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世紀末茶伝ケンチャロウ

199X年!世界は核の炎に包まれた!海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えた。だが、イギリス人は死滅していなかった!

「ヒャッハー!紅茶だ紅茶だー!」
「見ろ!スコーンもあるぜ!」
袖無しトゲ肩パッド付きスーツを着たモヒカン英国紳士集団が、村の食糧庫を漁り、ペットボトル紅茶や真空パックスコーンを根こそぎ奪っていく。
「やめてくだされ!それを持っていかれては村のティータイムが!」
「うるせージジイ!」
「アバーッ!」
モヒカン英国紳士が村長を殴り飛ばす!
だがブリテン島の荒野にそれを止める法は最早ない!
「今は暴力が支配する時代なんだ!」
「まったくいい時代になったもんだな!ぎゃーはっはっは!」
「おじいちゃーん!」
倒れた村長に駆け寄る少女!アブナイ!
「なんだあ、このガキ!そこをどけ!」
振り下ろされる無慈悲な拳!
「グワーッ!」
だが倒れたのはモヒカンの方だ!一体何が!?
「な、なんだテメエ…」
モヒカンBが狼狽える。
モヒカンAを殴り飛ばしたのは筋骨隆々のアジア人だ!
「俺の名はケンチャロウ。たまたまこの村に滞在していた旅人だが余所者の俺を迎え入れてくれた村人には一宿一飯の恩があるしこんな時代に優しい心を失わずに生きている村長の孫娘に心が洗われたというエピソードもあるから、お前らは全員殺す」
男は一息にそう言うと、ペットボトル飲料で喉を潤す。だがそれは紅茶ではない。その色は…緑!
「な、なんだありゃあ!紅茶じゃねえぞ!あんな色の茶は見たことがねえ!」
「何だろうと構うもんか!やっちまえ!」
「「うおおおお!」」
一斉に棘ステッキや棘アンブレラで襲いかかるモヒカン英国紳士集団!
だが!
「オチャチャチャチャチャ!オチャチャチャチャチャ!オチャー!」
旅の男の目にも止まらぬ連続攻撃!
だが全モヒカン無傷!
「…?なんだ?なんともねえ…え、う、ウバーッ!!」
モヒカンB破裂!
「秘孔を突いた。お前らはもう死んでいる」
「そ、そんな…セイロンッ!!」
「ア、アアーッ!アールグレイッ!!」
「アッサムッ!!」
攻撃を受けた全モヒカンが断末魔とともに次々と破裂!
「な、あ、あれはまさか!」
「知っているのかジャック!」

聞いたことがある。
俺たちが毎日ティータイムに飲んでいる紅茶は実は茶葉を発酵させたもので、遠くアジアの地では発酵させる前の茶葉で茶を淹れるらしい。そして、そうやって淹れた茶は鮮やかな緑色になるとか。
ヤツの飲んでいたものはその緑茶に違いない!

「え!?秘孔は!?」
「分からん何あれ怖い!」
「オチャッ!オチャーッ!」
「う、うわ、い、嫌だ!俺、俺…オレンジペコッ!」
「スーチョンッ!」
雑談モヒカンコンビ爆散!

「これで全員だな」
「ありがとうございました!ああ、でも」
曇る少女の笑顔。
「どうした?」
「あいつらは雑魚でボスはすごく強いのでこのままでは村のティータイムは」
「任せておけ」
ケンチャロウは激しい戦いで乾いた喉を緑茶で潤し出立した。
村の平穏は守られるのか。ミルクティーは牛乳と紅茶のどちらを先に入れるべきなのか。
戦え!ケンチャロウ!

【続かない】

#小説 #紅茶のある風景 #世紀末 #モヒカン

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