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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2018 Autumn Selection(10月15日〜11月30日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

深まりゆく秋の心象風景を思い描きながら、この季節特有の淡い感傷と共に感じられるサウダージやメランコリーを大切に、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に計34時間分を新たに選曲した。

金・土・日トワイライトタイムの特集は、9/7に惜しくも26歳の若さでこの世を去ったマック・ミラー(偶然にも前回のこのコラムで彼への共感の気持ちを綴ったばかりだった)の傑作と、彼と同時代を生きる2010年代のクラシックとして後世に聴き継がれていくだろうアーバン・ミュージック名作群を、丁寧に連ねてみた。僕なりのこのディケイドへの前向きなレクイエムとしても聴いていただけると思う。

推薦盤として24枚のジャケットを掲げたことからもわかるように、ニュー・アライヴァルも相変わらず大充実。ここひと月のNo.1愛聴盤を挙げるとしたらSandro Perri『In Another Life』となるが(次点はSunni Colon『Satin Psicodelic』かThe O'My's『Tomorrow』、もしくはNoname『Room 25』かな)、Jamie Isaacの素晴らしかった来日公演と一緒にDJをしたアフター・パーティーの余韻さめやらぬ今日この頃(来月のPuma Blueも楽しみ)、サウス・イースト・ロンドンからまた、その活況を象徴するようなヒーローが登場していることも特筆したい。彼の名はBarney Artist、ジャズ〜ソウル風味のヒップホップMCで、何よりも『Home Is Where The Art Is』というアルバム・タイトルを僕は気に入っている(ギル・スコット・ヘロンの名曲「Home Is Where The Hatred Is」を参照しているのだろう)。Dornikを迎えた先行公開曲「Rose Thorn」から注目していたが、以前から親交の深いサウス・イースト・ロンドン人脈ならではの、Tom MischとJordan Rakeiがそれぞれ“らしく”客演した「Lullaby」と「Merchants」も嬉しいトピック。

さらにBarney Artistは、追い打ちをかけるようにPS4のサッカー・ゲーム「FIFA 19」のサウンドトラックとして陽の目を見た、フィーチャリングのTom MischやLoyle Carnerも冴えまくりの「Good To Be Home」が最高すぎて、その配信音源をCD-Rに焼いてDJプレイすると「この曲は何ですか?」と問い合わせが殺到するほど。曲単位でこれに並ぶキラー・チューンを挙げるなら、共にまもなくのニュー・アルバムからの先行カットとなる、Phony Pplの「somethinG about your love.」とアンダーソン・パークがケンドリック・ラマーとタッグを組んだ「Tints」が双璧だ。本当に爽快なくらい最高すぎる。

※この文章は大変長文になっているため、続きは10/20に公開させていただきます(他の選曲家のセレクター・コメントを先にお読みください)。

Barney Artist『Home Is Where The Art Is』
Barney Artist feat. Tom Misch, Loyle Carner & Rebel Kleff「Good To Be Home」
Phony Ppl「somethinG about your love.」
Anderson .Paak feat. Kendrick Lamer「Tints」
Sandro Perri『In Another Life』
Sunni Colon『Satin Psicodelic』
Mac Ayres『Something To Feel』
Masego『Lady Lady』
The O'My's『Tomorrow』
Trey Graves『drft.』
Noname『Room 25』
Ivy Sole『Overgrown』
Leifur James『A Louder Silence』
Dayo Bello『360』
Rejoicer『Energy Dreams』
Mocky『A Day At United』

Yumi Zouma『EP III』
The Marias『Superclean, Vol.II』
Adrianne Lenker『abysskiss』
Kandace Springs『Indigo』
Gabriel Kahane『Book Of Travelers』
Stu Mindeman『Woven Threads』
Rubel『Casas』
Mahmundi『Para Dias Ruins』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
Twilight-time 月曜日16:00~18:00
Twilight-time 火曜日16:00~18:00
Twilight-time 水曜日16:00~18:00
Twilight-time 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

「usen for Cafe Apres-midi」では数年前に、アイルランドのインディー・フォーク・バンド、ヴィレジャーズの曲をよく秋頃に選んでいた記憶がある。ファースト・アルバム『Becoming A Jackal』(2010年)やセカンド・アルバム『Awayland』(2013年)、サード・アルバム『Darling Arithemetic』(2015年)から、テーマに合う好きな曲をセレクトしていた。正直ここしばらくは彼らの曲から遠ざかっていたが、今年の秋、4枚目となる新作『The Art Of Pretending To Swim』がリリースされたことをきっかけに、秋の空や陽射し、紅葉、落ち葉の並木道をイメージしながら、過去作も含め彼らの普遍的な魅力あふれる曲をあらためてじっくりと聴いて選んでみることにした。やはりこの季節はアコースティックなフォーキー・ナンバーがしっくりとくる。

Villagers『Becoming A Jackal』
Villagers『Awayland』
Villagers『Darling Arithemetic』
Villagers『The Art Of Pretending To Swim』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

シネマティック・オーケストラやボノボのフィーチャリング・ヴォーカリストとしても知られる黒人シンガー・ソングライターであるグレイ・レヴァレンドの声は、不思議と秋になると聴きたくなる。今から約1年前にセルフ・リリースされた『To Be Here』は、モーション・オーディオ〜ニンジャ・チューンというレーベルを離れたことであまり話題になっていないような気がするが、名作『Of The Days』や『A Hero's Lie』同様にピュアな輝きを放っている。本セレクションに選んだ「So Many Demons」もまた、ずっと昔から口ずさんできたような、どこか懐かしく暖かな一曲だ。

