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「その絵の前に、立ってみる」ことの重要性。/展覧会『岡本太郎』感想ーArtとTalk㉕ー

皆さまこんにちは、宇佐江です。


今回は、先日鑑賞した「展覧会 岡本太郎」(愛知県美術館)の感想をお話したいと思います。
久しぶりのArtとTalkなので始めにお伝えしますが、私のnoteに書かれた内容は勤務先やその他施設とは一切関係なく、宇佐江みつこ個人の意見や感想です。
その点をご理解の上、先の文章もよろしければお付き合いください。

それでは参りましょう~!

岡本太郎、はじめまして。

愛知県美術館で3月14日(火)まで開催中の「展覧会 岡本太郎」。大阪、東京と巡回した大型展が地元にも来たのでずっと楽しみにしていました。

「岡本太郎」という名は、ふだん美術に関心がないという方でも一度は耳にしたことがあるであろう、超が3つ付くほどのビッグネーム。特に日本人には、彼のエネルギッシュな作風や強烈な人物像が印象的ではないでしょうか。

しかし、ですよ。

実は私、今回が、「美術館で岡本太郎の企画展を観る」初体験だったのです。大阪万博の象徴《太陽の塔》は昔、美大の研修旅行で訪れたことがあるのですが、それ以外はあまり自分の目で実物を見た記憶がありません。

今展は2011年に東京国立近代美術館で開催された展示以来の回顧展だそうですが、これほど有名な芸術家でも(巡回スタートが去年なので)約11年ぶりの企画展なのかと思うと、やはり巡りあわせって大事。観たいと思う展示は「そのときに」観ないと次いつ出会えるかわからないのだなあと、あらためて感じました。


太郎のことば、太郎のすべて

岡本太郎は10代の頃から類まれな才能を感じさせる作品を描き、その後東京美術学校(現在の東京藝術大学)に進学しますが、約半年でやめています。そして18歳で渡欧し、最先端芸術に触れようと多くの日本人画家がひしめいていた、1930年代のパリで10年を過ごします。

若き日の太郎の絵にはまだ人間が人間らしいフォルムを保った描写も多くみられますが、私が特に印象深かったのは、太郎の描く「腕」です。特殊な描き方というわけではないのですが、なぜかどの絵でも力強く、人物の腕がまるでなにかの力を宿したような存在感を放って見えました。《傷ましき腕》などは、その象徴的な作品です。

ピカソと出会い、自分の進むべき道を悟った太郎のまさに爆発するような作品群がダイナミックに展開していく中盤、私は順路をすすみながら、ある確信にとらわれていました。

その絵の前に、自分が立つことの重要性。

実物こそほとんど見たことがないものの、岡本太郎の絵は教科書やテレビなど何らかの媒体でこれまで目にする機会は(私だけでなくおそらく皆様も)あり、自分のなかで漠然とした「こういう絵」のイメージはありました。

けれど、果たして今、自分が相対しているこの作品を映像や画像で目にしたときにも私はこれほどまで衝撃を受けるだろうか。圧倒されるだろうか。

たぶんない。「なんかすごい絵だなあ」で終わる。

描かれているものが何かよくわからず、愛らしいキャラクター的魅力と劇画のような激しさとのミスマッチを表層的に「おもしろいな」と思う程度しか、受け取ることができないだろう。

実物の前に立つと、キャンバスの大きさ、絵の具の厚み、色の鮮やかさ。そうした情報がいっぺんに押し寄せて、絵を「絵以上の圧倒的な、ものすごいなにか」に思わせる。一言でいえば「迫力」なのだろうけれど、岡本太郎の作品は……なんというか、造形物ではなくて、この世界とは違うどこかに存在する世界をバリバリっと太郎が破いてそのさまを自分に見せてくれているような、どれほど荒唐無稽にみえようとこれが真実だと思わせる、衝撃的な感じがしました。

「つくりものじゃないほんもの」を今、自分は見ている。

芸術行為とは、普通の価値判断が成り立たない、自分自身にすらわからないものに賭けることだ。(岡本太郎)

『展覧会 岡本太郎』より


このことばを会場で目にしたときから、もう、後半は目の前の作品すら超えて岡本太郎のぜんぶを全身に浴びているような感覚でした。




展覧会を観終えてもうひとつ、初体験。
岡本太郎の「言葉」がもっと欲しくて、書籍を1冊買いました。図録よりポストカードより書籍をまっさきにチェックしたの、初めてです。
ちなみに購入したのは『誰だって芸術家』(岡本太郎/SB新書)。
今後の人生のバイブルになりそうな予感がしています。

激推し。





今週もお読みいただきありがとうございました。『展覧会 岡本太郎』、ほんとにおすすめなのですが、予定が立たず会期終盤での観覧となってしまい記事化が遅くなりすみません。巡回は愛知が最後のようなので、ご興味のある方は、3月14日までです!!

◆次回予告◆
【よみきりエッセイ】おとなになる、イコール自分のからだを知っていくこと。自分の主治医は自分なのかもしれない。

それではまた、次の月曜に。


*展覧会レポートも色々あげています。個人的なお気に入り↓


*その他、宇佐江のアートに関するいろいろトークはこちら↓


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