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「ぬけぬけ病」からの回復

今年の初めに「ぬけぬけ病」になった。

これは、私の陸上人生の中で最も大きな故障だったと言ってもいいだろう。

右脚に力が入らなくなり、走ることがうまくできない状態になり、練習量(月間走行距離)も、1月は260km、2月は180kmと通常の月の4分の1くらいまでに落ち込んだ。

朝のトレーニングは全くやらなくなった。

寒い時期だったことや、身体を休ませるためにも無理をするべきではないと思ったわけだが、トレーニングをしなくなるどころか、身体を動かすときの違和感のストレスが強くて、朝起きることさえもできなくなるくらいだった。

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「本当に治るのか?」という不安はとても大きくて、治る見込みのある骨折や肉離れでもしている方がよっぽどマシだと思ったくらいだ。

幸いなことに、今は抜ける感覚も無くなり、股関節付近にずっと残っていた違和感も無くなった。

トレーニングの量(走行距離)も、5月から7月までは700km、8月には800km走ることができ、ぬけぬけ病になる前の水準まで戻すことができた。

これで、ほぼ完全回復と思っていいだろう。

私が「ぬけぬけ病」になって感じたことは、「ぬけぬけ病」に悩まされているランナーが他にも多くいるということだった。

それは、自分自身が「ぬけぬけ病」になったことによって、そう感じているだけなのかもしれないが、少なくとも私が通っている石井整骨院の石井先生も同じことを感じているので、あながち間違いでもないのだと思う。

当初は、この機会に「ぬけぬけ病」の対処法を見つけてやりたいという気持ちもあった。

どうして自分が「ぬけぬけ病」になったのか、その原因さえもよく分からなかったので、その原因を特定することでどうやって治療すればいいのかを導き出せるかもしれないと思ったわけだ。

いわゆる「必勝法」のようなものがあればいいのにと思っていた。

しかし、残念ながらそんなものは無かった。
というか、私にはよく分からなかった。

それ以前に、そもそも自分は「ぬけぬけ病」だったのかということさえも、よく分からなくなってしまうくらいだった。

そんなふわっとした内容のものをnoteに書き残して何になるのだろうと思うこともあり、なかなか気持ちも進まないまま時間だけが経過してしまったが、私と同じような症状で思い通りに走れなくなって苦しんでいる人がいることを考えたときに、少しでも何かの参考にでもなればと思ったため、ここに書き残しておきたいと思う。

ただ、これはあくまでも私の個人の見解であり、根拠や裏付けがあるわけではないので、あくまでも推測ということを前提に読んでいただきたい。

また、気が変わったら消すかもしれない。

ぬけぬけ病の原因

ぬけぬけ病の原因は、何だろうか。

インターネットで調べると、「筋力低下によるもの」や、「脳の思い込みによる感覚の不一致」という説もあったが、私は少し違うのではないかと思っている。

厳密に言えば、「筋力低下によるもの」や「脳の思い込みによる感覚の不一致」によってぬけぬけ病になった人もいると思うが、私を含めて現在増えているぬけぬけ病のランナーは、それが原因で「ぬけぬけ病」になったわけではないと思う。

ぬけぬけ病の原因とされる「筋力低下」と言うのは、単純に今まで100あった筋力が30に低下したことによって走れなくなるというものではなく、100の筋力と100の筋力によってバランスが取れていたものが、一方の筋力が30に低下したことによってバランスが崩れて、身体を動かすことに支障が出るというようなものだと思う。

例えば、使い過ぎた筋肉とその反対側の筋力(表と裏の筋肉、内側と外側の筋肉、前と後ろの筋肉)とのバランスが崩れて、うまく身体を動かせなくなるようなイメージだ。

だから、「筋力低下」というより「筋力のバランス崩壊」という表現の方がいいのかもしれない。

しかし、ランニングで筋肉を使い過ぎ(走り過ぎ)たからといって、筋肉のバランスが崩れて、走れなくなるほどになるのだろうか。

特定の筋肉だけを鍛えるようなウエイトトレーニングをしていたならまだしも、走る動作だけでそんな極端なことは起こらないのではないだろうか。

例えば、地面に着地する回数と、蹴る回数だって同じはずだ。

また、私が25年以上走り続けている中で、筋肉が増えたとか、筋力(最大パワー)がアップしたと感じることはほとんどなかった。

日々のトレーニングによって鍛えられたのは、パワーではなくスキルであって、それが歳を重ねても記録を伸ばすことができている要因だと思っている。

だから、走り過ぎたことで筋力のバランスが崩れるというのは、私にはしっくりこない。

ただ、これは私の直感であって、何の根拠も裏付けも無い。

では、「ぬけぬけ病」の原因はどこにあるのかと言われると、私は筋肉に原因があるように思う。

踊る大捜査線的に言えば、「事件は現場で起きている」ということだ。

股関節に違和感があるなら、股関節付近の筋肉に原因があるということになる。

もちろん、私個人の見解に過ぎないし、全てのぬけぬけ病に当てはまるわけではないと思う。

しかし、私が受けた治療を積み重ねていったとき、そのような考えに辿り着いたのだ。

どんな治療をしたのか

治療は、週に1回、自宅から片道20分くらいのところにある富士見町の石井整骨院に通い、いろんなアプローチから違和感の原因を探ってもらった。

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「ぬけぬけ病」から回復することができたのは、ぬけぬけ病について理解のある石井先生の力が大きかった。