Grey Reverend『To Be Here』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00


添田和幸 Kazuyuki Soeta

21歳の若きシンガー/トラック・メイカー、Mac Ayresのニュー・アルバムが到着。少々野暮ったい服装とは裏腹に甘美で洗練されたR&Bを聴かせてくれます。時を同じくしてリリースされたMasegoやSunni Colonの新作と共に秋の夜をシルキー&メロウに紡いでみました。

Mac Ayres『Something To Feel』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

我々ネオアコ世代(ネオアコ、という呼称が未だ有効なのかは疑問だが)には懐かしい一枚。このコメントを書く前にレコード棚で20年ほど眠る彼女の12インチ・シングルに暫し目覚めてもらい、針をトレースさせた。ルシンダの清々しい歌声が部屋に響くと、眼前にはブリストルの秋。スコットランドの老舗オーディオ・メイカーLINNのプリ/パワー・アンプで増幅し、ブリティッシュ・モニターで名を馳せたHARBETHのブックシェルフから出力させるという、コテコテ英国主義の我が家のシステムから聴こえてくるのは、音楽(と自らのルーツ)へ誠実に向き合う彼女のひたむきさ。通奏低音のごとく終盤まで響き渡るストリングス、クラリネットの朴訥な音色が太陽に火照った身体に染み渡り、とても心地がよかった。気に入りのグラスで蒸留酒を少し、と思いつつ、気づけば朝陽が輝いていた。

Lucinda Sieger『Sunset Red』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

「usen for Cafe Apres-midi」の変遷を反芻する瞬間があり、5年くらい前の選曲が懐かしくなってしまった。いま聴いても新しさとかっこよさとポピュラリティーがちょうど良い。食欲の秋との相性も申し分なく、当時に想いを馳せながらの選曲は思いがけぬ発見と再評価の連続だった。たまには足を止めてみるのも悪くない。

Enrico Pieranunzi『Racconti Mediterranei』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

待望のEd Mottaの新作、期待裏切らないエヂ流AORにホッとしながらも、Tuxedoなどに通じるアーバン・ブギーもある意欲作。前作はジャズ・アプローチな楽曲が半分を占めていたが、今作は一貫してAOR解釈なので、2013年作『AOR』に回帰した感じが余計に嬉しい。5年以上来日していないので、本当にそろそろ来てほしいものです。前回来日ライヴの際、お土産で渡した六花亭バターサンドを自身のインスタグラムでアップする、お茶目さも忘れられないです(笑)。

Ed Motta『Criterion Of The Senses』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

今回ご紹介させていただくのはサウス・ロンドンのアンダーグラウンド・シーンでその実験的な作風から以前より注目されてきたTirzah(ティルザ)のデビュー作『Devotion』です。長年の友人でコラボレイターでもあるMicachu(ミカチュー)をプロデューサーに迎え、ざらっとした独特なテイストのプロダクションと彼女の中毒性のあるヴォーカルが光る快作となっています。今回の2018 Autumn Selectionでは、リフレインされるピアノに絡む彼女のウェットなヴォーカルが印象的な「Affection」をセレクトさせていただきましたが、興味のある方はアルバム全体を通して聴いてみてください。

Tirzah『Devotion』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

我が中古レコード屋LIVING STEREO。我がコーヒースタンドSTEREO COFFEE同様、韓国からのコーヒー/音楽好きのお客さんが、たくさん訪れてくれます。なので、メジャー/マイナー問わずいろいろな韓国の音楽のお話をたくさん聞けます。韓国のDJさんやインディーのミュージシャンにも訪れていただき、非常に興味深い音楽の聴き方や楽しみ方をいろいろ聞かせてもらったり。やはり日本の音楽では特にシティ・ポップは皆大好きで、「山下達郎さんありますか?」「オススメのシティ・ポップ教えてください」のどちらかから会話が始まる。そんなレコード屋にいる中、新作発掘よりも過去の音楽との出会いが増えました。その中でも、素晴らしい出逢いは、ドイツのRichard Schneider Jr.のセカンド・アルバム『Fata Morgana』。ファースト・アルバム『Dreamlike Land』の「Samba-Trip」は選曲に欠かせない楽曲でしたが、セカンドも進化したエレクトロ・フォーク・フュージョンで、心地よくかっこいい。そんなアルバム中「Regina's Dance」からスタート。そんなスタートをしてしまったので、どんどん新譜ではない晩秋名曲が並ぶことになりました。モダン・ソウルも哀愁ある7インチたちが金曜の夜に離れたくないソウルフルな金曜のミッドナイト。久々レコードに針を下ろした瞬間のミリミリ感も含め深い人肌寂しい夜選曲をお楽しみください。

Richard Schneider Jr.『Fata Morgana』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

今年は一年を通してAutumn Selectionに選曲したくなるような、色彩豊かで味わい深い素敵な音楽に数多く出会うことができました。実りの季節を祝福するかのように、今秋リリースされた作品も本当に素晴らしいものばかりで(Benny Sings『City Melody』や、Chilly Gonzales『Solo Piano III』、Jose James『Lean On Me』、11月にはMockyの新作が! と挙げたらきりがない)、「あぁ、Autumn Selectionの納品しめきりがあともう少し先だったら、この曲もあの曲も入れられたのになぁ・涙」と悔し涙を飲むほどでした。とにもかくにも、「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家として、そしていち音楽ファンとしても、この“豊作の秋”に胸躍らせずにはいられません。

