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ジョン”ザ・ヴァンパイア”ハンター

ロンドン、レスタースクウェアにその屋敷はあった。
出入口は二つ。
表通りに面したドアは、生きた患者や客のため。
裏通りに面したドアは、解剖教室で使う死体のため。

その夜、すっかり白くなった髪を撫で付け、ジョン・ハンターは、裏通りのドアから現れた。
間を空けず黒塗りの四輪馬車が目の前に止まり、ジョンは滑るように乗り込む。

「動いたか」
「ええ、先生の仰る通り見張りを付けて正解でした。チャールズ・バーンは吸血鬼です。いつからかは分かりませんが」
ジョンの問いに固太りの男、エドワード・ジェンナーが答える。
「ロンドンを出るつもりらしく、棺桶に隠れて移動中です」
「呵々、あの巨体が入る棺桶をよく見つけたものだ」
車窓に流れるロンドンの夜景を眺め、ジョンは寂しく微笑む。
「奴らも焦っているのさ。早晩ロンドンに奴らの居場所はなくなる。全ては君が作ったヴァンパイア・ワクチンのおかげだな。いやはや、天然痘ワクチンに混ぜ込むとは。若い者の発想は素晴らしい」
「先生のご協力があればこそです。今はまだロンドンの一部ですが、いずれは大英帝国全土、いえ世界中へ」
「ああ。血を吸う相手がどこにもいなくなれば、奴らも滅びるしかあるまいよ。だが今はまだ」

両手にメスを構え、体中にメスと注射器を仕込んだジョンが馬車を降りる。

「ええ、今はまだ」

両手にカービン銃を構え、体中にカービン銃と杭打ち機をくくりつけたエドワードが馬車を降りる。

「ヴァンパイア・ハンターの仕事が必要だ。やれ」

Blam!Blam!Blam!Blam!Blam!Blam!

無人の港へ現れた巨大な棺は、それを担ぐ男たち諸共にエドワードの銀弾に撃ち抜かれた。

棺を担いでいた男たちは沈黙。
だが、巨大棺は内側から爆発。8フィートを超える巨漢が姿を現した。
「クソっ!何だ!?」
「困るな、ミスター・バーン。私が欲しいのは君の死体なんだ」
一瞬で間合いに踏み込んだジョンの、両手のメスが閃いた。

†††続く†††

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