪郭をたしかめることができると、とても嬉しいです。そうした会話のなかで、何がおきているのでしょうか。
2つ言えることがあります。まず1つは、自分のモヤモヤに対して、他人が解釈してくれるということです。そしてもう1つは、その解釈にメタファーがくわわっていることです。「臼井くんの仕事のあり方ってさ、弱いヤクザみたいだよね」というのが砂連尾さんのぼくへの解釈であり、メタファーだったわけです。
自分の中のモヤモヤしたものに、他人の解釈が光をあててくれる。その要素をメタファーによって確かめやすいものにしてくれる。悩みやモヤモヤを解消してくれるうえに、立ち止まって萎縮していた自分の存在を肯定し、背中を押してもらえます。
モヤモヤに光をあてる会話法をモデル化してみた
というわけで、「どうすれば人のモヤモヤに光をあてる会話は再現可能になるか?」を考えてみました。仮に「三位一体対話モデル」と名付けます。ざっくり、8つの要素がありそうです。
❶3人集める
❷ターンテイキング
❸話し役、聞き役、メモ役
❹質問をする(メタファー、ストーリー)
❺良いと思ったことを伝える
❻メモる(ファクト、メタファー、ストーリー)
❼ふりかえる
❽「中心の問い」を立てる
❾繰り返す
上から順に解説していきます。
❶3人集める
「三位一体」と名付けたのは、単純に3人いるといいなと思ったからです。その理由は後ほど書きます。まずは3人集めます。
❷ターンテイキング
「ターンテイキング」とは社会学の用語で、話者が交代することを言います。飲み会、打ち合わせ、お茶、井戸端会議…あらゆる「会話」のなかで人間は無意識にこれを行なっています。が、声の大きい人が話者の立場を独占してしまうと、声の小さな人は発言の機会を奪われてしまいます。
そこで、このモデルでは「1人10分話者のターンを担う」というようにルールを設計します。
話し役、聞き役、メモ役
話し手のモヤモヤを、みんなで探すために、役割を分担します。そして順番に交代していきます。「三位一体」のゆえんです。
聞き役:質問をする(メタファー、ストーリー、解釈の確認)
聞き役が、話し手のモヤモヤについて質問していきます。この質問の仕方に工夫があると会話が盛り上がりそうです。
たとえば、yes/noで答えられるものではなく、どんなふうにも回答できるオープンな質問をするように心がけます。また、「何がそんなにモヤモヤするの?」と原因を追求するような質問も避けます。そうではなく、モヤモヤのかたちを探るために、「○○に例えると、どんな感じ?」といってメタファーを使うことをうながしたり、「どういうきっかけでそう思ったの?(過去)」「どうなっていったら嬉しい?(未来)」というように時間軸を意識したストーリーメイキングをうながすような質問をしていきます。
また、会話のなかでときおり、「○○っていうことなのかと思ったのだけど、あってる?」と確かめる質問をいれると、「そうそう!」と会話を進めることができたり、「うーん、ちょっと違って…」とまた別の言葉を引き出すことができたりします。
矢継ぎ早に聞くようにするより、ゆったりと相手の言葉をうけとめるような時間の使い方が良さそうです。
良いと思ったことを伝える
聞き手のうなづきや「面白いなぁ」といったつぶやきは、話し手の心理的安全をつくりだし、なだらかに会話をグルーヴさせていきます。「それ、とてもいいですね!」などと伝えることをしていくと良さそうです。
メモる(ファクト、メタファー、ストーリー)
メモ役は、普通ならば流れて消えていってしまう会話というものを記録し残す、大切な役割です。
相手をよく観察します。そして、まずはファクトとして、会話のなかで語られた言葉をメモっていきます。通常のメモはこれだけだとおもうのですが、メモ役自身が考えたメタファーをメモします。(この話って、○○に例えるとこうだよな・・・)といった具合です。さらに、ストーリーの流れも意識しながら聞くとなおよさそうです。(この人の話、映画にするとしたらここが盛り上がりそうだな)とか。
*簡単な技術じゃないことはもちろん承知の上で書いています!
ふりかえる
ここでいったん、話し手のトークを区切ります。
メモ役のメモをみながら、
・わかったこと
・おもしろかったこと
・もっと知りたいこと
などを振り返り、語ります。
「中心の問い」を立てる
ふりかえりの最後に「問い」を立てて終わります。「今日話してたことの中心って”どうすれば〜〜〜できるか”っていうことだったよね」と言うような感じで確かめられるとよいかなと。
モヤモヤというのは「問いが明確になっていない」ということだったりします。「問い」が明確になった時点で問題が解消する場合もあります。
繰り返す
ターンテイキングをして、話者を交代します。最初に話し手をした人が、聞き役やメモ役になったときでも、自分の問いに引きつけて、他者を解釈してしまって全然OKだと思います。
・・・・
と言う感じでしょうか。まだまだ未整理な点はありますが、書きながら僕も見えてくることがあります。
最後に参考にした文献や記事を載せておきます。
☝︎超良書なので、対話というキーワードに関心がある方は買って損のない本です。
☝︎「対話のことば」の副読本としてオススメです。オープンダイアローグという手法が臨床のなかでいかに画期的な発明だったのかと言うことがよくわかります。
☝︎メモ役の人がグラフィカルに記録できたら、とってもいいと思うんですよね。この対話モデルをつくるのに「ビジュアライズ」は必須だと思っています。
☝︎三位一体型対話モデルの重要な先行事例です。
☝︎こちらは4人グループですが、他者からの解釈を活用する点でとても参考になります。
☝︎自分のnoteですが、今回のモデルを考えるきっかけになった仕事でもありました。
最後に
このモデルの構築のために、今後も試行錯誤を続けていこうと思います。
そもそもこのモデルが面白いのか、必要性があるのか、といったこともふわっふわでやっているので、twitterなどでシェアしていただけたら嬉しいです。
また、似た事例、もっとうまくやっている事例をご存知の方がいらっしゃったら、ぜひコメント欄で教えてください。
よろしくお願いします!
==2019年4月26日更新==
こちら、「3ピースダイアローグ」と名前を変えて詳しいやり方を提案しています!ぜひご覧ください。
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