高く澄んだ空と、黄金色に輝く美しい秋の風景をイメージしながら選曲作業をしていると、ときどきふと、爽やかな風が吹き抜ける高原で、新鮮な空気を胸いっぱい吸い込んでいるような、清々しい気分に満たされることがあります。そんな音楽が放つ清らかな空気や、移ろう季節の輝きを、「usen for Cafe Apres-midi」リスナーのみなさんと共有することができたら、セレクターとしてこれほど幸せなことはありません。

2018 Autumn Selection、オープニングを飾るのは、チリの国民的女性シンガー、Francesca Ancarolaが2013年に、カルロス・アギーレが主宰するレーベル、シャグラダ・メドラからリリースしたアルバム『Templanza』に収録されている「Lo Que Mas Me Gusta」。伸びやかで透き通るような彼女の歌声は、高く澄んだ秋の空をイメージさせます。爽快感あふれる一曲です。次にご紹介するのは、アメリカ出身のSSW、Josh Rouse「Start Up A Family」。柔らかなアコースティック・ギターとヒューマニティー溢れる男性ヴォーカル、穏やかな秋風を感じさせるハーモニカが心地よく響く、ドライヴ・ミュージックにもおすすめしたい好ナンバー。続いて、オーストラリアを拠点に活動する注目の若手SSW、Stella Donnellyのソロ・デビューEP『Thrush Metal』から「Mean To Me」をピックアップ。ノスタルジックな雰囲気をまとった、まろやかなエレクトリック・ギターの音色と、Stellaの甘く切ない歌声に胸がぎゅっと締めつけられます。彼女の歌声と同じように、キュートなジャケットにも恋してしまう最高に魅力的な一枚。味わい深いチェロの響きが心をゆったりと解きほぐしてくれる、ボブ・ディラン「You're Gonna Make Me Lonesome When You Go」のポルトガル語によるナイス・カヴァー、Arthur Nogueira「Vou Ficar Tao So Se Voce Se For」。シンプルなアコースティック・ギターの爪弾きと、どこか淋しげな口笛が印象的なFlavio Tris「In Silence」。この曲は、ミナス出身である彼が、同郷のブラジルを代表するアーティスト、セーザル・ラセルダのプロデュースのもと、2017年にリリースしたアルバム『Sol Velho Lua Nova』に収録されています。続いても同じくミナス出身のSSW、Andre Travassosのソロ・ユニット、The Moonsのデビュー作『Songs Of Wood And Fire(木と火の歌たち)』から「The Best Thoughts About You」をセレクトしました。こちらもジャケット、内容ともに最高な一枚で、2017年リリースの作品ですが、個人的には今年最もシビレたSSW作品のひとつです。甘くほろ苦いヴォーカルと、とろけるようなメロウ・アコースティック・サウンドが、これから迎える寒い季節にも心地よく馴染みます。今回は個人的に気に入っている作品をざっくりと選んでみました。なにか気になる作品があれば、ぜひ一度聴いてみてください!

Francesca Ancarola『Templanza』
Josh Rouse『The Happiness Waltz』
John Mayer『The Search For Everything』
Emma Frank『Ocean Av』
Flavio Tris『Sol Velho Lua Nova』
Stella Donnelly『Thrush Metal』
Iron And Wine & Ben Bridwell『Sing Into My Mouth』
The Moons『Songs Of Wood & Fire』
Big Red Machine『Big Red Machine』
Arthur Nogueira『Rei Ninguem』
Ady Suleiman『Memories』
Pip Millett「Love The Things You Do」
The Internet『Hive Mind』
Flamingosis『Pleasure Palette』
Brad Mehldau Trio『Seymour Reads The Constitution!』
Reginald Chapman『Prototype』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

Nonameの新譜『Room 25』が到着。相変わらずのメロウネスで1曲目の「Self」からやられてしまいました。彼女Noname(a.k.a. Fatimah Warner)のとてもユニークでサウンド的なラップが心地よく耳に残り、ファースト・ミックステープの『Telefone』同様、何度聴いても飽きのこない素晴らしい新鮮な内容です。今回はその「Self」と「Regal」を選曲しています。
Sam Wilkesは、Sam Gendelとの共作が6月に出たばかりですが、自分の名前がタイトルのファースト・アルバムも到着。Sam Gendel、Louis Cole、Brian Green、Christian Eumanら先鋭ミュージシャンと作り上げたサウンドはなんとも胸に突き刺さる現代的なスピリチュアル・ジャズ。選曲した「Tonight」はLouis Cole(彼の曲も今回何曲か選曲しました)のラウドなドラミングや、何と言ってもSam Gendelのブロウするサックスが素晴らしい。ラストの「Descending」も素晴らしいですが、これはクリスマス・シーズンにマッチしそうなので、次回に選曲しますのでどうぞお楽しみに。

Noname『Room 25』
Sam Wilkes『Wilkes』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

