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「山のは」より - 2024/2/15 立春

拝啓 今週は季節外れの4月並みの天気でした。山のはにも、ところどころに春が見られるようになってきました。朝の冷え込みも幾分落ち着き、日中はダウンジャケットなしでも外を歩けるくらいの暖かさです。

奥久慈の冬は寒いと聞いていたので、晩秋から怯えていたのですが、気づけば寒さの峠を超えたようです。季節は驚くほどに、日々移り変わっていきます。

真っ先に春を報せてくれたのは福寿草。庭に2箇所、眩しいほどに明るく黄色く光る大輪の花を咲かせてくれました。福寿草は早春のこの時期以外、どこにどう埋まっているのか、地上からは知ることができません。移住1年目の私にとって、その出現は全くもって嬉しい驚きでした。

庭先に灯るように咲く福寿草

1か所は小さな松のすぐ隣。この松はもともと盆栽だったものが、鉢ごと庭に置かれ、地面に根を張ってしまって動かなくなったそうです。樹形は美しく、青々とした松の葉に、福寿草の黄色が見事に響き合っています。

もう1か所は、家のシンボルツリーでもある枝垂れ梅の根元。一週間ほど遅れて枝垂れ梅も咲き始め、薄桃色の八重梅とのコントラストが早春の陽だまりに映え、思わず涙ぐんでしまうほどに美しいのです。

蕾も花もうれしい梅

花が咲くということ。当たり前のように毎年見てきたことですが、激動の年だったからでしょうか、この現象の尊さが今までの何倍も鮮やかに心に響いてきたことにもまた驚きました。

山の生活は季節の変化を感じやすいということもあるのかもしれません。太陽の登る時間も沈む時間も、その位置も日々変わっていくことがよく見えるし、山の姿も冬のはじめと今とではまるで違います。

特に日の長さの変化は劇的でした。山間の町は太陽が少し傾けば山に隠れてしまうので、年末は子供の迎えの時間には真っ暗で、毎日あっという間に夜、という気持ちでした。それが年が明けると、あれ、まだ明るい、2月に入る頃には随分日が長い、と思うようになり、日の長さに合わせて気持ちが明るくなっていくことがはっきりと感じられます。明るくなってくると、寒さは案外耐えられるものだったりするのです。

山のはには今年もいろいろな方が訪ねてきてくれます。ご近所の方々はもちろんのこと、先週今週と撮影の依頼があり、作業風景を撮ってもらったり、畑を案内したり。

4Kカメラの前でドキドキ

古民家再生協会の方々にお願いした工房(兼自宅)の調査では、ドローンや、ロボットが家中隈なく検査してまわり、人間ドックならぬ古民家ドックの様相でした。

引越以来の懸案事項だった家の登記も終わり、晴れて築147年の建物が書類上でも認めてもらえました。仕事を助けてくれる仲間も増え、少しづつ、「山のは」が形になっていきます。

明治10年新築!

仕事も色々です。日々の制作の仕事や大学の仕事に加え、オンライン講演会が1月に2件、2月に1件あったりと、年明けから慌ただしく動いています。

ひとつひとつを積み重ね、工房としてやりたいこと、やらなければならないことを実現させるための基礎体力をつけている、という気持ちです。とはいえ、まだまだできていないことの方が遥かに多く、気を引き締めていかなければと思う日々です。いままで溜まりに溜まった、やりたくてもできなかったことに少しずつ手をつけていこうと思います。

油断しているとまた突然寒くなったりするのが、今の季節。梅の開花に少し浮かれていますが、あまり振り回されずにリラックスしていきたいですね。薄着をしすぎず、くれぐれも体にお気をつけて。 敬具

宜しければ「工房 山のは」の活動にご支援をお願いいたします。いただいたサポートは、奥久慈漆の植栽、漆畑の管理等の活動に充てさせていただきます。