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「フードテック革命 世界700兆円の新産業」を読んだ感想・要約 人生を豊かにする食の最新技術

こんにちは!うーしーです。

今回は
「フードテック革命 世界700兆円の新産業」
という本の紹介です。

タイトル通り、フードテック領域の世界最先端が網羅された興味深い本でした!

簡単な内容紹介と感想を書いていきます。

日本の食業界は「iPhone前夜」

この本の著者は企業のDX化を支援するコンサルサービスを主に行っているシグマクシス株式会社で、食を起点とした新産業創出を目指す事業やその情報発信に関わる3名です。うち2名はマッキンゼーを経ており、もう1名は前職が記者・編集者です。

著者らがこの本を書いたきっかけは2016年にシアトルで行われた食×テクノロジーのイベント「スマートキッチンサミット」に参加した際、日本企業の話が全く出てこなかったことだそうです。

日本の食文化・調理家電は世界最先端と思っていた中、日本からそのイベントへの参加者すら見つからず、衝撃を受けたとありました。そして、日本のキッチン・フード業界をリリース前は大したことないと思われていたiPhoneに市場シェアを奪われ、勢いを失った日本の携帯電話・通信業界に重ね合わせ、世界に置いていかれるのではないかと危機感を抱いたそうです。

そこで著者らは日本のフードイノベーションを加速させるたいと考え
・フードテックのトレンド
・あらゆる分野の専門家がどのように食の新産業を共創していくか
を示すことを目的にこの本を書いたとのことです。

食の価値の再定義

Chapter1では今フードテックが注目されている理由について述べられています。

食の市場規模は2025年までに700兆円規模に達するといわており、今「フードテック」は注目されています。その裏付けとして、食の多様な価値に対して、人々が食にお金を払う理由が増えることが挙げられています。社会が変わり、生活者も変わる中で、食の価値として「効率性」「おいしさ」「利便性」という従来の概念を超えて、「コミュニティーの育み」「新しさ」「個性の表現」など新たな価値を実現するものとして再定義することが求められているのです。
また、「Food for Well-being」がキーとなる考え方として提示され、人々の生活をどう豊かにするのかという思想を通じて新たな価値が生み出されると述べられています。

感想
実際、従来の概念は比較的簡単に満たせるようになりましたね。飽食の時代ともいわれています。そんな中、健康やSDGsを意識した食生活やコロナによって料理を楽しむ人が増えたことなど、食に求める要素が多様になってきているのは多くの人が感じていると思います。生きるための食から、幸せになるための食へ欲求のレベルが進化しているのですね。また、効率性や利便性を求めるあまり失われた食の価値を再認識し、取り戻そうとする動きでもあるかもしれません。
また、「Food for Well-being」の考え方は新規事業やサービスを作るにあたって目指すべき方向を示すフレーズで、重要な視点だと感じました。

コロナ禍で加速したフードテック

Chapter2ではフードテックのトレンドや世界情勢が述べられた後、
Chapter3ではwith&アフターコロナ時代のフードテックについて書かれています。

新型コロナウイルスの感染拡大により、「食」の環境にも様々な変化が出てきており、具体的にはオンライン販売の増加や家庭での調理機会の増加が挙げられます。また、デリバリーの成長やデリバリー専門店の増加といった変化もあります。さらに人間と動物の距離が縮まる工業的畜産により、新たなウイルスの接点が増えたとの見方もあり、感染症対策として食の動物への依存度を減らすべきという声もあるようです。

感想
実際に、コロナによる生活の変化とともに食の価値の再定義が加速した印象があります。外食や飲み会の機会がなくなる中、自然と自分の理想の食生活について考え直した人も多いのではないでしょうか?コロナ自体は大変ですが、これまでの常識や習慣を疑うことでより自分に合った食生活を手に入れるチャンスと捉え、実践していくことで人生をより前進させられると感じました。

また、コロナによって否が応でも健康への注目が高まるとともに、食への関心も高まっているようです。中でも、アフターコロナで次の5つの領域が注目だそうです。

・医食同源
・エンタメとしての料理
・代替プロテインの拡大
・フードロス対策
・最前線ワーカー支援

これらの領域について、Chapter4以降でそれぞれ深堀りされています。

フードテックの最新トレンド

この本の中では、Chapter4~8にわたって、フードテックの領域やその関わりとして主に
・代替プロテイン
・キッチンOS(調理家電のIoT化)
・パーソナライゼーション(個別最適化)
・外食産業(ロボットレストランなど)
・食品リテール(デリバリーサービスなど)
・事業創造の仕組み
について、動向が詳細に書かれていました。