秋選曲は、僕自身がプライヴェイトでよく聴く音楽(サウドシズモを感じるSSW)が最もフィットする季節。そんなお気に入りのトラックから、はじめに紹介したいのは、最近の女性SSWの中で一番のお気に入りの唄声と称したいKina GrannisをフィーチャリングしたImaginary Futureの「I Will Spend My Whole Life Loving You」。即席のデュエットとは思えない一期一会を感じる美しいハーモニーが心に響く一曲です。続いて紹介するAlbin De La Simone の「Le Grand Amour」は、ピエール・バルーへの敬愛に溢れたその唄声と、叙情的ピアノの旋律と歌詞の響きが深く印象に残りました。SSWの新たな可能性を感じるS. Careyの最新作からは、緻密に計算されたギターのアルペジオに重なり合うサウンドが素晴らしかったタイトル・チューンの「Hundred Acres」を。アイルランド出身のSSWの注目株Fionn Reganの最高傑作と評したい5枚目のアルバム『The Meetings Of The Waters』からは、心温まるシンプルで和やかなメロディー・ラインの「Turn The Skies Of Blue On」と、対照的にアイルランド出身らしい陰影を感じる「Cormorant Bird」の2曲を選びました。他にもこの季節までキープしておいた心に響くSSW選曲をぜひお愉しみください。

Imaginary Future & Kina Grannis『All My Love』
Albin De La Simone『L'un De Nous』
S. Carey『Hundred Acres』
Fionn Regan『The Meetings Of The Waters』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

盛り上がる夜更けのパーティーを一人抜け出し、秋の夜風に吹かれて心地よい陶酔の中でゆらゆらと歩きながら歌うような「Grey Area」。NYのブルックリンからLAに移った夢想家ソングライターLucas Nahanによるドリーミーな逃避行。

Jerry Paper『Like A Baby』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

このコメント欄がリニューアルして以来アーカイヴとして残るということで、まずは前回書いたフェルトのレアなCD音源について書き忘れていたことがあったので補足情報を。
1987年にリリースされたコンピレイション盤『Gold Mine Trash』に収録された「Dismantled King Is Off The Throne」と「Sunlight Bathed The Golden Glow」は、1984年にBlanco Y Negro Recordsに提出されたデモ・ヴァージョンで収録。そして「Sunlight Bathed The Golden Glow」の女声コーラスを加えて全体に厚みを付けたシングル・ヴァージョンは、1993年にリリースされたCD4枚組の『Felt Box』以外に、2003年にリリースされたローレンス自身が選曲したコンピレイション盤『Stains On A Decade』にも収録されていました。

ということで気持ちがすっきりしたところで(笑)今回の選曲についてご説明いたしますと、まずはオースティンを拠点に活動するキャロライン・サリーのプロジェクト、キャロライン・セッズ(もちろんルー・リードの名曲からの引用ですね)の今年リリースされたセカンド・アルバム『No Fool Like An Old Fool』より、インディー・フィーリングでボサノヴァ・タッチな「I Tried」からスタートし、今回のセレクションの中で一番の掘り出し物アーティストだった、テネシー州ナッシュヴィル出身のダニエル・ヤングによるプロジェクト、ロンリー・ベンソンの今年4月にリリースされたセルフ・タイトルのファースト・アルバムより、こちらもクールなリム・ショットのリズムがボサノヴァ風のサウンドにマッチする「Silly Girl」に繋げました。続いて2011年にホノルルで結成された男女デュオ、タイガー・イン・ザ・スカイの儚く響くウクレレの音色がノスタルジックなメロディーに優しく溶ける「Oceans」や、先頃新作EP『Drift Away』をリリースしたオーストラリアのブリスベンで活躍するアーティスト、Jyeの2017年のデビュー・シングル「Beachy Girl」、カナダはキングストンを拠点にするKynan ForsbergとRob LaPlante によるオルタナ・エレクトロニック・ポップ・デュオ、テン・スリープの「Darkroom」、ゆったりとしたトロピカルなチルウェイヴ・サウンドを聴かせるアトランタはジョージア出身の3人組、ファンタジー・ガイの「Another Moon」などのソフトな響きの作品を紡ぐことで緩やかなうねりをセレクションの中に作り、そのうねりの中に爽やかな風を吹き込むScuba Dvalaの「君の豆男になりたいんだ」と歌われる意味不明なラヴ・ソング(笑)「Soy Boy」をブレンド。そして今回のセレクションの中で一番のお気に入りソングである前述したロンリー・ベンソンの「Peculiar Paradise」をここに配置しました。上昇するギターのカッティング・フレーズが心地よいこの作品の奥底に、仄かにパディ・マクアルーンの香りを感じます。このようなゆったりとした雰囲気のディナータイム前半のセレクションですが、他には前回の放送でピックアップしたシガレッツ・アフター・セックスの新曲「Crush」と同時に発表された「Sesame Syrup」や、オーストラリアはメルボルン出身のシンガー・ソングライター、ハリソン・ストームのセンティメンタルなアコースティック・ギターの弾き語りソング「Be Yourself」、ロサンゼルスを拠点に活動するベッドルーム・ポップ・デュオ 、ルビー・ハントのダークなシンセの響きに時折刻まれるピアノの音色が美しい「Sanctuary」などもセレクトしました。

