家に猫3匹いる

我が家にも猫が3匹いる。5年半ほど前に現在の家に越してきてすぐ、猫好きの母が知り合いに貰い受けてきたのが最初の2匹であり、これをちゅうたとちなと言う。2匹とも出身は野良猫であり、この名前は2匹が俺んちに来る前に前述の知り合いが名付けたものであるが、私も母もこの名前をたいへん気に入っている。ちゅうたは全身灰色の硬めの毛で、鼻から顎にかけては白い毛が混じっている。図体は3匹の中でもいちばん大きく、というかもっと具体的に言うと腹が大きい。餌をあげすぎてるのかもしれない。でも健康を真剣に心配するほどでは今んところないし可愛いので策を打つほどでもないと家族一同油断してしまっている。ちゅうたは慢性的に鼻炎であり、昼夜を問わないくしゃみで猛烈な鼻水を撒き散らしている。このくしゃみには助走というか前兆が無いので腹を撫でている最中に会心の一撃的な撃を食らうこともある。ちゅうたには人見知りがほとんど無く、誰にでも擦り寄って足元で転がっては人間を骨抜きにするのが趣味らしいんですけど、老若男女問わず媚を売るその姿勢には、野良猫としての過去の片鱗がおよそ見受けられない。
ちゅうたと同時にうちに来たもう一匹のちなはと言えば、ここには野良猫の姿勢がまだ根強く残っている。人見知りの度合いで言うとたとえば俺くらい強く(伝わらない)、初めてうちに来た友人などにはまず姿を見せない。と言って一度慣れてしまうと、撫で始めてから転がるまでの時間でいうと案外ちなが一番早かったりする。人見知りは激しいが寂しがり屋でもある、猫だから可愛いが人間だったら面倒でかなわないタイプのまあ猫だからよかった、全体的に黒くやわらかい毛で顔と腹だけは白く、鼻に黒いぶちのある可愛い子である。AV女優に「松岡ちな」というのがいるが松岡のデビューは2014年の8月らしいのでうちのちなの方が1年半ほど早い。すごくないですか。

3匹目のマロンもまた、同じ母の知り合いに貰い受けた猫である。ちゅうたとちなより1,2年ほど年下で、今でも体は一番小さいが気は誰よりも強く、あとはひたすら可愛い。立った時の前足が左右にやや開いているのを見て、母が「頼もしい、マロンはジャングル大帝のレオだねえ」と言っていた。俺はジャングル大帝をてんで知らないが、知らないなりに反論するなら、マロンはもともと女の子である。勝尚且、ヒーターの上に前足を乗っける姿は完全に教授である。…我が家ではマロンはマロンだが、母の知り合いが保護していた段階では名前は「ジャスミン」であった。がうちに来るなり「ジャスミンじゃねえな」という話になり、一瞬の「虎五郎」だか「虎太郎」だかの時期を経て「マロン」に安定した。それで東京の姉を含む家族全員が大納得したのであるが、名前をちゃんと呼ぶ気が無いのは母である。自分が子どもの頃からそんな気はしていたが、母の呼び方は時間の経過や気分により変化していくものなのだ。ちゅうたはしょっちゅう「ちゅうすけ」とか「ちゅう坊」になるし、マロンは「まーにゃ」、ちなは「ちにゃりん」どころか凄い時は「ちなりんこ」とかなんとか、とりあえず頭文字が合っていれば本人は満足らしい。これを真剣に一度も指摘してこなかったのは私や姉の責任であり、このままいくと母のネーミングセンスはさらに斜斜斜め上へ向かうだろう。こないだ母は習近平を見て「この人毎回パンダにしか見えない」と言っていた。息子の俺にはパンダには見えなかった。
(2018.8/7)

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