治療の内容としては、筋膜を診てもらうことや、鍼を打ってもらうことが多かった。

治療によって、違和感が軽減することもあったが、翌日違和感が戻ってしまうことや、全く違和感が変わらないこともあった。

それは、治療が効かなかったわけではなく、原因と思われる部分(動きの悪い部分)にアプローチしても、その周りの筋肉や骨の影響を受けてしまった結果、元の状態に戻ってしまったということだと思う。

身体を動かすというのは大雑把に言うと、「筋肉が伸縮することで骨が動く」ということだろう。

筋肉は、いろんな筋肉や骨との繋がりがあるので、1つの筋肉を動かすことで、他の筋肉も連動して動くわけだ。

では、どこか1つの筋肉の動きが悪くなるとどうなるかというと、きっとその筋肉の周りの筋肉に影響が出るわけだ。

今回、私は右内腿に違和感によって走れなくなってしまったわけだが、治療に通っているうちに、腸腰筋が張っていることや、腸脛靭帯が張っていることが分かってきた。

調べると、「ぬけぬけ病」の人は、腸腰筋がうまく機能していないことが多いのだという。

それなら、「腸腰筋にアプローチすればいい」と思うわけで、同時に「太腿は原因ではない」と思うわけだ。

それで、腸腰筋をターゲットにして治療をしてもらったわけだが、期待とは裏腹に症状は改善されなかった。

このときは、期待値も大きかったので落胆した。

「これはイケる」と確信があったものを外してしまうと、今度は他に原因を求めるようになる。

腸腰筋が原因ではないのではないかとか、他に見落としがあるのではないかと考えるようになり、そうしているうちに、いろいろ見失ってしまうのだ。

まさに、砂漠で道に迷ったかのようになる。

でも、忘れてはいけないのは、右内腿が張っていたことと、それによって走りが重くなっていたことと、その後に力が入らなくなったというこの流れだ。

自分がどこから来たのかということを忘れてはいけない。

石井先生は、諦めずに腸腰筋にアプローチをかけてくれた。

その結果、股関節周りに違和感(坐骨神経痛みたいな感覚)こそあったものの、抜ける症状は改善して、少しずつ走れるようになった。

今になって、どんな治療が良かったのかと聞かれてもうまく答えられないけれど、継続した治療にこそ大きな効果があったのだと思う。

また、トレーニングも身体になるべく負荷をかけず、トレーニングを継続することを優先させたことも良かったと思う。

他に、普段やらないようなストレッチをやってみたり、回し蹴りのトレーニングをしたのも良かったのかもしれない。

ずっと残っていた股関節周りの違和感も、8月になった頃に気付くと無くなっていた。

時間がかかったことは確かだが、石井先生の治療のおかげで「ぬけぬけ病」から回復することができたと言っていいだろう。

最後に

さて、私はどうして「ぬけぬけ病」になったのだろうか?

治療の過程を振り返ってみると、「筋力のバランス」が崩れていたということは認めざるをえない。

走るという運動だけでそんな極端なことが起こるのか。

特定の筋肉だけを鍛えるような特殊なトレーニングをしたわけではないが、ただ1つ思い当たる節があるとすれば、「厚底シューズ」である。

冒頭で「長年走り続けている中で、筋肉が増えたとか、筋力(最大パワー)がアップしたと感じることはほとんどなかった」と書いたが、唯一の例外があるとすれば、厚底シューズを履いたときだったと思う。

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厚底シューズを使うことによって、筋肉のバランスが崩れるというわけではないと思うが、今まで以上に長い距離を走れるようになったとか、速いペースで走れるようになったとすれば、厚底シューズがリミッター解除の役割を果たして、身体のどこかに負荷をかけていても不思議ではないと思う。

先日、400mのインターバル走(R=200m)をエアズームヴィクトリーを履いて走ってみたのだが、思った以上に脚に負荷をかけ過ぎてしまい、たった一度のトレーニングで故障する寸前のダメージを受けてしまった。

今までは、パフォーマンスを上げるためにもそれなりの準備やスキルが必要だったが、シューズの改良によって、今は簡単にパフォーマンスを上げられるようになったと思う。

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身体に負担をかけることが容易くなったことを踏まえても、身体への負担をコントロールすることが肝だと思う。

月間走行距離が多ければ多いほど、設定ペースが速ければ速いほど良いということでもない。

それをいかに、コントロールできるかだ。

そう言えば、頭文字Dでも須藤京一が似たようなことを言っていた。

「タイヤの負担をコントロールしてこそ一流!!普通のことを普通にこなして、勝つのみ!!」

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須藤京一が言っていたのだから、間違いない。

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牛山純一
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