そしてディナータイム後半は古きよきアメリカン・ポップスのテイストが漂う作品を中心に選んでみました。まずは前半の選曲にも取り入れたタイガー・イン・ザ・スカイの「These Days」をオープニングに、グラスゴーのインディー・ポップ・バンド、カメラ・オブスキュラのメンバーであるトレイシーアン・キャンベルがクライベイビーというバンドのダニー・コフランとコラボレイトして発表したアルバム『Tracyanne & Danny』より、リッチなストリングスの響きが美しい「It Can't Be Love Unless It Hurts」をセレクト。この素敵な作品をプロデュースしたのがエドウィン・コリンズっていうのも素晴らしいですね。それに続くのがニューヨークはブルックリンを拠点に活動するMatt Koenigのプロジェクト、ジ・アンダーカヴァー・ドリーム・ラヴァーズの「Come Home」。この作品はファルセット・ヴォイスが浮遊感のあるサウンドに優しく絡み、スロウモーションのように時が流れる夢見心地なダンス・ナンバーです。そして海外のメディアでも「柔らかな60sサウンド」と紹介されているカリフォルニアの男女デュオ、ケイプ・ウェザーの「Never Say」や、またしても現れた新たなブライアン・ウィルソン・チルドレン、スピリット・クラブの「You're So Mean」、リヴァプール出身のピッツァガールと名乗るベッドルーム・アーティストのソフトなトリップ感が得られるドリーミーな「Seabirds」、2014年にセルフ・タイトルのEPを発表して以来の新作EP『Anyone』を昨年発表したロンドン出身のアーティスト、スウィム・マウンテンのレイドバックな響きを放つ「All I Care About」などが秋の夜長の涼しげな風となって流れます。また、ヴィブラフォンのサウンドがクールに響くファンタジー・ガイの「Stomp The Yard」や、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のアーティストSunni Colonのスロウ・ダンサーな「Baby I Don't Mind」、ジョージア州アトランタを拠点にして活動している男女混成の5人組バンド、Lunar Vacationの昨年リリースされたEP『Swell』からのタイトル・トラック「Swell」なども清冽な水のようにすがすがしく秋の夜に溶け込みます。さらに北欧スウェーデンの首都ストックホルムを拠点に活動するシンガー・ソングライター Matilda Mård によるプロジェクト、メニー・ヴォイシズ・スピークの「Necessaries」や、ロンドンのポップ・ユニット、スティル・コナーズの最新作『Slow Air』から選んだ「Dreamlands」も夢見心地な作品で、トワイライトな雰囲気を醸しだす秋のセレクションにピッタリのナンバーだと思います。

そして今回のミッドナイト・スペシャルは70年代を中心としたシンガー・ソングライターを特集して2時間の枠を組んでみましたが、前半を「アメリカ編」、後半を「イギリス編」として、それぞれ1時間ずつのセレクションにトライしてみました。
まずは「アメリカ編」から、オープニングにデヴィッド・ボウイにも影響を与えた(『Hunky Dory』で「Fill Your Heart」という作品をカヴァー)ピアニスト兼ボードヴィリアンのビフ・ローズが1970年にリリースしたサード・アルバム『Biff Rose』から、オープニング・ナンバーの「All The Fondest Whishes」を選び、続いて柔らかなピアノの音色に溶け込むトライアングルの響きが心の中を優しい風のように舞うランディ・エデルマン1974年の大名曲「Bluebird」から、70年代から数多くのアーティストに作品を提供し、ヒットを放ってきたシンガー・ソングライターのトム・スノウが在籍していたカントリーというバンドの1971年に発表された唯一作『Country』収録の「Aragon Ballroom」、サバービア・ファンにはお馴染みのセルジオ・メンデス&ザ・ブラジル '66でリード・ヴォーカルを務め、ハーブ・アルパートの妻としての顔を持つラニ・ホールのファースト・ソロ・アルバム『Sun Down Lady』収録曲「Sun Down」の原曲である、メロウなヴィブラフォンの響きが美しくも儚いウィリス・アラン・ラムゼイ奇跡の一曲「Muskrat Candlelight」、アコースティック・ギターの繊細な爪弾きにスティール・ギターの深遠な響きがソフトにマッチするリオ・グランデの「Me And My Wife」、以前このコメント欄で紹介したフリッパーズ・ギター「Groove Tube」のBメロの元ネタとなったゴードン・マイケルズのプレAORな名曲「This Is Love」と繋げ、さらにオレゴン州ポートランドのフォーク・デュオ、ゲイリー・オーガンとビル・ラムが1972年にリリースした唯一作『Portland』より、バックでさりげなく響くエレピのメロディーや美しいストリングスのアンサンブルが素晴らしい「Our Sweet Love」や、昔からクリストファー・クロスが1981年に発表して世界中で大ヒットした「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」こと「Arthur's Theme (Best That You Can Do) 」の下敷きになった作品ではないかと思っているフランク・ウェバーの1971年のデビュー・アルバム『...As The Time Flies』の1曲目を飾るミドル・テンポの美しいバラード「’71」、2000年に日本で初めてCD化されたトニー・コジネク幻の未発表アルバム『Almost Pretty』より、多重コーラスも素晴らしい「The Song We Long」、フリー・ソウル・ファンには「High Tide」でお馴染みのフォーク・デュオBatteauxの片割れ、デヴィッド・バトウが1976年に発表し、カート・べッチャーのカリフォルニアにもカヴァーされた南国系メロウ・ソング「Happy In Hollywood」、そしてこちらも穏やかなスティール・パンの響きが心を南国へと運んでくれる、シンガー・ソングライター期のディオンが1971年に発表した「Sunniland」などもセレクト。妻のシンシア・ウェイルと組んで50年代末から数多くの名曲を世に送り出した、ブリル・ビルディング・サウンドを代表するシンガー・ソングライター、バリー・マンの1975年発表の名盤『Survivor』より、エヴァーグリーンな輝きを放つ「Taking The Long Way Home」、ピアノ系シンガー・ソングライターのビリー・マーニットのソロとしてのデビュー作品である『Special Delivery』より、都会的なセンスが光るタイトル曲「Special Delivery」、ケニー・ランキン「In The Name Of Love」の共作者としても知られるエステル・レヴィットの唯一のソロ作品『Isn't It Lonely Together』から「Lonely Together」などをピックアップ。エステル・レヴィットの作品はコーネル・デュプリーやデヴィッド・スピノザといったニューヨークのトップ・ミュージシャンが参加しただけあってバックの演奏は洗練されているのですが、彼女の歌声がとても素朴でそのコントラストも素敵ですね。次にセレクトしたアーティスト、ペイジ・クレールの唯一のアルバムはソフト・ロックのジャンルで語られるかもしれませんが、その中から選んだランディ・エデルマン作のメロウでドリーミーな「Sunny Day」は切なくも心を穏やかにしてくれる作品です(ランディ・エデルマンのオリジナル・ヴァージョンも素晴らしいので、こちらもお薦めです)。そしてママス&パパスの「Do You Wanna Dance」はこのボビー・フリーマン曲のカヴァー作品の中でも特に好きなナンバーで、この作品を聴くたびに青春時代のよき思い出がフラッシュバックする素敵なナンバーです。さらに「アメリカ編」のラスト・バッターに選んだジョン・セバスチャンのソフトなソウル・フィーリング漂う「Give Us A Break」も郷愁感を誘う胸キュン・ナンバーで、イントロの蝋燭の炎のように柔らかく揺らぐギターとエレピの音色を聴くだけで、心の柔らかい部分がソフトに刺激されます。

