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実家で土星を見る話

「じいちゃんが倒れた!?」
『今朝畑で倒れてるのを南部のおじちゃんが見つけてくれてね。あんたも知ってるでしょ南部のおじちゃん毎朝ミニミちゃんの散歩で』
「いや知らんよ!それよりじいちゃんは!?」
『しばらく入院だって』
「なんだ生きてんじゃないのビックリしたあ」
『人騒がせよねえ。あ、そうそう先生が言うにはね、夏は越せないだろうって』
「は?」
は?
何言ってんだ我が母は。じいちゃんがもうすぐ死ぬ?
あの、毎日畑仕事して昼から酒飲んで常に煙草吸って、親に怒られるような遊びをたくさんしてくれたあのじいちゃんが?
「え、ああ…うん…帰るよ。…大丈夫夏休みだから。…うん。…じゃ、また」

ベランダに出て夜空を見上げる。
東京の大学に進学してから2年と少し。そういえばその間一度も実家に帰っていない。

「見えるわけないか」
部屋に戻って荷造りを始める。
じいちゃんが生きてるうちに帰れるだろうか。

タイタンの実家まで、残り約15億km

【続く】

#逆噴射プラクティス #逆噴射小説大賞 #SF

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