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「笑わせろ」という圧力

 開会式の演出の総括責任者である小林某氏が、お笑いコンビ「ラーメンズ」時代に、ユダヤのホロコーストを揶揄したネタを披露した件が、ユダヤの人権組織、ローゼンタールにバレ、総括責任者が辞任のニュース。私はラーメンズなんて、ほとんど知らないし、小林賢太郎がコンビを解散後、演出家に転身したなんてことは、さらに知らない。

 昔、別役実という前衛演劇の脚本家、演出家がいて、七〇年代の初め頃、「近頃、〈笑わせろ〉という圧力を観客席から強く感じる」と語っていた。別役が、このような事態をどう認識していたのか、というと、そこははっきりしないのだが、いい傾向だとは思っていなかっただろう。その後、お笑いブームが到来、別役の懸念は、半世紀後、とんでもないところで顕在化してしまったということだろう。

 ちなみに、今まで、新聞、テレビ等を見ても、全然わからなかったのだが、この毎日新聞の記事によると選手団の入場行進は行われるらしい。無観客の入場行進。否、バッハ皇帝の前で行われる入場行進。「裸の王様」の新バージョンだな。……不条理極まりない。不条理劇の権威、別役さんだったらどう演出しただろう。

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