続くミッドナイト・スペシャル後半の「イギリス編」、まずはトニー・ハルマンとマイク・ローソンが結成したデュオ、イーヴンソングの73年にUKフィリップスからリリースされた唯一のアルバム『Evensong』より、英国らしい湿った香りの控えめなストリング・アレンジやオーボエの響きが素晴らしい木もれ陽系フォーク・ロック「Dodos And Dinosaurs」から始まり、こちらもスティーヴ・ホールとチャス・スワードの二人からなるフォーク・デュオ、リッチモンドの1973年にリリースされた唯一作『Frightened』より、バックに流れるフレンチ・ホルンの響きや、こちらも控えめなストリング・アレンジが聴き手の心に木もれ陽をもたらす「Soon You'll Find Out」、世界で初めて飛行機で大西洋横断した女性パイロット、アメリア・エアハートに捧げられたフェアポート・コンヴェンションの初代ヴォーカリスト、イアン・マシューズが元リヴァプール・シーン~グリムスのアンディ・ロバーツらと結成したプレインソングの1972年作『In Search Of Amelia Earhart』より、ウエスト・コーストに思いを馳せる柔らかで心温まるハーモニーが切なく響く「For The Second Time」をセレクト。それに続き、ポスト・エルトン・ジョンとしてデビューした英国のピアノ・マンであるフィリップ・グッドハンド・テイトの作品をハートウォームにカヴァーした英国ブリストルのフォーク・シンガー、AJ・ウェバーの「Oceans Away」や、セカンド・アルバム『People’s Peaple』がブリティッシュ・スワンプの名盤として語られるアンドウェラの中心人物であるデヴィッド・ルイスが1970年に制作したデモ作品集『Songs Of David Lewis』より、ピアノの弾き語りで紡がれる叙情的なメロディーが心を打つ「Everlasting Love」、今ではイギリスの国民的歌手となったバーバラ・ディクソンがトラッド・シンガー時代の1971年にリリカルにカヴァーしたリンディスファーン(というよりアラン・ハル)の名曲「Winter Song」、そしてフィリップ・グッドハンド・テイトの傑作サード・アルバム『Songfall』の冒頭を飾る「Moon」など、心に染み渡る繊細なピアノ作品を続けてセレクトしてみました。さらにロンドン出身のシンガー・ソングライター、リチャード・ディガンスが、ソロ・デビュー前に名門トレイラー・レーベルから発表したトリオ編成のグループPiscesの唯一作より、ハーモニーの美しい田園系フォーク・サウンドの「Midsummer Symphony」や、ギャラガー&ライルのファーストから、リリース当時はなぜかアメリカ盤ではオミットされてしまった心温まる名曲「Desiderata」、コンセプチュアル・アルバムのためプログレッシヴ・ロック・ファンからも支持を得ているアンディ・ロバーツの名作セカンド・アルバム『Nina And The Dream Tree』より、厳かなゴスペルの要素も含む「Keep My Children Warm」など、ここでも英国独特の憂いを感じる作品をチョイスし、英国のフォーク系女性シンガー、クレア・ハミルのセカンド『October』から選んだ透明感のあるヴォーカルと時折見せる陰りの部分がミスティックに響く「Island」に繋げてみました。その『October』の裏ジャケットなんですが、これがとても素敵な写真が使われているんですね。それは少女(クレア・ハミル)が草原で手を広げてはしゃいでいるスナップショットなんですが、これが秋の風景(October)の中っていうのも素晴らしく、この1枚の写真が今回の「英国編」セレクションにピッタリのイメージだと思います(笑)。そして男性二人に女性一人からなるフォーク・グループ、プレリュードのたおやかなパストラル・サウンドが優しく揺れる「Amsterdam」や、プライヴェイト・プレスの名盤として語り継がれるウォーター・イントゥ・ワイン・バンドの『Harvest Time』より、柔らかなグロッケンシュピールの音色が心を静かに落ち着かせる「Wedding Song」をピックアップし、リチャード・トンプソンやサンディ・デニーの客演も特筆すべきイアン・マシューズのファースト・ソロ・アルバム『If You Saw Thro’ My Eyes』からは、ころころ駆けめぐる可愛らしいピアノのフレーズも魅力的な「Never Ending」を選び、木もれ陽フォークの代表的なバンドであるヘロンが好きな人にもお薦めできる、ロン・ポール・モーリンとルーク・P・ウィルソンの二人からなる英国のフォーク・デュオが1972年に発表した唯一作『Peaceful Company』より、リリカルなアコースティック・ギターの調べにソフト・タッチなエレピの音色が優しく溶け込む「Mexico」をチョイスして、叙情的でどこか陰りのある70年代シンガー・ソングライター「英国編」のセレクションも終幕へと向かいます。最後は大好きなロニー・レインの1979年発表の4作目のソロ・アルバム『See Me』から、盟友エリック・クラプトンとの共演でしなやかにしっとりと聴かせてくれる「Barcelona」を選んでみましたが、この切なくて美しい作品を聴くたびに、多くの人に愛されたロニー・レインの屈託のない笑顔が心に浮かびます。

