性の牽引法則

ヴァイニンガーのいうような、男性的要素と女性的要素の公式が成り立つと言うなら、なぜわたしはあのひとと結ばれなかったか。わたしだけでなく、だれもが身を焦がすような恋をしたことがあると思うのだが、自分が異常行動をしてしまうほどの恋なのに、それほど惹き付けられる相手なのに、相手はびくともしないことがある。その惹き付けられ方がもし公式によるものなのであれば、公式によって証明されようとも結ばれないというのなら、相手はまさにタイミングが合わなかったとしかいいようがない。公式通りにいけば、相手も自分と同じような思いをするはずだが、そうなるタイミングではなかったというだけなのである。細胞レベルで定まっていることを否定するものといえば、理性である。相手にはもう既に先約があったのかもしれないし、理性によって頑なに自身を守ろうとしていたのかもしれない。細胞レベルで決まっているなら、なぜそんな理性ごときに邪魔されなければならないのか。それは、理性とともにある愛の仕事なのか。愛するという技術が備わっていたので、もしくは愛するという技術を身につけるための修行中なので、その壁を壊すことができなかったのだろうか。理性が邪魔だというのを初めて感じる。

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