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電車内のすれ違い 7

今日も、アーシュラ・K・ル=グウィン『文体の舵をとれ』を読んで、文章の練習。

〈2〉薄氷
あえて読者に対する明確な目印なく、視点人物のPOV(point of view)を数回切り替えながら書く。三人称限定視点だけを使っているようでいて、潜入型の作者になりがち。

梅雨の晴れ間の、蒸し暑い日のことだ。電車は座れない客がいるほどには混みあっている。外は真夏の陽気、車内は冷房がほどよくきいていて、多くの乗客は電車が停車し、ドアが開いて、むうっとした空気が入ってくる毎に億劫そうな視線を外に向ける。ある駅で女が一人発車間際に、駆け込んできた。ふうふうと赤い顔をして荒い息をしている。女が間に合って良かったと思っていると、後ろから体当たりでもするかのように、女子高校生が駆け込み乗車をしてきた。女子高校生は邪魔なところに立っていた女を睨みつけ、苛立たしげに反対側のドア付近に立った。それからすぐにスマホを取り出して、SNSを開いて今の腹立ちをぶちまける。女はぶつかりそうになった女子高校生に、ため息をひとつついた。冷房のきいた心地よい車内の空気に身を任せ、窓の外を見ながら、まぶたが次第に重く、体から力が抜けていくのを感じた。次の瞬間、どんとトートバッグが肩から床へ滑り落ち、女は目を覚ました。トートバッグの中の細々した荷物が散乱している。女を含め乗客の多くが、その荷物の惨状に注目した。女は慌てて揺れる電車の中で、荷物をかき集めようとするが、はかばかしくない。立っている客を縫うように手を伸ばし、ぺこぺこと頭を下げてあっちへこっちへする荷物を追いかける。他の客たちは、手持ち無沙汰に女の焦る姿を見ているだけだ。気の毒だと思ったり、しっかりしろよと思ったりするが、多くの目がある中で、率先して助けてやる勇気があるものはいなかった。そうこうしているうちにも、電車は次の駅に近づき、電車が減速し始める。座席にいた男も、女がトートバッグを落として、懸命に集めている様子を人越しに見ていたが、わざわざ席を立つ気にはなれなかった。やがて女は無事立ち上がった。荷物は回収できたようだ。男はほっとして、停車した電車から降りる客の流れに乗って、出口へと進む。ふと足元に小さな筆箱が落ちているのに気づいた。どうやら、女の落し物の一つらしいと、見当をつけ、腰をかがめて拾い女に差し出す。女はびっくりした顔をしたが、すぐにまたぺこぺこと頭を下げて、受け取った。男はひとつ頷き電車を後にした。

*

潜入型の作者にならないように、三人称限定視点。なのに、視点人物がコロコロ変わる。

できてない感、満載。

今日で、電車のお話は終わり。やっと終わり。お付き合いくださって、ありがとうございました。終わりー!

【余談】

毎日暑くて死ぬる思い。軽い熱中症になりつつも、頑張るしかない。今日も今日とて暑い予報。

昨日の夕方、1時間で制服(仕事着)が乾いたのには驚いた。暑いなぁ。。。

#文体練習 #文 #小説 #文体の舵をとれ #ルグウィン #毎日note #毎日更新 #やってみた  

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