Caroline Says『No Fool Like An Old Fool』
Lonely Benson『Lonely Benson』
Tigers In The Sky『Lagoons』
Ten Sleep『Suburban Lore』
Jye「Beachy Girl」
Fantasy Guys『Surfin' On A Wave Of Juice』
Tracyanne & Danny『Tracyanne & Danny』
The Undercover Dream Lovers『In Real Time』
Cape Weather「Never Say」
Pizzagirl「Seabirds」
Randy Edelman『Prime Cuts』
Gordon Michaels『Stargazer』
Billy Mernit『Special Delivery』
Estelle Levitt『Isn't It Lonely Together』
John Sebastian『Faithful Virtue: The Reprise Recordings』
Phillip Goodhand-Tait『Songfall』
Andy Roberts『Nina And The Dream Tree』
Water Into Wine Band『Harvest Time』
Ron Paul Morin & Luke P. Wilson『Peaceful Company』
Ronnie Lane『See Me』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

深まる秋色を味わう暇なく訪れた大型台風。全国各地に猛威をふるいました。被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。そんな状況で音楽を聴く余裕もないかもしれませんが、少しでも心を慰撫するような存在になればと思います。さて現在、僕は11月にリリースするQuiet Cornerの新作コンピレイションCDの制作進行中ということで、担当ディレクターと日々、連絡のやりとりをしています。今作のコンセプトは“Small Town Talk~Folky Music”ということで、とっておきのシンガー・ソングライターたちの名作を集めた一枚になりそうです。今回の「usen for Cafe Apres-midi」の選曲も、それの拡大版といった内容です。届けられたばかりのアイアン&ワインのEP『Weed Garden』からの、軽やかな秋風のようなフォーキー・ナンバー「Waves Of Galveston」を筆頭に、心地よいラインナップになったと思います。心地よい秋のランチ~ティータイムのBGMとしてお楽しみください。

Iron & Wine『Weed Garden』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

木々が色づきはじめ葉を落としてゆくこの季節、秋の午後の陽射しのように時が穏やかに流れるさまを感じるような楽曲を集め、Autumn Selectionとして連ねてみました。では今回も選曲の流れに沿って、ポイントとなった作品を8枚に絞ってご紹介します。
ヴィブラフォンが奏でうる可能なかぎりの音表現を駆使したMasayoshi Fujitaの『Book Of Life』は、森のざわめきや目に見えないものの気配をうかがわせるような何か特別の次元へと引きこまれる音楽。
夢から醒めたときのような柔らかく甘やかなアンビエンスに包まれるGia Margaretの『There's Always Glimmer』は、ほのかな憂いに包まれるアンサンブルもファンタジックなSSW作品。
清水靖晃をサンプリングするセンスにも惹かれたオリンピアのThe Washboard Absの『Lowlight Visions』は、エレクトロニクスとフォーキー・ポップが織りなす優れたサウンド・アートのよう。
1974年のトルコ産アシッド・フォークの傑作、Bulent Ortacgil『Benimle Oynar Misin』は、その優しく広がるメロディーが遠い異国の地への憧憬を誘い、この季節いつまでもリピートしていたくなる。
まるで映画のような奥行きさえ感じさせるBlood Orangeの新作『Negro Swan』は、胸を柔らかくしめつけるひりっとした感触のアンビエント・ソウルに今回も魅了される。
1976年の激レア・プライヴェイト・プレス名盤、Chuck Senrick『Dreamin'』は、前クールで取り上げたJeff Phelps同様に秋に聴きたいリズム・ボックス系密室メロウ・AOR。
淡い色彩が混ざり合い溶けだしてゆくような絶品のベッドルーム・ソフト・サイケを奏でるSun Driftのデビュー・フル・アルバム『Dumbo』は、彼のマジカルなポップ・センスに惹きつけられる好盤。
1970年代後半、当時大学生のWarren Sampsonがロンドン留学中に出会った范寛「谿山行旅図」(ジャケにあしらわれた作品)にインスパイアを受け制作されたという1987年のアンビエント作品『Traveller』がリイシュー。この80sアンビエントの感覚が今の気分に心地よく沁みてしまう僕にとって、このジャケはもしかしたら発売当時アール・ヴィヴァンで出会っていたかも? とあの時代を懐かしく思いめぐらすような作品。
というところで、今回のセレクションも楽しんでいただけたらと思います!

