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夢日記 12日目

映画館で何かの映画を観ていた。
背景の明るいシーンの時にぼんやりとだけ
姿が分かる程度だったが、座席は満員だった。
私は中央のブロックのやや左後ろの席にいた。

急に映画が止まり客たちがざわついていると、
1列目の右から左の順に客の首が
だらんと落ちて行った。
血も悲鳴も何も無かったが、
私には何故か死んだ事がはっきりと分かった。

とうとう、
私の列の順番が来て右隣の客も倒れた。
もうだめだ、と思い覚悟して目を閉じた。
しかし私の首の落ちる感覚はなかった。

目を開けると、
私は真っ白な長方形の部屋にいた。
窓からは映画館が見え、私以外の客の首は
垂れ落ちていた。
何かの気配を感じてその方向を見ると
死神の姿があった。そして、私に問いかけた。
「お前がここで1人で死ぬなら、この者達は
何事も無く映画を観終えることができる。
しかし、お前が生きたければこの通りのまま
お前を映画館に戻してやろう。
どちらを選ぶか。」
私が死ぬと即答した。すると死神は言った。
「この者達は自分が生きる方を選んだのだ。
だから私が首を刈り取ってやったのだ。
しかし、お前はそんな者達の為に
自分の命を投げ捨てたのだ。」
死神が笑い始めると部屋の四方の壁が
バタンと倒れた。
すると、客は続々と立ち上がり、
満足気にこちらを観て笑顔で拍手をした。
死神は私に耳打ちをした。
「こんな奴らが、救ったお前のことを
何も知らず生かされていくんだ。
ただ一本の映画のように娯楽として
自らのために消費し、使い捨てるのだ。」

客は席を立ち始め、
スクリーンには一瞥もせずに
ぞろぞろと出口へ向かう。
歪んだ顔は笑顔のようだった。

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