中でも興味のある代替プロテインについて簡単にまとめます。

Chapter4ではアメリカのインポッシブルフーズとビヨンドミートを筆頭に急成長し、大手メーカーも続々参入している代替プロテインについてです。
将来的な人口爆発による食料不足への備えや工業畜産に対する倫理的背景、環境保護の観点などから、動物に頼らないプロテイン供給を多くのスタートアップがミッションに掲げているのです。
現在、代替肉の技術は肉に近いまたは肉と同じ喫食体験を実現できるレベルまで来ており、将来は肉以上の機能性を目指しているようです。

感想
植物性代替肉市場は今日本でも成長してきており、良い流れだと感じています。周辺技術のスタートアップなどが増えることでこの流れはより加速し、価格面などの課題が解決されると思われ、楽しみです。代替肉に興味がない層をいかに取り込むかが重要で、時間がかかるかもしれませんが、代替肉は将来当たり前の選択肢になると感じています。
また、その他のフードテック分野も非常に面白く、日本で行われている実験や技術も知らないことが多々あり勉強になりました!

食の未来の共創

Chapter9,10ではフードテックの事業創造や未来のビジョンについて書かれていました。

フードイノベーションを社会実装していくにあたり、企業の枠組みを超えた事業創造や人材育成システムが必要とありました。既存の仕組みを変え、新しいチャレンジをしやすい環境づくりが欠かせないのです。実際に日本でも、「スマートキッチンサミットジャパン」の開催や「フードラボ」の開業など「食の共創」が徐々に始まっており、イノベーションが生まれる場ができつつあるようです。

また、食は誰もが毎日関わり、一人一人が「自分ゴト化」して考えられる領域であり、自分のやりたいことを仕事にできる可能性が高い稀な業界です。実現したい未来を思い描き、未来を自ら創っていく「パッション」がアイデアを生む大事な原動力であり、世の中を創っていくとのことです。

最終章では2019年8月に開催された「スマートキッチンサミットジャパン」で著者らが創りたい食の未来として紹介した、以下の12個のフューチャービジョンが述べられています。

・”自らつくれること・つくること”を大事にする社会
・調理時間の価値最大化
・1回1回の食を大切に感じられる社会
・超バリアフリーダイニング
・食学・料理学のコアスキル化
・ニッチな食ニーズにも対応してくれる社会
・サイエンス&テクノロジーを通じた日本食文化・技の刷新、世界への発信
・食・料理を通じて孤独を減らす
・食・料理を通じた地域コミュニティーの復活
・食に関わる移動ゼロ化(究極の地産地消)
・自分ゴト化して働ける食産業
・「廃棄しない」が前提の食システム

スマートキッチンサミットの会場アンケートではいくつか偏りがあったもののこれらの全てのテーマに対し、参加者が興味を示したとのことです。
多様なフードテック領域とこれらのフューチャービジョンを結び付けることで新しい世界が実現されていく可能性を感じることができるだろうとのことです。

また最後にグローバル視点で見た日本の市場の可能性にも触れており、日本から発信すべきこととして、

・課題先進国としてのポジショニング
・大手食品業界に眠る技術力・人財
・和食が持つポテンシャルの最大化と開放
・食の価値の再定義の発信拠点

が挙げられていました。
今すぐに輸出できる類のものではないものの可能性のある視点とのことです。

感想
「共創」の考えに共感しました。日本の企業それぞれが持っている技術力の高さをお互い持ち寄ることで最大化し、共通のテーマを持ってイノベーションを生む姿勢こそ今求められているでしょう。実際に行うのは容易でないですが、個の利益追求に走らず世界全体を考え、長期的な視点でビジネスをしていかなければならないと感じました。そして、日本では著者らの働きかけにより食のイノベーションが起こる準備が整いつつあり、パッションとスピード感を持って実行に移していく姿勢に感銘を受けました。
また、この本で紹介されているフードテック領域とフューチャービジョン、日本が発信するべきことを掛け合わせることで、やりたいことかつポテンシャルを秘めた領域を見つけるカギになると感じ、今後も適宜読み返したいと感じました。
食は誰もが毎日関わるとても身近な存在であり、この先食の領域が生む新たな価値が人々の幸福度を上げることでしょう。しかし、そこに世界有数の食文化を持つ日本企業がいないのは寂しすぎます。この本にある世界のトレンドを踏まえ、より良い未来を創っていきたいと感じました。

まとめ

以上、
「フードテック革命 世界700兆円の新産業」
を読んだ感想でした!

興味深い最新のトレンドに関する内容ばかりで
食に関するビジネスをしている人や将来したいと思っている人はもちろん、
食や最新技術に興味がある人はぜひ読んでみることをおすすめします!

それでは今日も食を楽しみ、人生も地球も豊かにしていきましょう!


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