Masayoshi Fujita『Book Of Life』
Gia Margaret『There's Always Glimmer』
The Washboard Abs『Lowlight Visions』
Bulent Ortacgil『Benimle Oynar Misin』
Blood Orange『Negro Swan』
Chuck Senrick『Dreamin'』
Sun Drift『Dumbo』
Warren Sampson『Traveller』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

9月も半ばを過ぎると、空気が秋色のそれに変わってきますね。湿度や朝晩の気温が下がってくると、カーディガンなどの羽織りものに自然と手が伸びるようになり、そうすると秋物の服が欲しくなってきたりします。最近はスポーティーなタイプの服に目が行くことが多いのですが、今季はラルフローレンの復刻されたアウトドアパーカを購入しました。これを着て早く街を歩きたいと思っているこの頃です。

さて、今回もセレクションの聴きどころをご紹介します。12時台前半は、クラシカルな雰囲気から70年代のSSWものを中心にゆったりとスタート。冒頭に置いたグレン・グールドのブラームスの間奏曲Op.117-1は、正午のクラシックというアイディアが浮かぶきっかけとなった曲です。ただ、この曲はやっぱり秋にこそ聴きたいというわけで、今回念願かなって皆さまにお届けすることができました。ちょうど上手いタイミングでリリースされたゴンザレスの『Solo Piano』シリーズ最新作の曲へとつなげたのですが、予想以上のハマりぐあいに自画自賛しております(笑)。

セレクションはホセ・ジェイムスのビル・ウィザース・トリビュート作から、レイラ・ハサウェイを迎えたハイライト・トラック「Lovely Day」でシフト・チェンジ。成長を感じさせつつ変わらず素晴らしい世界を見せてくれたNonameや、ルイス・コールなど新譜からの曲を経て、秋風のような爽やかさのオリヴァー・ネルソンによる名モード・ジャズ・ワルツや、ドワイト・トリブルを迎えたゴンドワナ・オーケストラのファラオ・サンダース・カヴァーEPからのナンバーなど、心地よさの中にスピリチュアリティーの滲むような時間帯を演出してみました。

秋の深まりとともに人肌の温もりが恋しくなりますが、13時台の後半はそんな季節を意識し、新旧取り混ぜたR&B祭りという感じです。キャンディス・スプリングスの新作『Indigo』はカリーム・リギンスが全面的に参加、前作よりもシックで陰影のある仕上がりでこのシーズンにぴったりです。アルバム通じて充実していますが、その中からスタイリスティックスの「People Make The World Go ‘Round」カヴァーを選びました。

秋といえばニューヨーク、ニューヨークといえばニューヨーカー、ニューヨーカーといえばウディ・アレンとポール・サイモン、という思考回路が学生の頃からできあがっていて(人間というのは歳をとっても変わらないものですね・笑)、毎年Autumn Selectionにはそういうセクションを入れています。街や公園を散歩していて、ふと入ったカフェやブックストアでこんな曲が流れていたらいいなというイメージで、14時からの時間を構成しました。ゲイリー・マークスにティム・バックリー、ブラッド・メルドーとベン・シドランなど、深みの中に軽やかさを織り交ぜたという形容が似合うようなセレクションになったと思うので、「usen for Cafe Apres-midi」の原点に立ち返りシアワセな午後のコーヒータイムをお過ごしください。

2000年以降のシティ・ミュージック・フィーリングを感じさせる、ベニー・シングスやエヂ・モッタなどのあとは、15時過ぎのスペシャルなひととき。キーワードは静謐さや穏やかさ。心をゆっくりと慰撫し、調律してくれるような音楽たちです。ラストに置いた「Long Hard Climb」は旅路の果ての終着点、という感じでしょうか。初めてこの曲を知ったマリア・マルダー版ももちろんファイヴァリットですが、男のロマンを感じさせるロン・デイヴィスのヴァージョンは僕にとっては特別なものです。そして再びのクラシック、スクリャービンのプレリュードでセレクションは幕を閉じます。ちなみにこの曲は、ビル・エヴァンスのクラシックをテーマにしたアルバム『Bill Evans Trio With Symphony Orchestra』の「Prelude」のモティーフとなった美しい小品です。秋の味覚さながら、さまざまな味わいがぎゅっと詰まった秋のセレクションをお楽しみください。

Glenn Gould『Brahms - 10 Intermezzi For Piano』
Jose James『Lean On Me』
Noname『Room 25』
The Gondwana Orchestra feat. Dwight Trible『Colors』
Kandace Springs『Indigo』
Benny Sings『City Melody』
Brad Mehldau Trio『Anything Goes』
Ron Davies『U.F.O.』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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